研究員ヤマノの重賞回顧

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4/21日(土)、福島競馬場で行われた福島牝馬S(4歳上牝、G3・芝1800m)は、後方からレースを進めていた柴山雄一騎手騎乗の9番人気スプリングドリュー(牝7、美浦・堀宣行厩舎)が、最後の直線でそれまで溜めていた脚を開放して、豪快に差し切り快勝した。
レースはダイワパッションの大逃げで始まった。
道中2番手の2番人気ヤマニンメルベイユに6馬身差をつけて軽快に飛ばしていたダイワパッションが馬群に飲み込まれたのは最終コーナー手前。
ここで先頭に立ったヤマニンメルベイユにいい手応えで迫ってきたのは、4番人気フラッグシップ。
両馬の争いがゴール前までもつれたが、レースはこの2頭では決まらなかった。
それまで後方で脚を溜めていたスプリングドリューが、一頭だけ次元が違う脚色で豪脚を炸裂させると大外から瞬く間に他馬を抜き去り、最後は先頭に踊り出て優勝をさらった。
2着にはフラッグシップが、3着にはヤマニンメルベイユがそれぞれ入線した。
菊沢隆徳騎手騎乗の1番人気コスモマーベラスは4着に敗退した。
勝ったスプリングドリューはこれが重賞初勝利。
既に7歳で、このレースが何と44戦目だった。
アドマイヤグルーヴやスティルインラブなど、多くの同期はもう引退をしており、今回の同馬の活躍には本当に頭が下がる思いだ。
混戦の中では、場数を踏んで揉まれてきたベテランの底力が、時として大きくモノをいう事を再認識させされた一戦だった。

4/22日(日)、東京競馬場で行われたフローラS(3歳牝、G2・芝2000m)は、後方からレースを進めていた秋山真一郎騎手騎乗の1番人気ベッラレイアが、一気に末脚を爆発させ大外強襲、見事栄冠に輝いた。
レースは二の脚を使って先頭に踊り出た3番人気イクスキューズが、主導権を握りスローで流れて行った。
最終コーナーを周っても先頭イクスキューズの脚色は衰えず、後続との差はまだ3馬身。
そのまま粘り込むかと思われたところで脚を伸ばしてきたのは、4番人気ミンティエアーだった。
この時、ベッラレイアはまだ遥か後方。
しかし、この馬の鬼脚はまさに規格外だった。 追い出しにかかったのはとても届かないだろうという位置からだったが、ゴール前であっさりと前2頭を捉えて念願の重賞タイトルを手中に収めた。
待望のサッカーボーイ産駒の重賞ウィナーがここに誕生した。
2着にはミンティエア、3着にはイクスキューズが入線。
優勝したベッラレイアのここまでの道のりは決して楽なものではなかった。 高い資質を持ちながら、3度の重賞除外で桜花賞には出られず、今回ようやく巡って来たチャンスだった。
これでオークスへと堂々と駒を進めることになるが、この後の道程も楽ではない。本番では戦いは、更に厳しいものとなるだろう。
何しろ相手はあの2強だし、伏兵陣も多士済々。
今回の前哨戦は見た目は派手な勝ち方だったが、チグハグなレース運びが気にかかる。包まれて、掛かって、直線では前が壁になり大外に持ち出してと、決して上手な競馬ではなかった。
本番でこの内容のレースをしたら、果たして通用するのだろうか?
未完成ということは上がり目もあるには違いないが、頂上で勝つためにはもっと完成度を高めることが不可欠ではないかと考えられる。

同4/22日(日)、京都競馬場で行われたアンタレスS(4歳上、G3・ダート1800m)は、中団からレースを進めた岩田康誠騎手騎乗の3番人気ワイルドワンダーが、抜群の切れ脚を披露して3連勝で勝利を飾った。
レースはインからハナを主張したエイシンラージヒルの先導で進んだ。
馬群がギュッと詰まった最終コーナーで、まず最初に抜け出したのは2番人気のキクノアロー。
ここで先行勢は次々と脱落し、代わって台頭してきたのは中団で抜け出すタイミングを計っていたワイルドワンダー。
最後の直線で、低い重心の体勢から回転の速いピッチ走法を繰り出して、先に抜け出していた2番人気キクノアローを簡単に捉えると、並ぶ間もなくグイグイ突き放し、2.1/2馬身差をつけてゴールを駆け抜けた。
3着には追い込んできた1番人気メイショウトウコンが入線した。
こうしてワイルドワンダーが久保田師に初の重賞タイトルをもたらした。
かねてより末脚の鋭さには定評があった同馬だが、前走のオープン勝ちを期に、完全に一皮剥け、覚醒した感がある。
自身が好調なことは疑いようもないが、好調の大きな要因として、岩田騎手との巡り会いが考えられる。
最終コーナーまでほとんど手綱は動かさず、勝負どころの最終コーナー出口で仕掛けた抜群の追い出すタイミング。そして追われるや否や、弾かれたように切れ込んでいったあの姿には、人馬一体、まさに阿吽の呼吸が感じられた。
ベストパートナーとの巡り会いが、馬を大きく成長させるのかもしれない。