手前を替えずして32秒7の末脚

-:それにしてもナヴィオンの初戦は素晴らしかったです。同じ舞台で、あとはどれだけ時計を詰められるかですね。

酒:全体時計自体(1分37秒3)はそんなに速くなかったようですからね。

-:関屋記念は1分32秒台でした。開催が進んだとはいえ、まだ良い馬場がキープされています。ファンの気にしているポイントは、またあのポジションになるのか、ということです。

酒:枠によると思います。攻め馬では後ろから突つかれると、馬がガツンとハミを噛むところがありますが、この前は大外枠で煽られることもなかったですし、それで進んでいかなかったのかなと。調教と競馬が直結するわけではないですが、普段は歩いていても、横に馬がいると併せる感じです。

-:馬沿いが良いのでしょうか?

酒:もし内枠を引いて、包まれたらどうなるのかな、とも思います。

-:あの性格なら、パニックに陥ったり、気にしすぎて我を失ったりということはなさそうですよね。

酒:色々な競馬を経験しないと分からないです。実際、もうひとつ前のポジションで競馬をして、あの脚を使えたら凄いですよね。


「この前は直線でもずっと左手前で走っていたと周りの人に指摘されました。内にもたれて走ったりしましたが、普段はそんなこと全然ないですし、初めて競馬場で思いっきり走らされたからだと思います」


-:あとは道中のラップが速くなって、どれくらいの脚が使えるかですね。新馬戦からそんなに間はあいていませんが、何か変化はありますか?

酒:上積みはあると思います。幼い性格はそのままですが、新馬を使う前は走ってみないと分からないですし、人間が半信半疑です。あんな競馬をしてくれて、能力があることが分かったので、あの馬のことを信じ切って、次も良い競馬をしてくれるとしか思ってないです。ジョッキーにもそんな思いで乗って欲しいです。

-:この先、どこまでステップアップして、どんなレースに出るか楽しみです。前走は大外枠だったので、真ん中や内の枠の時に、どんな競馬ができるかもポイントですね。

酒:できると思います。普段は乗りやすいですし、この前は直線でもずっと左手前で走っていたと周りの人に指摘されました。内にもたれて走ったりしましたが、普段はそんなこと全然ないですし、初めて競馬場で思いっきり走らされたからだと思います。

酒井慎調教助手

-:それで32秒台が出るんですね。

酒:もし替えていたらどうなるねん、という感じです。

-:凄いパワーですね。ダート馬なんかは、たまに手前を替えずゴールまで来ます。もったいないなと思いますが、その馬が手前を替えても、着順は大きく良くはなりません。馬が好きな方で走っている方が良いのかなと。

酒:あの馬はパワーも本当にあります。馬場が悪い時に追い切っても、いつも通りの感じで走っていて、止まらないです。

-:ハーツクライ産駒全体でも、右回りより左回りの方が良いイメージがあります。

酒:特に今年の春は、オークス、ダービーに、ジャスタウェイもドバイ、安田記念と結果が出ているので、余計にそういうイメージがありますね。

2戦目も“夢が途切れないような競馬”を

-:ハーツクライの現役時代は知っていますか?

酒:知っています。ディープインパクトが負けた時は衝撃的でした。最初は追い込み一辺倒なイメージがありました。

-:それがあるとすれば、ユキノスイトピー産駒の中で、一番走る産駒になりますよね。

酒:僕は1つ上のお姉ちゃん(テンシノホホエミ)しか知らないですが、他もお父さんが違って、ハーツクライは初めてです。

-:他には、大久保洋吉先生のところにレッドアヴァロンという馬がいました。

酒:最初は領家政蔵先生のところにいたユキノサイレンスですよね。担当していた人に聞きました。今は高野厩舎にいる小川洋平くんがやっていたみたいです。鹿戸(明)厩舎の佐久間騎手がユキノプリシラに乗っていたらしく、「上も背中が良かった」と言っていました。

小牧さん(小牧太騎手)が「良い馬は背中が良くて、落ちる気がしない」と言っていました。例えていた馬はリーチザクラウンやローズキングダムで、ホンマに落ちる気がしなかったみたいです。僕はその話を聞く前から、“ナヴィオンはどれだけ暴れても、落ちる気がしない”と色々な人に聞いていて、その話を小牧さんに聞いて、“やっぱり良い馬は背中が良いんだな”と思いましたね。

-:お姉ちゃんのテンシノホホエミは500キロくらいありましたし、これからまだまだ成長しそうですね。480とか90にはなるんじゃないですか。

酒:あのままいかれたら、子供が大人の運動会でやるみたいな感じですよね。

-:まだ未来像は分かりませんが、楽しみです。まだ一戦しかしていないので、夢と希望ばかりですね。

酒:先生がワンアンドオンリーのコメントで、「夢が途切れないような競馬をしてもらいたい」とよく言いますが、本当にそんな感じです。

ナヴィオン

-:今度は上がり32秒ということよりも、2戦目でどれだけの上積みがあるか、メンバーが強くなったところでどれだけ戦えるか。その先は右回りでどんな走りをするかですね。

酒:まだまだ課題ばかりですし、1回使って1回勝っただけですからね。

-:左手前が好きな馬なら、右回りも良さそうですよね。

酒:コーナーを曲がる時に右で回って、直線を向いた時に左手前に替えて走ったらビューンと行きそうですよね。

-:右回りの方が温存できそうですよね。

酒:普段はCコースとかに行って、右回りでも左回りでも、コーナーと直線に入って替えるんですよ。だから、乗りにくさはないです。

-:馬にとって、調教とレースはラップが全然違います。本当にしんどい時は本能が出ますよね。

酒:人間と一緒で、利き脚があると思います。

-:今年の朝日杯FSは阪神ですよね。

酒:中山よりは阪神の方が良いと思います。

-:それでは暮れに改めて取材させていただきます。まずは新潟2歳Sを頑張って下さい。ありがとうございました。

酒:こちらこそ。ありがとうございます。

ナヴィオン・酒井慎調教助手インタビュー(前半)はコチラ⇒

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酒井慎調教助手