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安田景一朗調教助手

安田景一朗調教助手(栗東・安田隆行厩舎)


世界トップクラスのスプリンター・ロケットマン、セントウルSでもダッシャーゴーゴーが先着を許したラッキーナインなど、今年のスプリンターズSは例年以上に国際職が強く、そして、日本勢は劣勢と見る向きが強い。 しかし、ここで黙っていられないのが、昨年のスプリンターズS、今年の高松宮記念と、G1で2度の降着の鬱憤を晴らしたいダッシャーゴーゴー、重賞3連勝中のカレンチャン、北九州記念を制したトウカイミステリーの3本の矢を送り込む安田隆行厩舎だ。 世界のレベルは高いのか?日本の意地をみせるのか?命運は安田厩舎に懸かっていると言っても過言ではない、今年のスプリンターズS。3頭に対する思いを安田景一朗調教助手に語ってもらった。

トウカイミステリー
~期待の若手を背に、有終の美を~

-:今回、スプリンターズSに出走する3頭について、御伺いしたいと思います。では、鞍上の北村友一騎手についても、この馬については語ってもらいましたが、まずはトウカイミステリーについて、お願いいたします。

安:この夏の北九州記念でいいパフォーマンスをみせてくれましたけれど、穴人気だったように、重賞を勝ってくれたことが「凄い」の一言ですね。正直なところ、セントウルSやスプリンターズSのことは考えていなかったんです。それだけに北九州記念は滞在競馬で渾身の仕上げでしたね。それに応えてトウカイミステリーも勝ちきってくれましたし、あれ以上の状態は厳しいとは思いますが、現在も高いレベルで状態は安定させています。

-:セントウルSは不運なレースでしたね。

安:前回は勝負所で香港馬にぶつけられてしまいましたけれど、今回は友一(北村騎手)が乗ってくれるので、相手は強いですけれど、この子の競馬をして、どこまでやってくれるのか、というところですね。5歳の女の子で、来年の春には引退なので、最後に大舞台を経験させてあげたいことと、無事に競馬が終わって欲しい気持ちがあります。北九州記念以上の状態で使えないならば、本当は使ってはいけない事なのかもしれませんが、なかなかこういう舞台に立たせてあげられることはできないですからね。なんとかレースに臨んで、無事に帰ってきて欲しいところが本音ですね。

-:安田助手から見た北村騎手のいいところも教えてください。

安:何でも話せるところですね(笑)。普段から、よく食事に行ったりすることもあるんですけれど、かわいい弟分のような存在です。それでも、いつもニコニコしているんですけれど、木曜日に出走馬が確定すると「今週はよろしくお願いします。ビデオをみたんですけれど、この馬はこういうところがあるんですか?」とか連絡してきたり、競馬に挑む姿勢は凄く研究熱心ですね。夏は僕の弟(翔伍調教助手)が北海道に行っていたこともあり、友一が調教を手伝ったりしてくれていたんですけれど、彼で北九州記念を勝てたことはすごく嬉しかったですね。

あの結果で調教師からの信頼も得られるじゃないですか?そういうアピールになりましたし、これからも“北村友一”でどんどん勝ちたいと思っていますね。今回、3頭使う中で、一番人気はないですけれど、快く「(トウカイミステリーで中山に)行かせてください」と言ってくれましたからね。も結果が駄目と思っていくわけじゃあありませんが、今後も色気のある馬で、彼と重賞戦線に行きたいと思いますね。僕は凄く好きなジョッキーです。




カレンチャン
~上昇一途の勢いで挑む夢舞台~

-:続いて、カレンチャンについて、よろしくお願いいたします。

安:カレンチャンは見ての通り、派手さはないですけれど、ここ一連は着差以上の強さでしたね。なかなか重賞3連勝は出来ることじゃありませんよ。函館SSは外に振って、キーンランドは道中、プレッシャーをかけられて、4角先頭で押し切りましたよね。どんな競馬でも出来ること、どんな状況でも勝つ力、これは同じ厩舎のライバルのダッシャーゴーゴーには出来ない業だなと思いますね。勢いならカレンチャンかと思います。

-:ここへ来ての上昇の要因については、どう感じていますか?

