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中井裕二騎手

中井裕二騎手


今年のルーキーで初勝利を一番乗りで挙げた中井裕二騎手。その後も順調に乗り数を確保すると既に6勝をマークし、同期の中では一歩抜きんでた存在感を放っている。積極的な騎乗振りは勿論のこと、その明るいキャラクターで、トレセン内での評判も良好。今後も目が離せないジョッキーとなるであろう。今回は騎手デビューまでの経緯、デビューからの濃密な経験をジックリと語ってもらった。

初勝利の味と先輩ジョッキーの存在


-:まず、どういう経緯で騎手を目指そうと思ったのでしょうか?

中井裕二騎手:ジョッキーになろうと思ったキッカケは小学校の時に京都の京北町にある育成牧場で体験乗馬をしました。最初は馬に乗ることが楽しいなというぐらいでした。僕は車が大好きでフェラーリに乗りたかったのですが、フェラーリに乗るには稼がないとダメなので……。小学生の頃からそういう思いというか、夢がありました。中学校に入って、“世界バリバリバリュー”という番組で騎手と職業が取り上げられていて「武豊さんが何億円稼がれています」とか、「平均年収が3000~4000万ぐらい」というのが出ていて、「お前、これやったらフェラーリ乗れるぞ!」と父に言われて、騎手になるための募集要項が画面に出て、身長や体重など全ての条件に該当していたので、“これ行っとこか!”という気持ちで始めました。

-:バリバリバリュー様様ですね(笑)。

中:本当にそうです。それから京都競馬場に行くようになって、春の天皇賞でアドマイヤジュピタを観て、“むっちゃカッコええやん!”と思いました。

-:実際に競馬学校に入ると楽しいことだけではないですよね。

中:ええ、全然楽しいことはなかったです。まず入ったら、中学校までしか知らないので、先輩との上下関係が僕の中では壁でしたね。馬乗りは相変わらず楽しかったのですが、馬乗り以外のことでそんなに神経を使うとは思っていなかったので、僕の中ではキツかったです。

-:1日中、部活みたいな感じですからね。

中:そうです。夜まで我慢してやっと寝られると思って寝て、朝起きたら憂鬱な時もありました。

-:なるほど。同期の中では馬乗りの成績はどれぐらいでしたか?

中:そうですね、本当に真ん中ぐらいで、平均的でしたね。

-:トップは誰でしたか?

中:菱田裕二ですね。あの人は1年留年していたこともあって、すごく上手でしたね。

-:今でもすごく童顔ですが、1年先輩なんですね。

中:オバさんキラーですからね(笑)。

-:オバさんキラー?可愛すぎるからですかね。

中:ハハハ、あの目で見られると怒れないですからね。どのジョッキーも……。全体的に見て「競馬学校は面白かった」と言う人もいますが、僕は一生行きたくないですよ。

-:まあ、ベタな質問で憧れの騎手とかいますか?

中:やっぱり、憧れの騎手は競馬なんかを見ていて、岩田さんとか川田さんですね。

-:ビッシリ追えるハード系ですね。

中:岩田さんとか川田さんとかは追い方がダイナミックで、これぞ追い込みみたいな感じですから。

-:腕っ節の強いタイプですね。

中:目標というか、カッコが良いなという先輩ジョッキーはその二人だったのですけど、競馬に乗って、一緒にレースにさせてもらって、やっぱりウォッーと思ったのは武豊さんですね。

-:当時の憧れの騎手と現場に出て、実際デビューして3、4ヶ月した後に変わってきたこと、デビューする時の憧れの騎手と現在の憧れの騎手の差ですね。体型的にも近いからですか?

中:そうですね。やっぱりすごいオーラを放ってらっしゃるというか、雰囲気が違うというのがありますね。

-:なんというか独特の、近寄り難いオーラを出していますからね。

中:ユタカさんは(道中でも)絶対的なところにいらっしゃるので……。

-:勝ち星云々じゃなくて、ですね。やっていることが洗練されているし。

中:そうですね。カッコ良いですね。




-:その辺りは競馬ファンには分かりにくいかもしれないですが、実際乗っている騎手同士の方が評価されるのでしょうね。

中:ずっとテレビで見ていたユタカさんにしろ、岩田さんにしろ、一緒に競馬に乗れていることはすごく有り難いことですね。

-:いきなり2鞍目で勝利を挙げて、同期の中では一番星でしたが、初勝利の味はどうでしたか?

中:正直、ゲートの速い馬だったので「とりあえず、たてがみを持っとけ」と言われていました。たてがみを持っていたら、ポーンと出てくれました。

-:“たてがみを持つ”というのは、ファンの人に説明するならば、落ちるなという意味ですね。

中:そうですね。落ちるなという意味と、勝手にゲートは出るから邪魔をしないようにということです。そうしたらポーンと出たので、後はそのままだったと思います。

-:自分で意識的にポジションを上げようということはなかったのですね。1回他の馬が前に行きましたが。それを交わしてということですね。

中:丹内さんの馬が行きましたね。僕も中途半端だったので、丹内さんが上手く対処してくれて、最終的に3コーナー手前から行きました。

-:新装中京だから、そこからは誰も走ったことがない未知のコース。他の先輩ジョッキーも仕掛けどころが何処だとか、馬場がどうだとか分かっていなかったですからね。

中:そうですね。あとは3キロ減もありましたし、もちろん馬の力もありましたから。

-:直線はステッキを連打せず、でしたね。

中:連打しなかったですね。ハンドライドです。

-:あれは見ていて好感を持てました。鞭をパチパチ叩かないでね。

中:それは競馬学校の蓑田先生の教えなのです。「鞭に頼らずに自分の腕っ節で追ってこい」といつも言われていましたから。


「今はガムシャラに3キロ減を活かして乗っていくしかないですね」


-:あのレースやその後の積極的なレースを見ていて、色々な人から「中井君どう?」と聞かれたので、この積極さは締められると思ったので、締められた後にこれが出来るかどうかじゃないか?と答えていたんですよ。

