差す競馬が出来た!ベルカント、最内から伸びて快勝!!

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14年3月16日(日)1回阪神6日目11R 第48回 フィリーズレビュー(G2)(芝1400m)

ベルカント
(牝3、栗東・角田厩舎)
父:サクラバクシンオー
母:セレブラール
母父:ボストンハーバー


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桜花賞へ直結するのは、先週のチューリップ賞。ハープスターが圧倒的な強さで駆け抜けた。ここには距離を得意とする馬達が集まった。ホウライアキコが1番人気。小倉2歳Sで後塵を浴びたベルカントが2番人気で蓋を開けた。
五分のスタートから、今日は先手を取らずに内で脚を貯めたベルカントが、逃げたニホンピロアンバーのインを突いて差しきり、今までと違った味のある競馬内容で勝利した。3着には関東からの外国産馬エスメラルディーナが、桜花賞の出走権を獲った。
ホウライアキコは窮屈な直線で、伸びを欠いて5着。しかし差は僅かで、桜花賞での巻き返しがあるのだろう…。


ひとつ前のレースの観戦はパスして、パドックで待機。場内アナウンスに聞き耳を立てていた。この時期の乙女達は、パドック入場の瞬間から観ておきたい。まずは第一印象からだ。ホウライアキコ。《細い、やや、腹目が上がっている、そして少しうるさい》とメモする。少し後ろを歩くヤマノフェアリーも《細い。が、落ち着きはある》と書く。ベルカントは後ろの馬との差をかなり開けて、アドマイヤビジンの真後ろを歩く。数字こそ減ってはいるが、細くは見えない。エスメラルディーナとアドマイヤビジンの雰囲気が良く見える。思わず〇をつけておく。
騎乗合図がしたら、いつもの席へ戻る。返し馬をジックリと観たいのである。ベルカントが真っ先に出て来て、すぐ左へ向かう。厩務員と助手が左右について歩く。少ししてキャンターに移ったが、50メートルも走らずにすぐ歩きだして、ゲート裏の馬溜りに入っていった。次いでリアルヴィーナス、そしてホウライアキコと、馬場入りしてキャンターに移っていった。しばらくしてから、各馬が入場し返し馬に散っていった。ベルカントは、今まででいちばん上手く馬場入りが果たせた様で、まずはひと安心である。

最内枠を引いたベルカントのスタートが気になっていた。前回の朝日杯は、出てすぐに外へと逃げ気味となり、他馬に迷惑をかけていた。今回もこの最内枠、まさか内へ切れ込む事はないとは思うが、普通に出て普通に前へと走ってくれる事を願うばかりだ。

スッと出た様子で、そのまま先手を取って行くのかと思ったら、ニホンピロアンバーが行く様子を見せる。フクノドリームが次いで、3番手におさまっている。そんなに速い流れはなく行く前の2頭。

この先手について火曜朝に田所師に訊いた。《いや~、どうしても行きたい馬がいたら、行かせてもいいとは言っていたんだ。フクノドリームも速い馬だしね》と、案外とスンナリと行けた事に驚きの方が大きかった様だ。グランシェリー、ホウライアキコと続いて、その内にベルカントで最初の1ハロンを過ぎる。エスメラルディーナが順位を上げて、ホウライアキコの前に出て3番手グループがやや固まって2ハロンを通過。前半の3Fを34.6と比較的この距離、このメンバー構成ではゆっくりめだ。ヤマノファエリーは最後方を併走だが、前からは10馬身ぐらい。抑えきれないぐらいの手応えで進んでいる。

800を通過する時には、先ほどよりも前の間隔がなくなり、ニホンピロアンバーの外へフクノドリームが並び加減で進んでいる。ベルカントは内ラチ沿いで3番手の絶好位だ。グランシェリーの外にエスメラルディーナで、すぐ後ろにアドマイヤビジン。その内がホウライアキコ。前のベルカントとも、半馬身ぐらいの差でひしめきあっている。

カーヴを廻って行くが、外目の馬がかなり押し上げて行くが、またピッチが上がった様で、前の馬の勢いがまだまだいい。外のアドマイヤビジンの勢いが良かった様に見えたのだが、廻りきってしまうとまだ差があった。ここらを梅田智師が《3角でも一度、そして4角でもペドロサに外へ弾かれてしまった、あれが痛かった》と言う。ホウライアキコもここらの馬の中にいた。
結局、内の馬がそのまま有利な態勢で直線へと入ってきた。ベルカント、《どっちへ行くんだろう?》と息を飲んで観ている。まだニホンピロアンバーが先頭で頑張っているが、その内へと進路を取った。《エ、エッ!、開いているの~!》と驚く。武豊Jの左ステッキで促されて、ベルカントが狭い処を抜けていく。この時はあと100mを切ったぐらいの処。

ベルカントの勢いはいい。そして後ろの馬の勢いをみる。《大丈夫!追ってくる馬で凄い脚の馬はいない!》と心の中で叫ぶ。
ニホンピロアンバーをの内をスルリと抜けて、ゴールしていったベルカント。そして《本当に違う競馬をしてみると言っていたとおりだ!》と騎乗ぶりに感嘆する。

階段を下りて検量室脇へと向かう足どりも、いつになく軽やかだった。角田師と握手する。『桜花賞だね!』に思わず『ハイ!』と答える。駆けつけた前田幸治氏とも握手をさせて貰う。
この勝ち方は嬉しい。坂路の稽古で、上がり1Fを11.7で動ける馬である。坂路でこの切れを見せれるのだから、差せない訳はないとは思いながらも、正直、やってみた事のない競馬だけに、果たして可能なのかどうかであった。
《結局はスピードが優っていて逃げ切るんじゃないの》と、逃げ切るシーンばかりを描いていた。

火曜朝に角田師とも話をした。『今週1週間ぐらいは、運動だけで十分でしょう。ゲートは一度突っかけていましたね。でも無事にスタートを切れたし、その後も、後ろから突かれる競馬でも大丈夫だったから、ひと安心でしたね』と教えてくれた。

さあ次は桜花賞。あの強い馬がいるが、まずは少しは大人になったベルカントだけに、楽しみもいっぱい膨らんできたのである。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。