今年の凱旋門賞は一騎打ちムード[和田栄司コラム]

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第91回凱旋門賞は、オルフェーヴル対キャメロットの一騎打ちムードに変わっている。そのキャメロットの鞍上にはフランキー・デットーリ騎手が決まるサプライズ、一方のオルフェーヴルの直前追い切りには多くのメディアが集まり、否が上でも対決ムードが一層高まって来た。

愛バリードイルの2000ギニーと英愛ダービー勝馬のキャメロットには、調教師の19才の息子ジョセフが56キロで乗れないことから、フランキーが引き継ぐことになった。これによりジョセフは僚馬セントニコラスアビーに乗る。先月行われたドンカスターのセントレジャーで、ゴドルフィンのエンケによって三冠を阻止された嫌なムードを断ち切るのが、ゴドルフィンの主戦ジョッキーとは全くのサプライズである。

3日朝のバリードイルのトレーニングの後、チャンスは回って来た。フランキーはレーシングUKのインタビューに「本当に楽しみにしている。初めはライアンがシームーンに乗ると思っていたので、自分はスノーフェアリーかと思ったが、彼女の故障で消えてしまった。それから数日で信じられないことが起こった」と答えた。

フランキーは24年間連続で凱旋門賞に騎乗している。その内1995年にはラムタラ、2001年にはサキー、2002年のマリエンバードで3回の優勝を数える。エイダン・オブライエン厩舎のランナーでの騎乗となると、2005年のセントレジャーを勝ったスコーピオン以来のこと、それ以後は騎乗の機会すらなかった。

「セントレジャーでは後方でじっとしていたが、最後は本当に良く動いていた。最初からペースが遅く、これが敗因の全てだった。馬はとてもバランスが良いと思う。ダービーの直線での動きは印象的だった。凱旋門賞では2~3頭のペースメーカーが引っ張る展開で、ハイテンポになるでしょう。そうなったらどこにいても問題はありません。まだエイダンと直接話してはいませんが、枠順の小さいところを引きたいですね。我々はレースのパターンを変えるつもりはありません」とコメントした。

バリードイルは、カナディアン国際Sを使うインペリアルモナークの回避を決めたが、ロビンフッドとアーネストヘミングウェイ、2頭のペースメーカーは残した。またアラン・ド・ロワイエ=デュプレ厩舎はリライアブルの回避を決めた。代わって3頭が新たに追加登録で加わった。

メディチアン産駒の3歳の牡馬ベイリールは、シャリタと同じロワイエ=デュプレ厩舎のアガ・カーン殿下の所有馬。殿下はケサンプールを加えて3頭を出走させて来た。3歳デビューで3戦目にサンクルー競馬場の準重賞リッジウェイ賞を勝ち、7月メゾンラフィット競馬場のG2ユジューヌアダム賞、8月には米国に遠征してアーリントンパーク競馬場のG1セクレタリアトSを勝ったが、前哨戦のG2フォワ賞は最後方から追い込んだものの1馬身4分の1差2着。

そのフォワ賞勝馬のソノワも追加登録料10万ユーロを払ってエントリーしている。チチカステナンゴ産駒の3歳の牡馬は、リオンで厩舎を構えるジャン=ピエール・ゴーヴァン調教師の管理馬。2月カンヌで準重賞を勝つと4月ロンシャン競馬場のG3ラフォルス賞を連勝、G2グレフィーユ賞ではケサンプールに4分の3馬身及ばず3着に終わったが、本番の仏ダービーを制した。カミソリのような切れ味の追い込みは痺れる。

ガリレオ産駒の3歳の牝馬グレートヘヴンズも怖い1頭。5月のシーズンデビューでメイドンを勝ち上がり、6月ニューベリ競馬場で準重賞、7月ヘイドック競馬場で古馬に混じってG2ランカシャーオークスとカラ競馬場でG1愛オークスまで4連勝を飾った。セントレジャー挑戦の話もあったが、実現せず77日空いたが、ナサニエルの代役として注目してみたい。

追加登録も締め切られ、エントリーは18頭、減ることはあってもこれ以上増えることは無い。3日のパリは気温17度、郊外のシャンティイ競馬場の馬場状態はボンスープル(稍重)だったが、4日は雨が降って気温18度、障害専用のオートーユ競馬場の馬場コンディションはコラン(不良)表示で行われていた。

海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。