アメリカンファラオ三冠達成後も最強3歳を証明[和田栄司コラム]

2日、米ニュージャージー州オーシャンポート近郊にあるモンマスパーク競馬場では、G1ハスケルインヴィテーショナルS(D9F)が行なわれ、三冠達成後のアメリカンファラオの走りを一目見ようと入場新記録の6万983人が観戦した。

7頭立てのレースは、三冠馬アメリカンファラオ(牡3歳/父パイオニアオブザナイル)1.1倍、G2ホーリーブルS勝馬でフロリダダービーを2着してケンタッキーダービーに挑戦しながらしんがりの18着に敗れたアップスタート(リジ3歳/父フラッター)7.8倍、2歳時にG1ホープフルSを勝ち、今季は準重賞とG3を連勝した後、G2ウッディースティーヴンスSでしんがりの6着に敗れているコンペティティヴエッジ(牡3歳/父スーパーセイヴァー)10.5倍で続いた。

3番枠スタートのアメリカンファラオは好スタートを切った。しかし、それを制して内からコンペティティヴエッジが主導権を取る。ミスタージョーダンが続き、前団は3頭、後ろにアップスタートが続き、その後ろをトップクリアランス、後方2頭はキーンアイスと最後方ドントベットウィズブルーノの順。コンペティティヴエッジのフラクションは、23秒22、46秒14、よどみのない速い流れになった。

早めにトップクリアランスがペースに付いて行けず後方グループに吸収され、3コーナーを前にミスタージョーダンがバテ始めた。その中で、アメリカンファラオは3~4コーナー中間で早くも先頭に立つ。コンペティティヴエッジやアップスタートがいっぱいと見たのだろう、それからヴィクター・エスピノーザ騎手は直線に入って追うのを止めてしまった。

4番手に上がって来たのはベルモントSで3着した人気薄のキーンアイス、初めはアメリカンファラオと9馬身あった差が、直線の入口で6馬身に縮まり、ゴールでは2馬身4分の1差まで詰め寄ったが、三冠馬が全く追わず流していたのだから楽勝に違いない。時計はファスト表示の馬場、1分47秒95。2着キーンアイスの後は3馬身離れてアップスタートが3着している。

三冠馬が出走するとあってハスケルインヴィテーショナルSの売り上げは、2010年の446万3736ドルを大きく上回り654万4247ドルの新記録を打ち立てた。アメリカンファラオは優勝賞金110万ドル(約1億3640万円)を加え、これで9戦8勝、7つの異なる競馬場でG1を勝ったことになる。

57日振りのレースを勝って、3日朝、アメリカンファラオは南カリフォルニアに戻る為、モンマスパーク競馬場を後にした。最後のレースとなるBCクラシックを前に古馬との戦いはあるのか、幾つかの質問が投げかけられたが、全ての決定は南カリフォルニアに着いてから決めるとボブ・バファート調教師は報道陣を煙に巻いた。

8月22日、デルマー競馬場で行なわれる3歳以上のG1パシフィッククラシック、デルマー競馬場はボーナス賞金を用意して歓迎、また29日、サラトガ競馬場で行なわれる真夏のダービー~G1トラヴァーズSでも出走すれば優勝賞金は160万ドル、既に1日のG2ジムダンディSで1/2着したテキサスレッドとフロステッドが出走に前向きである。

昨年ボブ・バファート調教師は、バイヤンをBCクラシックの前に、ハスケル、トラヴァーズ、G2ペンシルヴェニアダービーで走らせ、ハスケルとペンシルヴェニアダービーは勝ったが、トラヴァーズは最下位の10着に敗れた。今年ペンシルヴェニアダービーは、9月19日、フィラデルフィアのパークスレーシングで行なわれることになっている。


海外競馬評論家 和田栄司
ラジオ日本のチーフディレクターとして競馬番組の制作に携わり、多岐にわたる人脈を形成。かつ音楽ライターとしても数々の名盤のライナーを手掛け、海外競馬の密な情報を把握している日本における第一人者、言わば生き字引である。外国馬の動向・海外競馬レポートはかねてからマスメディアで好評を博しており、それらをよりアップグレードして競馬ラボで独占公開中。