関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

中井裕二騎手

中井裕二騎手


新人賞獲得よりも大事な騎手としての心掛け


-:今の騎手としての目標は何でしょうか?もうワンランクステップアップしたいとかあると思うのですが?

中:デビュー前とかは新人賞と言っていたのですが、新人賞云々よりも1レース1レース納得してもらいたいですね。僕の騎乗を良かったなと思ってもらいたいです。

-:8着でも9着でも納得できる競馬、ということですね。

中:1周とか2周とか回ってきて、調教師さんやオーナーさんがモヤモヤとした気持ちが残った状態でレースが終わるより、僕が乗って勝ったにせよ負けたにせよ納得してもらえれば、着順に関係なく意味があったと思うので……。

-:見ている調教師さんや馬主さんからして不可解なレースというか、何でこう乗ったのか分からないレースは無くしたいということですね。

中:そうですね。だから、例えばどんなに着順の悪い馬でも最後まで追ってきたら「よう最後まで追ってきたな、ありがとうな」と言ってくれるので、そういう時に初めて納得してもらえて良かったなと思います。

-:千田厩舎のブリスコーラという馬に乗っていましたね。(中井騎手が)乗る前はユタカさんが乗って7着でしたが、中井騎手が3キロ減で乗ったらもう少し着順が上がるかなと思ったのですが、思ったより結果が出ませんでした。

中:休み明けもあったのですが、一番良い所には付けられたのですが……。

-:あそこから伸びたらな、というのがあったのですが、伸びなかったですからね。

中:そうですね。もうちょっとなのですけどね。

-:ちょっと重たかったのもあったのでしょうか?

中:だから手応えがすごく良かって、さあ、ここからという時に……。でも走る馬だと思いますよ。すごく背中の雰囲気が良い馬ですからね。

-:(父が)オンファイアですね。瞬発力はありそうですか?

中:ありそうです。やっぱり使い込んで味が出てくる感じだと思います。

-:元々かなり煩い馬でしたからね。すごく俊敏で大きくて、骨格もしっかりしているのですが、速く動く時とか暴れる時はすごく速いので、これは危ないなという感じでした。

中:でも乗った感じはすごく良い馬ですよ。タッパもあって。

-:がっちりしていますからね。芝よりダート向きなのですかね?

中:ダートの方が良いと思います。



-:ダート馬とか芝馬とか分かるようになってきましたか?

中:結局は競馬に行ってみないと正直分からないですね。競馬で1回走ってみないことには。

-: 普段は結構な量の調教に乗っていますよね。

中:ありがたいです。たくさん乗せてもらっています。

-:それだけ乗っていると、この馬の背中はダート馬とか芝馬とか分かるのではないですか?そこまでは自信がないですか?

中:全然自信がないです。意見を聞かれれば答えるようにはしていますが、調教師さん次第ですね。僕は頼まれれば一生懸命乗るだけですね。

-:調教の時に気を付けていることはありますか?

中:やっぱり競馬だったらすぐに終わるじゃないですか。例えば、アブミを踏めていなかったら踏んでみたり、ステッキワークを練習してみたり、競馬で出来ないことを調教ではするようにしています。

-:右ムチ、左ムチを持ち替えは全然問題ないですか?

中:そうですね。1レースに2、3回は(持ち替えるように)心掛けていますね。

-:例えば、未勝利戦で最後バタバタの馬だったら持ち替えの練習をしている人とかいますよね。そういうこともたまにはしますか?

中:たまにはしますね。

-:肉体的な強化とかアスリートとして気を付けていることとか取り組んでいることはありますか?

中:取り組んでいることはもちろん木馬に乗ることです。

-:木馬は一度乗せてもらいましたが、むっちゃしんどいですね。

中:本当にしんどいですね。そんなにトレーニングが得意な人はいないと思いますが、僕は特に得意ではないです。根性がないですから。

-:現代っ子ですね。

中:間違いないです。体力をつけるために軽く走るぐらいしかしていないですね。



-:ここ(栗東トレーニングセンター)の馬場を走っているのですか?

中:馬場は走らないです。人に見られると恥ずかしいですから。トレセンの外周の歩道を走っています。歩道のキレイな道があるので……。

-:走っているせいか体格的にも痩せ型ですよね。

中:168センチで48か49キロ。女の子だったらスリムで良いと思いますけどね。

-:もうちょっと脚力とか腕力も付けたいとは思っていますか?

中:腕力はつけたいです。下半身については走っているので、ランニングで下半身の安定を求めています。木馬に乗ったり、バランスボールですね。腕立て伏せチックなやつです。調整ルームで色々なジョッキーさんがトレーナーを雇っているので、合間にコソッと聞いてみたりしています。

-:体幹を鍛えているんですね?

中:最近、松山先輩とか川田先輩を見ているトレーナーさんと出会ったので、トレーニングの事については何でも聞くようにしています。

-:お金に関しては、まだ自由にはならないですよね。

中:そうですね。進上金は先生に預かってもらっています。

-:騎乗料で生活しているのですね?