安:弟が普段から乗っている馬で、たまに僕が乗せてもらったこともありますが、去年、1000万下を勝ってから半年間休ませたことで、凄く良くなりましたよね。当初は非力さもありましたし、精神的に環境の変化になれない部分もあったので、弟と厩務員さんが本当によくやっているなと。彼らの努力の賜物じゃないでしょうか。

-:休まれる前の函館でも、素質を感じさせるようなレース振りでしたね。

安:その1000万下勝ちの時でも状態が良くない中、勝ったことで、(吉田)照哉社長も「これだけ強い勝ち方をするならば、楽をさせよう」と仰ったらしく、そのおかげで見違えるように精神力がついてきました。それからというもの、どんな競馬でもできるようになって、千四も克服してくれましたから。本当に色んなプレッシャーを撥ね退けて、想像以上に逞しくなっていますね。普段も凄く大人しい馬ですから、ここが悪いというところもないんですよね。

-:この馬といえば、坂路での上がり時計も凄いですよね。

安:凄いですよね。目一杯やったら、11秒台前半が出るんじゃないかと思いますよ。それだけの脚力、素質を持っているので、なんとか、厩舎一丸となって今回は頑張りたいですね。



-:ここ2戦、北海道で目方が増えていた理由はなぜですか?

安:あれは牧場から帰ってきたことで、ちょっと太くなっていたんです。それでなかなか絞れなかったというか…。そんな中で、函館SSはギリギリ間に合った感じだったんです。弟も「これで函館SSを勝てるようならば、キーンランドは絶対勝てる!」と言っていましたが、その通りでしたね。それが着差以上の強さでしたし、今回はG1になって海外の馬もいますけれど、それを撥ね退ける気がしないでもないですね。

-:カレンチャンといえば、不思議と内枠を引くことが多いですよね。

安:そうなんですよ!嬉しいことに内枠が多くて、「大一番が外だったらどうしよう」なんて思います(笑)。僕自身はそれほど気にはなりませんが、乗っている弟は「内枠は欲しい」と言っていますよ。でも、これまで通り、内枠は当たりそうな気もしますよね。(よく外枠を引く)ダッシャーは外枠で(笑)。

-:それに“クロフネで連勝中”というと…。

安:(08年のスプリンターズS勝ち馬の)スリープレスナイトにダブるところはありますよね。そういう意味でもワクワクします。

-:その他の血統面でみると、短距離を走っているのも、少し意外に思えます。

安:トニービンの肌でスプリングチケットというと、そのお母さんも中距離で走っていましたね。だから、当初は大トビで器用さがない馬なのかと思いきや、いざ乗ったら、回転の速いピッチ走法ですし。父のクロフネのようなタイプではないですね。似ていると言ったら、クロフネの毛色と大人しさなんかじゃないですか。

-:同じクロフネ産駒のホエールキャプチャなんかは大人しいタイプではないですよね。

安:あ~、お転婆のような子ですよね。うちのも「スイッチが入った時は怖い」なんて聞きますが、基本的には大人しいですからね。

安田景一朗調教助手インタビュー後半
ダッシャーゴーゴー(編)「底知れぬ素質、3度目の正直へ」へ→

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【安田 景一朗】 Keiichirou Yasuda

1978年10月27日生まれ。栗東生まれ、栗東育ち。父は安田隆行調教師。弟は同じく安田厩舎でカレンチャンなどを担当する翔伍調教助手。

ジョッキーであった父の影響で自然に競馬に興味を持つ。小学校5年から乗馬を始めると、栗東高校で馬術部に入部。スポーツ推薦で青山学院大学に入学。

そこからノーザンファーム、競馬学校を経て、2002年6月に約半年間、作田厩舎に所属。2003年1月から安田隆行厩舎に所属し、現在は調教師試験も受験しつつ、厩舎のスポークスマンとしても活躍している。

安田隆行厩舎については、「みんないいスタッフで、いい時も悪い時も力を合わせて頑張ってくれます。調教師も仕事が終われば親だけれど、調教師としても従業員を信頼してくれるし、先生のおかげで楽しい仕事をさせてもらっています。スタッフの声にも耳を傾けてくれる調教師であることには感謝しています」とのこと。