競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【天皇賞・秋】好メンバー集う秋の大一番
2024/10/21(月)
今年もいいメンバーが集う。3冠牝馬のリバティアイランドに2頭のダービー馬。ドウデュースとタスティエーラ。大阪杯勝ちのベラジオオペラ、皐月賞馬ソールオリエンスも居る。そしてGⅠを2週連続勝利のルメールはレーベンスティールだ。この6年で5勝と凄い流れ。レイデオロにアーモンドアイとイクイノックスは強烈だった。今年も面白い戦いになりそうだ。
先週、リバティアイランドの調教を観る機会があった。流れる様な動きで、実にいいなと感じた。その後でドウデュースが追い切ったが、こちらは重厚な動きであった。伏兵と言っていいのか、ジャスティンパレスやC・デムーロが騎乗のダノンベルーガ。岩田康のノースブリッジに岩田望となるホウオウビスケッツと不気味な馬達も居る。好メンバーの秋天皇賞だ。
【秋華賞の回顧】
24年10月20日(日)京都11R 菊花賞(G1)芝3000m
- アーバンシック
- (牡3、美浦・武井厩舎)
- 父:スワーヴリチャード
- 母:エッジースタイル
- 母父:ハービンジャー
- 通算成績:7戦4勝
菊花賞もたくさん観てきたが、ここまで複雑な流れは知らない。1頭だけ大きく離して逃げる大逃げやスローな 展開はあろうが、ここまでトップを行く馬が入れ替わる流れはなかったと思う。絶好の枠を引いた筈のダノンデサイルが逆にそれが仇になってしまった。
外を引いたアーバンシックにヘデントール、アドマイヤテラが向こう正面から坂の下りと思う様に動けて、菊花賞の勝ちパターンの4角先行集団の絶好位で直線へ入ってきている。ダノンデサイルも鋭角に最終コーナーを廻り外へ出して前を追いはしたが、坂の下りで縦長での後ろの位置と前から離され過ぎてた。道中で動くのも競馬だしジッと動かず脚を貯めるのも競馬である。勝利した時は神騎乗と言われ、負けたら騎乗ミスと叩かれる。
エコロヴァルツが最初の逃げを演出、ノーブルスカイやメイショウタバルが1周めで先頭。それらは流れのなかでの行動だ。ただ、後方に居たピースワンデュックが馬の中をどんどん前へと進出。1コーナーに入る前にはエコロヴァルツと接触気味。
さらに前へ前へと出て行き、2コーナから先頭。向こう正面の時には思わず競馬新聞を見直したぐらい。鞍上はベテランも馬が若かった模様。この流れで先行馬は皆、苦しくなった感じだ。
アドマイヤテラが後ろから動いて前へ、3コーナーから更に坂を利して前へ前へと。アーバンシック、ヘデントールが続いてあの結果となった訳だ。騎乗した馬が4頭居て、そのなかで勝ち馬を選んだルメール。2、3着馬も前走乗った馬だった。
ダービーまで騎乗の横山武史からルメールへバトンタッチの秋。その点について横山典Jに聞いた。《武史はおろされたのか》の問いに彼は『ファーストジョッキーが空いているなら乗るのは当然だ』の答えだった。プロだからこそ判る厳しい世界と改めて感じた瞬間だった。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。