絶妙な手綱捌き&万全の環境を整えた厩舎力でサトノクラウンがキタサン斬り

●6月25日(日) 3回阪神8日目11R 宝塚記念(G1)(芝2200m)

昨年の有馬記念を制したサトノダイヤモンド、ダービー馬マカヒキは早々に出走を回避。大阪杯、春の天皇賞を連勝してきたキタサンブラックにとっては、勝負付けが終わったメンバーばかりということで、ファンは単勝オッズ1.4倍という圧倒的1番人気に支持したが、勝負の世界は何が起こるか分からない。ダービー以降、1度も3着を外さない抜群の安定感を見せていたキタサンブラックがまさかの失速。勝ったのはキタサンブラックを徹底的にマークしたサトノクラウン(牡5、美浦・堀厩舎)だった。

少頭数でもあり、キタサンブラックが堂々逃げの手に出ると思われたが、ハナを奪ったのは、これまで1度も逃げたことがないシュヴァルグラン。それにシャケトラが続き、キタサンブラックは外めの3番手。その後ろをトノクラウンがピタッとマークする。レース後、「超うれしいです」と第一声を上げたM.デムーロ騎手は「競馬の前、先生へも、キタサンブラックを見ながら競馬ができたら、簡単かもしれないって話していたんだ。本当にそうなった。キタサンブラックはすごい強い。去年の宝塚記念もドゥラメンテと戦ったし、何度も一緒に走っている。あの馬をマークしながら運べて、サトノクラウンも気持ちが乗っていた」と作戦を振り返る。

意外な展開に場内もどよめく中、今度はキタサンブラックの外から前をうかがう絶妙な仕掛け。これに反応したのは前を行く3頭で、前半緩かったペースが6ハロン目から1F11秒台のラップにペースアップ。ここが勝負の分かれ目で、脚を使わされたシュヴァルグラン、シャケトラ、キタサンブラックは直線で伸びを欠き、マイペースを貫いてジッと脚を溜めたサトノクラウンはまさに末脚一閃。外からアッという間に前を飲み込み、栄光のゴールに飛び込んだ。

「4コーナーの感触がすごく良かった。やっぱり、こんな馬場が合う。直線は馬なりで伸びたね。気持ち良かった。さすがG1ホース。香港ヴァーズで負かしたハイランドリールがアスコットのG1に勝ったし、能力には自信を持っていた。大阪杯は残念だったが、ちょっと調子が良くなかった。今回はいい結果がでて、ほんとうに良かったよ」とM.デムーロ騎手も会心の笑みを見せた。

適距離と思われた大阪杯での6着からワールドクラスのポテンシャルを引き戻した陣営の手腕も見逃せない。管理する堀宣行調教師は「馬がよくがんばってくれ、ジョッキーもうまく乗ってくれました。大阪杯でいい結果が出ず、リベンジとしてスタッフも取り組み、それが実りました。勝因は状態に尽きます。長距離輸送への対策を立て、輸送会社や阪神競馬場の業務課へも要望を出し、無理を聞いてもらったんです。移動は前々日。馬運車の枠を広めにして、ストレスをの軽減に努めました。出張馬房も関東馬のエリアではなく、関西馬の当日滞在用を割いてもらいました。先週に検証して、兵庫で行われている選挙のアナウンスが響かない場所を指定しました。その成果でフレッシュさを保てましたね。まだ環境の変化に弱いなかでも、少しずつ馬も成長し、なんとか対応してくれました」と淡々と話したが、これが何度も国際G1を手にしてきた厩舎力。

「ゲートに課題がある馬ですが、大外枠でしたので、ジョッキーも乗りやすかったと思います。流れが落ち着いたところで動いていき、他馬も行き出したので、この馬向きの流れに持ち込めた。抜け出してソラを使う面も、きちんと対処してくれました。4コーナーを手応え良く回ってきた段階で、安心して見ていられましたよ」と胸を張った。

気になる今後について「馬場はやや重でしたが、良でも走れます。春の段階でのオーナーとの相談では、サトノダイヤモンドが海外遠征するので、こちらは国内に専念するプランでしたが、いろいろな選択肢がありますので、まずは馬の状態をしっかり見極め、プランを立てていきたいと思います。距離はあったほうがいいのですが、工夫して2000mにも対応できます。可能性は決め付けたくありません」と具体的なプランは語らなかったが、秋は海外遠征断念を発表したキタサンブラックとの再戦か、それとも再び海外か。国内最強馬を破って夢は大きく膨らんできた。