中:いや~、やっぱりそうですね。

-:逆に先輩から何も言われない新人は箸にも棒にもかからないということで、締められるということは「コイツほっといたら上に上がって来るんちゃうか?」という怖さがあるからで、良いことだと思いますよ。

中:先輩ジョッキーも正しいことを言っていられるので、僕がやらなかったら言われないのであって、僕がやるから言われるのであって……。

-:それは何が足りていなかった訳ですか?例えば積極的な競馬でも競馬を壊すなということですか?

中:例えば16頭立てなら、僕以外15頭いる訳で「そのレースに乗る以上は他の15頭のコトも考えないといけない」と先輩ジョッキーから言われました。積極的に逃げて、もし僕が落ちたら後続の馬に乗っている人が何人落ちるか分からない。積極的にグイグイ行くのも良いけど、ちゃんと周りを確認して、責任を持ってということは常に言われていますね。後は「ただ1周回ってくるだけではなくて、考え過ぎるほど考えて1分もしくは2分を自分のモノにしてこい」と言われています。

-:それは数を乗らないと無理ですよね。

中:そうですね。

-:例えば5年ぐらい乗って、あの時はこうしていたら良かったとか。

中:後々、分かることかも知れないですが、今はガムシャラに3キロ減を活かして乗っていくしかないですね。

-:競馬に対して何か心境の変化みたいなものはありますか?実戦を重ねて見えてきたものとか。

中:やっぱりまだ全然ですね。余裕がある馬で自分にも余裕があれば周りは勿論見られますが、脚が上がった馬やアップアップの馬とかヨレる馬とかに乗っていると僕もアップアップになってしまって、僕自身も体がヨレて、その馬の事しか見られていないという状況なので……。

-:最初から人気の馬に乗る訳ではないですし、2ケタ人気の馬に乗ることも多いですからね。そこで消極的に楽な競馬をして後方を追走していたら、目立てないからと。

中:そうです。逃げてバテたにしろ、一度は先頭に立つ訳ですから。

-:逃げるとしても16頭いたら16分の1しか叶わない訳ですからね。まず、スタートが決まらないと逃げられない訳ですし、スタートが決まってないのに逃げに行ったら、また言われてしまいますしね。

中:怒られますよね。でもひたすら面白いですね。奥深くて。




-:競馬で乗る前は、調教でも乗っている馬はいるとは思うのですが、その馬の前のレースがどうだったとかテレビとかパソコンとかで下調べはする方ですか?

中:ムッチャしますね!他の方々がどれだけしているか分からないですけど、僕は一人で部屋に籠ってやるタイプですね。あとは岩田さんに教えてもらったりしていますね。親身になって教えてくれる先輩の所に行って聞くことが多いです。

-:他には先輩ジョッキーなら誰に聞きますか?

中:今はやっぱり岩田さんですね。すごく可愛がってもらっていますから。まだまだユタカさんに聞くのは恐れ多いですね。

-:自分が好きな川田ジョッキーとか岩田さんとは体格が違うから、やろうとしていることが参考にならないってことはありますか。

中:4コーナーからの追い込みなんかは真似も出来ないですけど、進路の取り方というかこういう時にはどこを見ているかとか言うことは体格に関係なく出来ますし、教えてくれますからね。

-:なるべくコースの内を走るって意識はありますか?

中:それはもう意識しています。

-:馬券ファンとしては嬉しいことですね。人気薄の馬に乗るのに外回すと力的に上位には来られませんから。

中:がっちり内が詰まっていたら仕方がない面はありますけどね。

-:それはこちら側も諦めますから。差し馬でもインを突いてくれて詰まったら仕方がないという腹で買っている訳ですから。それで外を回しているようでは……。だって互角の勝負では無理なのですから。人気の馬が外を回ってくれて、こっちが買っている人気薄が内からじゃないと面白みがないですよね。日本の競馬は結構スカスカ気味ですからね。どこかは開くので。

中:それを狙っていたら良いことがありますからね。

-:レース後、パトロールフィルムを見に行っているのですが、結構内が開いて、G1であっても開くという印象があるけど、若いジョッキーがバンバン内を突いたら怒られる。そこは開いているのではなく開けているのだと……。

中:色々ありますからね。


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【中井 裕二】Yuji Nakai

1993年 京都府出身。
JRA初騎乗
12年3月3日 1回中京1日3R ギルドマスター(3着/16頭)
JRA初勝利
12年3月3日 1回中京1日8R ニシノマナザシ
JRA通算成績は6勝 (12/6/24現在)


出身地は京都府亀岡市。テレビ番組で騎手という職業を知り、騎手を志す。 今年3月3日にデビューを果たすと、早速8Rを制し、同期の中で初勝利一番乗りを達成した。 ここ最近は一日に数多くの頭数の調教をこなし、トレセン内でも引っ張りダコ。同期の中でも注目度はナンバーワンの存在といえる。