ダービー馬との思いがけない共通点 ナヴィオン
2014/8/28(木)
-:それにしてもナヴィオンの初戦は素晴らしかったです。同じ舞台で、あとはどれだけ時計を詰められるかですね。
酒:全体時計自体(1分37秒3)はそんなに速くなかったようですからね。
-:関屋記念は1分32秒台でした。開催が進んだとはいえ、まだ良い馬場がキープされています。ファンの気にしているポイントは、またあのポジションになるのか、ということです。
酒:枠によると思います。攻め馬では後ろから突つかれると、馬がガツンとハミを噛むところがありますが、この前は大外枠で煽られることもなかったですし、それで進んでいかなかったのかなと。調教と競馬が直結するわけではないですが、普段は歩いていても、横に馬がいると併せる感じです。
-:馬沿いが良いのでしょうか?
酒:もし内枠を引いて、包まれたらどうなるのかな、とも思います。
-:あの性格なら、パニックに陥ったり、気にしすぎて我を失ったりということはなさそうですよね。
酒:色々な競馬を経験しないと分からないです。実際、もうひとつ前のポジションで競馬をして、あの脚を使えたら凄いですよね。
「この前は直線でもずっと左手前で走っていたと周りの人に指摘されました。内にもたれて走ったりしましたが、普段はそんなこと全然ないですし、初めて競馬場で思いっきり走らされたからだと思います」
-:あとは道中のラップが速くなって、どれくらいの脚が使えるかですね。新馬戦からそんなに間はあいていませんが、何か変化はありますか?
酒:上積みはあると思います。幼い性格はそのままですが、新馬を使う前は走ってみないと分からないですし、人間が半信半疑です。あんな競馬をしてくれて、能力があることが分かったので、あの馬のことを信じ切って、次も良い競馬をしてくれるとしか思ってないです。ジョッキーにもそんな思いで乗って欲しいです。
-:この先、どこまでステップアップして、どんなレースに出るか楽しみです。前走は大外枠だったので、真ん中や内の枠の時に、どんな競馬ができるかもポイントですね。
酒:できると思います。普段は乗りやすいですし、この前は直線でもずっと左手前で走っていたと周りの人に指摘されました。内にもたれて走ったりしましたが、普段はそんなこと全然ないですし、初めて競馬場で思いっきり走らされたからだと思います。
-:それで32秒台が出るんですね。
酒:もし替えていたらどうなるねん、という感じです。
-:凄いパワーですね。ダート馬なんかは、たまに手前を替えずゴールまで来ます。もったいないなと思いますが、その馬が手前を替えても、着順は大きく良くはなりません。馬が好きな方で走っている方が良いのかなと。
酒:あの馬はパワーも本当にあります。馬場が悪い時に追い切っても、いつも通りの感じで走っていて、止まらないです。
-:ハーツクライ産駒全体でも、右回りより左回りの方が良いイメージがあります。
酒:特に今年の春は、オークス、ダービーに、ジャスタウェイもドバイ、安田記念と結果が出ているので、余計にそういうイメージがありますね。
-:ハーツクライの現役時代は知っていますか?
酒:知っています。ディープインパクトが負けた時は衝撃的でした。最初は追い込み一辺倒なイメージがありました。
-:それがあるとすれば、ユキノスイトピー産駒の中で、一番走る産駒になりますよね。
酒:僕は1つ上のお姉ちゃん(テンシノホホエミ)しか知らないですが、他もお父さんが違って、ハーツクライは初めてです。
-:他には、大久保洋吉先生のところにレッドアヴァロンという馬がいました。
酒:最初は領家政蔵先生のところにいたユキノサイレンスですよね。担当していた人に聞きました。今は高野厩舎にいる小川洋平くんがやっていたみたいです。鹿戸(明)厩舎の佐久間騎手がユキノプリシラに乗っていたらしく、「上も背中が良かった」と言っていました。
小牧さん(小牧太騎手)が「良い馬は背中が良くて、落ちる気がしない」と言っていました。例えていた馬はリーチザクラウンやローズキングダムで、ホンマに落ちる気がしなかったみたいです。僕はその話を聞く前から、“ナヴィオンはどれだけ暴れても、落ちる気がしない”と色々な人に聞いていて、その話を小牧さんに聞いて、“やっぱり良い馬は背中が良いんだな”と思いましたね。
-:お姉ちゃんのテンシノホホエミは500キロくらいありましたし、これからまだまだ成長しそうですね。480とか90にはなるんじゃないですか。
酒:あのままいかれたら、子供が大人の運動会でやるみたいな感じですよね。
-:まだ未来像は分かりませんが、楽しみです。まだ一戦しかしていないので、夢と希望ばかりですね。
酒:先生がワンアンドオンリーのコメントで、「夢が途切れないような競馬をしてもらいたい」とよく言いますが、本当にそんな感じです。
-:今度は上がり32秒ということよりも、2戦目でどれだけの上積みがあるか、メンバーが強くなったところでどれだけ戦えるか。その先は右回りでどんな走りをするかですね。
酒:まだまだ課題ばかりですし、1回使って1回勝っただけですからね。
-:左手前が好きな馬なら、右回りも良さそうですよね。
酒:コーナーを曲がる時に右で回って、直線を向いた時に左手前に替えて走ったらビューンと行きそうですよね。
-:右回りの方が温存できそうですよね。
酒:普段はCコースとかに行って、右回りでも左回りでも、コーナーと直線に入って替えるんですよ。だから、乗りにくさはないです。
-:馬にとって、調教とレースはラップが全然違います。本当にしんどい時は本能が出ますよね。
酒:人間と一緒で、利き脚があると思います。
-:今年の朝日杯FSは阪神ですよね。
酒:中山よりは阪神の方が良いと思います。
-:それでは暮れに改めて取材させていただきます。まずは新潟2歳Sを頑張って下さい。ありがとうございました。
酒:こちらこそ。ありがとうございます。
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プロフィール
【酒井 慎】Shin Sakai
父は元障害騎手の酒井浩氏で、引退後は松元茂樹厩舎の攻め専としてビリーヴなど名馬の調教もつけていた。妹はなでしこリーグのASハリマ・アルビオンで活躍する酒井望選手。幼少時は栗東で過ごすも、中学受験をして函館ラサールに進学。同時に函館競馬の乗馬センターで乗馬を始め、北大馬術部の朝練に参加して腕を磨いたことも。高校卒業後は滋賀県長浜にある三田馬事公苑に4年間勤務し、競馬学校卒業を経て栗東に戻ってきた。
在学中には模範賞の表彰も受け、橋口弘次郎厩舎でトレセン生活をスタート。思い出に残っている馬は最初に担当したリュウシンアクシス。入って1年10ヶ月目に挙げた初勝利がキュンティアの仔であるアンジュエで「中京で川田騎手が乗ったのですが、ゴールしたとたんめっちゃ雨が降ったんです。涙を堪えていたのですが、勝ち馬写真を撮るとき、バーって泣いちゃいました」。厩舎に入って3年目を迎え、素質馬ナヴィオンに出会う。新潟2歳Sで自身初となる担当馬の重賞制覇を誓っている。
プロフィール
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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