楽に先頭、そのまま押し切る強い内容 アスカノロマン完勝!

アスカノロマン

16年5月21日(土)3回京都9日目11R 第23回平安S(G3)(ダ1900m)

アスカノロマン
(牡5、栗東・川村厩舎)
父:アグネスデジタル
母:アスカノヒミコ
母父:タバスコキャット

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前走、アウォーディーに最後まで抵抗したアスカノロマン。その宿敵が出ない戦いとなると独壇場が予測された。
外枠からスンナリの先手。後はマイペース、と言ってもスローではない。12秒台の前半を刻むよどみのない流れ。それでいてラスト800M標から11.7~11.9とスピードをアップ。後続の動きをシャットアウトさせる完璧な流れを造り、直線へ。最後まで他馬を寄せつけない完璧な内容の勝利であった。
2着争いはクリノスターオークリソライトが熾烈な戦いで何とかクリノスターオーが確保。結局は行った行ったの流れで終わった…。


真夏日かと思えるほどの関西の気温。京都競馬場も30度とかの情報だ。それでなくともギャンブル場は熱いのにだ。
しかしそんな暑さをもぶっ飛ばすほどの強さで、アスカノロマンが目下の体調の良さをみせつけた。前回同様の58キロを背負うのはクリソライトと2頭。そのクリソライトには前走以上の差を広げた。

ではスタートから振り返ってみよう。まずはゲートから。ダッシュ良くアスカノロマンが飛び出す。一番のスタートを切る。そしてチラっと内の各馬の出方を見る太宰J、その間、瞬時の事である。100mも行かないうちに、もう一度チラっと内を見て誰も先手を主張する気がないのをみて、スーッと先頭に立っていく。すぐ内のクリノスターオーがついて行く。
1周目のゴール板を過ぎる時には、もう内ラチにくっついていた。2番手クリノスターオーに外にブライトアイディア、その後ろにクリソライト、2番人気の支持を受けたロワジャルダンは3列目の最内、ラチ沿いを進む。ドコフクカゼが中団の少し後ろ目、最後方がサンマルデュークでブービーのトラキチシャチョウから、もう3馬身も離れて1コーナーを各馬が通過。

そのまま後続を引き連れてアスカノロマンが進む。コーナーワークでロワジャルダンが4番手のインを確保。2コーナーを廻る。アスカノロマンのリードは1馬身、2番手クリノスターオーにブライトアイディア、ロワジャルダンとの順位は変わらず。マイネルクロップ、クリソライトと半馬身ずつの間隔で進む。1000mの通過が1.01.3とそう速くない流れ、クリノスターオーがアスカノロマンとの差を体ひとつから4分の3と詰めていくが、鞍上の幸Jの手綱は動きだした。どうやらペースが上がった様である。11.7と、太宰Jが仕掛けをしたのだろう。クリノスターオーにブライトアイディアも手が動きだすが、アスカノロマンの太宰Jの手綱は変わらずの持ったまま。次の1ハロンも11.9と、完全にペースに乗る。

4角に入る時には、2番手クリノスターオーとはもう2馬身の差が開いた。それも手綱をまったく動かさずである。そして4角をクルリと廻って内ラチ沿いを進むアスカノロマン。
直線に入ってきて、その差は2馬身から3馬身となっていく。太宰Jはオーロラビジョンで後続の動きを見るなんてことはしてなかった様子。もし見ていたのなら、後続とだいぶ離れたのを知ってそんなに追わなかったはず。
太宰Jはラスト200mのハロン棒の前に左ステッキを入れる。まず2発、そして一拍して6連発と、叱咤激励のムチを入れて追っていく。後ろは迫るどころか、ますます差が広がっていく。
クリノスターオーにクリソライト、その2頭の間にマイネルクロップが入っての2着争いとなる。大外では後方を進んでいたサンマルデュークとトラキチシャチョウが追い上げてきており、馬体を並べて前を追うが、2着争いに参加できる脚色までにはない。
かくしてアスカノロマンはクリノスターオーに5馬身の差をつけて、楽々と重賞2勝目を飾ったのであった。

3週連続で稽古をつけた太宰J。手に取るようにアスカノロマンが今、充実しているのを感じ取っていたに違いない。いわゆる体調の良さと漲る力を感じ取っていたのだろう。だからこその強気な姿勢での競馬内容で、後続をシャットアウトさせたもの。

これで帝王賞へと進み東の正横綱、ホッコータルマエに挑戦となるのだろう。そんな今、充実期を迎えたアスカノロマンが制した平安Sでした。


平林雅芳 (ひらばやし まさよし)
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、さらにその情報網を拡大し、関西ジョッキーとの間には、他と一線を画す強力なネットワークを築いている。