牝馬だ!蛯名だ!マリアライトが渋太く伸びて頂上へ!!

マリアライト

16年6月26日(日)3回阪神8日目11R 第57回宝塚記念(G1)(芝2200m)

マリアライト
(牝5、美浦・久保田厩舎)
父:ディープインパクト
母:クリソプレーズ
母父:エルコンドルパサー

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場内を埋めつくす人、人、人。豪華なメンバーにファンも駆けつけて、朝から身動きがままならない状態。そんな大勢が見つめるなかでの宝塚記念。雨も上がり、馬場コンディションも早めに稍重までに回復。
キタサンブラックの逃げ。しかし内廻りを意識して、各馬がいくぶん前がかり。しかし何とかしのぎきって1馬身と離した直線あと1ハロン。だがジワジワと外から上がってきていたマリアライト。さらに馬群から抜け出すのに時間はかかったが、ドゥラメンテも脚を伸ばす。ゴールに入る瞬間はややマリアライトが優勢。内のキタサンブラックとドゥラメンテは写真判定で、ハナ差だけ1番人気のドゥラメンテが優った…。


パドックで周回する馬を最後まで見てから、返し馬をスタンドへ戻って観る。これがいつものパターンなのだが、今日は場内の移動がとんでもなく出来ない。返し馬は断念するしかなかった。レース観戦も、とてもでないけど人の頭越しで観るのは嬉しくない、とスタンドは断念してウイナーズサークルの端っこにいた。眼の前で、生ファンファーレの演奏が華やかに奏でられる。いっぺんに場内が活気づいた。

キタサンブラックは、スタートがそんなに速い馬でもない。だが他に先手を主張する馬もいなさそうで、逃げ1車の見込み。だが内廻りの意識はどのジョッキーも持っている。いつもより早め、少しでも前でのレースを考える。そんな流れにまさしくなった。ウイナーズサークルの隅っこで観ているだけに、1周目のゴール板を過ぎて行く各馬の動き、流れが手に取るように判る。《えらいみんな前に来るな~》と思える勢いで、1コーナーへと向かっていった。

キタサンブラック先頭は当然としても、ワンアンドオンリーがこの位置に?と思える2番手。カレンミロティックトーホウジャッカルに、サトノノブレスも前のグループに連なる。内にアンビシャス、そしてシュヴァルグランと、前につける馬が多い。
思ったよりも速い流れで最初のカーブを廻っていく。ドゥラメンテは後ろから4頭目で、外にサトノクラウンが並ぶ。ちょっと前にマリアライトが位置している。

2コーナーを廻っていくキタサンブラックだが、ワンアンドオンリー2番手は変わらず。3番手のインのアンビシャスがかなり行きたがっているのが見える。ラブリーデイが7番手の絶好のポジションにいる。けっこう流れている。縦長の隊列だが、少し早い前半の入りかと思える。
1000mを過ぎて場内アナウンスが『前半の千メートルは1分を切りました。59秒1と言うペースです』の声にドドっとする。やはり速めに流れている。
向こう正面を過ぎて3コーナーと向かっていくが、2番手ワンアンドオンリーの手が動きだしている。

ワンアンドオンリーの手はさらに激しく動きだし、3コーナーから4コーナーへと向かっていく。ラブリーデイがいい感じで外を上がっていく。ドゥラメンテもなかなかいい手応えで、馬群の中でじっと待っている感じだ。キタサンブラックの武豊Jが、股の下から覗いて後ろの動きを確認しているのが見えた。
4コーナーが近づいてくると、今度はワンアンドオンリーに替わってサトノノブレスが前に出て来る。それに併せてラブリーデイも並んでいく。さらにその後ろからマリアライトが押して前へと出てきた。ステファノスがひと呼吸置いてついてくる。
カーブに入る前に、武豊Jが今度は左をチラっと観た。どれが来ているのかを見たのだろうか。もう一度見ながら直線へと入って来た時は、1馬身から2馬身近くの差が出来ていた。ラブリーデイが単独で2番手に上がってきていた。

あと300m。まだ先頭はキタサンブラック。ラブリーデイの外からマリアライトが、内からステファノスが来ている。そしてやっとドゥラメンテが内からステッキを使って、外のサトノクラウンを押しやる恰好で出てきた。そこからはまるでスローモーションの映像でも観ているような恰好。スピードもそんなに上がらないラスト1ハロンの動きに見えた。

何とか逃げ込まんとするキタサンブラック。右ステッキ連発で、さらなる前進を促す蛯名Jとマリアライト。ドゥラメンテの勢いは、あの飛んでくるイメージではない。《もうゴールか、いやまだもう少しだ!》と祈るような気持で観ていたゴール前。ゴールに真っ先に入ったのはマリアライトで、2着が微妙だった…。

すぐ様、検量室前の枠場で馬を待つ。だからドゥラメンテのアクシデントもまったく知らないままだった。『もう少しだった・・』と鞍を外して室内に入っていった武豊J。清水久師も『惜しかったね~』と労う。表彰式にウイナーズサークルへと向かう蛯名Jに《おめでとう!》と声をかける。
そしてPVをいつもどおり観に行く。音無師が隣に来て見ながら声をもらす。『かかっちゃった・・』であった。枠順が良すぎて、馬も行きたがってしまっていた様子。横山典Jが音無師に挨拶をして、私にもちょんと肩をさわって帰っていった。

今年の宝塚記念。スタート直後の1ハロンは、いつもどおり12秒台後半の12.6。そして3頭がもがき苦しんだゴール前の1ハロンが12.7である。これ以外の全てのハロンで、12秒5以下のラップばかり。終始ちょっと速い流れで推移している。1000mの入りも速いが、1600の1.36.0もけっこうなハイペースであろう。

急流を耐えて粘ったキタサンブラック。それを終始外々を廻りながら、最後にもうひと伸びしたマリアライト。ドゥラメンテも、直線1ハロンぐらいしかレースに参加してない形でこの最後は、やはり日本で今、一番強い馬かと思える。

しかし、やはりマリアライトであり、蛯名Jであろう。皐月賞といい、ここ一番の時に活躍する蛯名Jである。関東馬のディープインパクト産駒でのG1勝利をしているのは、彼が一番多いのではなかろうか。
日本で一番強い馬を負かしたのだから、マリアライトが一番強いのかも知れない。
そんな今年の宝塚記念でありました。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。