中:生活すると言っても、例えばご飯を食べに行っても、年上の先輩ジョッキーさんや厩務員さんが出してくれますので、自分の趣味である服を買うぐらいにしか使わないですね。あとは仕事用の馬具とかですね。

-:馬具のこだわりはありますか?

中:まだないですね。乗れたら良いと思っています。


騎手・中井裕二のココを見てほしい!


-:プロっぽい話、オレはこうなんだ!という話、プロとして馬乗りとしてのこだわりはないでしょうか?中井裕二はこうだという点ですね?

中:それは……いいです。脱力系ジョッキーで……。ハハハ。やる時はやる。やらなくてよい時はやらない。

-:返し馬のこだわりとかありますか?

中:返し馬に関しては色々試すようにはしています。その馬の右手前、左手前に癖がないだろうかということですね。それは先輩ジョッキーの浜中さんから「返し馬は大切にしろよ」と言われました。自分なりにちょっとでも感じ取ろうと競馬前に試しています。やっぱりテン乗りが多いですから。

-:特に短距離ダートのレースを見ていると直線で手前を替えない馬、替えられないと言いますか、そのまま行ってしまって、右回りなら右手前だけで走ってしまう馬とかがいますが、そういう場合は手前を替えようということはしていますか?

中:していますが、手前を替えなくても……。替えた方が良いのかもしれないですが、その馬のリズムとかバランスなんかもあると僕は思いますから。

-:しかも馴致まで遡らないと出来ないことですからね。馬にしても今、急にしろと言っても出来ないでしょうからね。

中:いざやれと言われても無理ですよという話ですよね。

-:基本的には手前を替えた方が良いかもしれませんが、実際は手前替えても同じということもあるかもしれませんからね。

中:そうです。手前を替えたら急に差される馬もいますしね。無理し過ぎないことも大事だと思います。

-:スタートして右手前で降りてしまう馬もいるでしょうからね。

中:ケージーヨシツネなんかもそういうタイプなので、1000万クラス4着の時なんかも手前を替えなかったこともありますし、前走の500万を勝たせていただいた時は言うことを聞いたのです。

-:じゃあ左手前を出してくれたのですね。

中:そうです。ポロッと。ウォーと思って、これはキター!これを待っていたと思ったら案の定強かったですからね。

-:それは逆算して、スタートした時に右手前か左手前かで最後に脚を残しているかどうかが違ってきますよね。

中:違ってきます。


「そういう馬だから依頼されているのだと思います。何かアクションというか変えておかないと……。新しい面を引き出せたら一番良いと思います」



-:案外右手前から左手前に替えにくい馬というのはスタートだけでも左手前で降ろしてやろうという気持ちで乗っているのですか?

中:いや、僕はそこまで神経が回っていないです。

-:理屈の上ではそうですよね。

中:そうですね。理屈では、それがベストだと思います。そういう気持ちを頭の中に置いておくだけでも全然違うと思います。でも僕は1歩目というのはゲートを切るタイミングもありますし、馬の好き好きもありますからそこまでシビアには考えていませんね。

-:同じ馬でもレース毎に駐立の状態が違ったり、一定ではないですからね、競馬というのは。1番枠に入ることもあれば16番に入ることもありますし、待たされたり、他の馬との兼ね合いがあったりもしますからね。

中:ゲートは本当に奥深いですし、面白いですね。ポンとゲートを出た時に自分の世界だけになる訳じゃないですか。僕の中ではあれが堪らないですね。

-:それからどうなるのですか?出たから積極的に行くのか、出たけど(他の馬に)どうぞとなるのか?

中:いやいや、僕は出たら行くしかないでしょう!という頭です。

-:でもG1を勝っている馬なんかも好スタートしてジワっと下げて折り合ってから差すというのがありますよね。

中:やっぱりそれは経験を積んだ馬だと思うので、僕が乗せてもらっている馬は3キロ減だからこそですから。

-:他のジョッキーでは足らないところを3キロ減で補うとういことがほとんどだからですね?

中:そういう馬だから依頼されているのだと思います。何かアクションというか変えておかないと……。新しい面を引き出せたら一番良いと思います。


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【中井 裕二】Yuji Nakai

1993年 京都府出身。
JRA初騎乗
12年3月3日 1回中京1日3R ギルドマスター(3着/16頭)
JRA初勝利
12年3月3日 1回中京1日8R ニシノマナザシ
JRA通算成績は6勝 (12/6/24現在)


出身地は京都府亀岡市。テレビ番組で騎手という職業を知り、騎手を志す。 今年3月3日にデビューを果たすと、早速8Rを制し、同期の中で初勝利一番乗りを達成した。 ここ最近は一日に数多くの頭数の調教をこなし、トレセン内でも引っ張りダコ。同期の中でも注目度はナンバーワンの存在といえる。