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荻野仁調教助手

距離を戻す今回の課題は折り合い

-:まずは今年の緒戦、得意の京都で行われる京都記念についてです。先週撮影をさせていただきましたが、調子はかなり良さそうに見えました。

荻:大きくなってるでしょ?順調ですよ。リラックスもしているし、大きくなっているし、順調順調。ただ、まだ思いっ切りつくってるわけでもないからね。

-:やはり心配点としては、マイルを使ったあとの折り合い面でしょうか。

荻:それはもう、常に考えていますね。

-:今度は若干、スタートの出が良くなりそうですか?

荻:そうなるはずですよ。その辺も全部考えてね。計算はしています。

-:ラーの末脚が発揮できるかどうか、気になりますね。

荻:前走はやっぱり、初マイルの馬の末脚やね。マイルでも動ける体だけど、今まで長いところを走っている時の精神状態のままでね。距離を詰めるのは頑張れるんです。ただ、距離を延ばしていくのは凄く難しい。一回、距離を覚えている馬に対してね。



-:普段の性格面の話も聞きたいんですけど、写真を撮らせていただく立場から見てみると、ラーはカメラが結構好きみたいなんです。

荻:ホンマですか?でも、正直、フラッシュよりはカッコ悪いやろ(笑)。フラッシュはカッコ良すぎたからなあ(笑)。でも、ラーにも良さはあるんですよ!

-:ラーはまだ可愛さも残っていますね。では、荻野さんにとって、ラーの一番好きな点はどこでしょうか?

荻:それはもう、一発目にあの馬に跨って、ちょっと速めの調教に乗った時の感触やね。先生のおかげで、厩舎にも良い馬はたくさん居ますけど、4年前に初めて乗った時には「絶対この馬は走る!」って言ってたからね。ただ、難しいところもあるんです。馬場で止まることもあるし、立ち上がるし……。

-:好きなことと嫌いなことが、はっきりしているという印象はありますね。

荻:危ないんですよ。今でも嫌なことがあったらすぐ止まるんですよ。

-:一回、札幌かどこかでありましたね。

荻:馬場で立ち止まって、動かなくなったんですよね。そういう奴なんです。


「ユタカ(武豊騎手)さんを乗せて、15-15か何かをやったとき『一番ディープ(インパクト)に似てる』って言ってくれたからね。『多分ディープってこんなんやったん違うかな?』って聞いた時にね。そこから、イメージが膨らんでいきました」


-:我の強い面があるんですね。

荻:それでも、ユタカ(武豊騎手)さんを乗せて、15-15か何かをやったとき「一番ディープ(インパクト)に似てる」って言ってくれたからね。「多分ディープってこんなんやったん違うかな?」って聞いた時にね。そこから、イメージが膨らんでいきました。

-:顔もちょっと似てるんですよね。

荻:あの時はまだ、ラーの馬体も小さかったですからね(デビュー戦は438キロ。父ディープインパクトのラストランも438キロだった)。だから似ていたのかもしれないです。今はもう460キロ以上ありますけど。

-:先週、写真を撮らせてもらった時も、馬体重はそれくらいでしたか?

荻:あの馬は競馬に行って、グッとすぐに減るんです。それでも、460キロ以上はあるかな。

-:それでも、これから結構締りも出てくるでしょうからね。

荻:今回はまだ、あと1週間あるんでね。課題は折り合いです。ただ、ユタカさんもそれは分かってるだろうから。



-:レース前のテンションとか、パドックの仕草で、注目すべき点はありますか?

荻:マイルCSの時は一人で引っ張っていましたけど、パドックでカッとしてましたね。今回は一旦距離を詰めてから延ばす上に、間隔も空いているので、パドックでどうなるかは未知数でもあります。レースでリラックスして走ってくれるといいんですけどね。

-:4コーナーのポケットからスタートしていきますから、ちょっと頑張ってしまうかもしれないですね。

荻:ただ、最初からずっと頑張るということはないと思います。コーナーが4回ありますから、そこでフッと抜いてくれるとは思うんですけどね。あの馬はバカじゃないからね。

-:レース中の、最初の1コーナーまでの手応えに注目ですね。

荻:そうやね。僕もそこを見ておきます。

-:期待しています。頑張ってください。

荻:ありがとうございます。頑張ります。

荻野仁調教助手インタビュー(前半)はコチラ⇒

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【荻野 仁】 Hitoshi Ogino

卓越した調教技術は、専修大学時代の馬術チャンピオン(障害)という裏付け。藤原英昭厩舎の開業当初から調教助手として屋台骨を支えており、フードマンとして各担当からの意見を取り入れ全頭の飼い葉を調合している。2つ上の先輩である藤原英昭調教師とは小学生時代から面識があり、両人の絆と信頼関係は絶大。名門厩舎の躍進を語る上でこの人の名前は欠かせない。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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