クローズアップ厩舎人・2Pはコチラ⇒

「クローズアップ厩舎人」後半は、ワグネリアンがいかにして日本ダービーを制したのか。2歳時は世代最強レベルと目されながら、弥生賞、皐月賞と着順を落とした中、藤本純調教助手が巻き返しへ向けて、施した策とは。今だから明かされる事実をお確かめいただきたい。

きっかけは高校時代の科学の授業!?

-:改めて藤本さんの経歴を教えていただきたいのですが、競馬界に入るキッカケというか、競馬に興味を持った流れを教えていただけますか?

藤:高校が京都競馬場の近くの高校だったんですよ。科学の授業をやっていた先生がすごく競馬好きで、授業よりも競馬の話をするほど。競馬の話をしながら「ウチの高校の近くでも(馬に)乗れるところがあるんじゃないかな」という話をした時に、興味を持ち出して、一度詳しく聞いたら「京都競馬場にスポーツ少年団という施設があって、そこで募集していますよ」と。僕がちょうど行った時に、同じ高校で5人目のメンバーだったので、同好会が出来るから作って、部活動にしたという感じですね。そこが最初のキッカケですね。

藤本純調教助手

-:それで志したのですか。

藤:その時はこういう職業があることを知らなかったのです。体も小さかったので、とりあえずジョッキーを目指すことになって、地方競馬のジョッキーになろうと思ったんですよね。今はなくなったのですが、短期騎手過程という学校があって、半年間で騎手になれるコースなのですが、結果的に騎手の道を諦めて、ノーザンファームの試験を受けたら受かったので、ノーザンファームに丸5年間行って、そこから競馬学校ですね。

-:名門として名高い友道康夫厩舎ですが、ここへ入られた経緯も簡単に教えていただけますか?

藤:以前いた厩舎が担当制ではなかったこともあり、やっぱりG1を勝ちたいという思いがありました。なおかつ自分の担当馬で勝ちたい思いがありましたね。

藤本純調教助手

-:若くしてその夢を達成してしまったわけですね(笑)。

藤:そうですね。2017年の3月に友道厩舎へ入ってから新馬から担当してきたという意味では、この馬が1頭目なので。いろいろな人から「お前は運が良い」と言われます(笑)。

-:ある程度、デビュー前からこの馬はやれそうだな、とかわかるじゃないですか。先生もそれを任せるとはなかなか思い切った采配でしたね。

藤:ええ、ある程度、計算はしているんじゃないかと思いますけど。本当にありがたいですね。

-:逆に言えば、早速。

藤:でも、クリアしたら、欲望は止まらないので「もっともっと」と思っちゃうので。こんなに早く夢が叶ったらどうしようかと思うのですが、そうなったらそうなったで……。

-:後の人生の方が長いわけですからね。

藤:早過ぎて「たった1年間だけで」とみんなに言われるんですけどね。また欲が出てくるから、いっぱい勝ちたいと思っちゃうので。

ダービー直前に福永騎手と作戦会議

-:目標であるダービーということに関しては、本来そこへMAXに持っていきたい訳じゃないですか。馬の体質的にもキープ力というか、耐えられる資質もあったということですか。

藤:それもありますし、先生からは「弥生賞から1回も放牧なしで、在厩で行く」と聞いていました。ある程度、こちらの手の内で調整できる思いがありましたね。もちろん牧場にお任せすることが悪いのではなく、抜く時は抜いてやれることはできるので、1度「10」まで仕上げてしまっても、こちらでしっかり疲れを抜いてあげることもできると思いました。

-:今の時代だと、レース間隔の短い間でもちょくちょく出ますよね。

藤:そこは先生が「ずっと在厩で行く」と言ってくれたから、メリハリを効かすこともできるなと思ったので、一発目から仕上げることもできましたね。

藤本純調教助手

-:だからこその弥生賞前のハードトレーニングだったのですね。ダービーに関しては、一般的には内枠が有利なこともありますし、枠も外(17番)。戦前の読みや作戦はどうだったのですか。

藤:正直、枠番を聞いた時は“絶対にないわ”と思ったんですけどね(苦笑)。

-:枠順確定後のコメントもよく記事になるものですが、他の方が「最悪」という言葉を使われていた記憶がありますけどね。

藤:少なくても僕も喜べる枠ではなかったので。やっぱりダービーだからどこでも大々的に取り上げられているし、データなども見ちゃうじゃないですか。こんなに遡るまで勝っていないのだな、とね。

-:現役ホースマンでもデータは見るものなのですね。

藤:見ますよ。別にすがっている訳じゃないのですが、どうしても競馬週刊誌さんを見たら、いろいろなデータや情報が書いてあるじゃないですか。チラッとは見ますね。今回も函館記念は1番人気が苦戦と書かれているから、1番人気になったら嫌だな、それくらいは思いますけどね。ただ、それはどうすることもできないので(笑)。

-:枠に関しては作戦というか、ああいう策をとったというのは、事前に把握されていたのですか。

「1回気持ちをリセットさせたかったので、放牧明けのような状態をつくって、そこから手加減せずにビシビシやっていったので。それで、結果的にテンションが上がってしまっても仕方ない、と思っていたんですよね」


藤:ええ、僕も祐一さん(福永騎手)とは個人的に話をさせていただきましたし、皐月賞のままじゃ勝てないだろうと、本当に思っていましたね。皐月賞の軽めの調整がやっぱり裏目に出て、結果が出なかったので、今回はビッシリ仕上げてやろうと思っていたので。一番目標にしていたレースで、悔いを残したくなかったので。

皐月賞が終わった直後、やっぱりああいう競馬だったので、ほとんどダメージがなかったんですよ。1週間から10日くらい、だいぶ楽をさせて緩めました。1回気持ちをリセットさせたかったので、放牧明けのような状態をつくって、そこから手加減せずにビシビシやっていったので。それで、結果的にテンションが上がってしまっても仕方ない、と思っていたんですよね。テンションが上がろうが、何だろうが、結局、体ができていなかったら走らない訳で。

-:結果は見事に。

藤:最高の乗り方をしてくれました。あれ以上は本当にないです。

-:いろいろな人がビックリしたでしょうね。

藤:僕もそうですし、事前から「ある程度ポジションを取りにいくために、前に行く」ということは聞いていたので。

藤本純調教助手

初のダービー挑戦で夢叶い「感無量です」
クローズアップ厩舎人・4Pはコチラ⇒