競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【阪神大賞典・解説】貫録の5馬身差、シャケトラが圧勝でいざ天皇賞へ!
2019/3/19(火)
19年3/17(日)1回阪神8日目11R 第67回 阪神大賞典(G2)(芝3000m)
- シャケトラ
- (牡6、栗東・角居厩舎)
- 父:マンハッタンカフェ
- 母:サマーハ
- 母父:Singspiel
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シャケトラには相手不足の一戦だったに違いない。独壇場となった結果ではあったが、ロードヴァンドールがもし単騎の逃げが出来ていたら、思いがけない逆転劇があったかも知れない。そんな風に思えたロードヴァンドールの粘りであった。だが実際にはシャケトラが5馬身差の堂々の勝利。2着のカフジプリンスから2馬身半もあったロードヴァンドールがこのレースを面白くしたのは間違いなかったが……。
好枠を利してロードヴァンドールが行く。遅れたが、サイモンラムセスも俺が前だとばかりの意思表示で行く。おそらく3Fぐらいまでは、どちらも引かない気持ちだったに違いない。12.7~10.8~11.4と短距離かと思える入り。一旦引いて2馬身ぐらい後ろを追走していたロードヴァンドールだが、1コーナーを廻るあたりから再び前へと出て行く。少し内と間隔を空けながら前へと行く。2コーナーを廻ってから先頭へと行く構えだ。これにはサイモンラムセスの小牧騎手も引いた。そこからはまだ1400ぐらいある地点。
そこから脚を貯めるのではなく、そのままサイモンラムセスを離して行く。おそらくそこでのラップは7F目の12.0の処だと思える。この仕掛けには、サイモンラムセスの後ろの馬には応えたに違いない。
早めにシャケトラが動きだし、3コーナーの坂を下って行く時には2番手に上がった。それでも前からはまだたっぷりとある差だったが、勢いはハッキリとシャケトラは来れそうと思えるもの。4角に入った来た時には追っていなかったのは、まだ先頭のロードヴァンドールとシャケトラだけ。カフジプリンスもかなり追っていたし、外目から脚を使って来ていたケントオーは躓き加減になったりもしていた。リッジマンも来れそうな手応えではなく、追う側の馬達がバタバタしだしていた。
そもそも、スタートでコルコバードがアオって最後方。坂の下りでは前から100m以上も離れていた。終始、最後方を進んで2コーナーからは少し上がり気味でシャケトラと並ぶ処もあったが、シャケトラが動いて行った時には反応できなかった。上がりの600mの処では、脚の上がったサイモンラムセスを除いたひと塊の馬群の大外へとくっ付いては来たが、Mデムーロ騎手のステッキが数発入るほど。それほどに反応が悪く、前へと出て行く気配もなかった。
直線に入ってシャケトラの伸びが良く、勝利は間違いのないものと判る。問題は2着。少し内を空けたロードヴァンドールが何とか粘ってはいるが、その内から伸びて来たソールインパクトがジワジワと迫って行く。外では伸び脚がついたカフジプリンスが前を追うが、シャケトラはかなり前。そのシャケトラも戸崎騎手の左ステッキが数発入っていた。後ろが離れていたが、戸崎騎手はけっこう追っていた。普通、あれだけ離したら判りそうなものだが…。
月曜夕方、横山典騎手と電話で話せた。あの流れは想定内だった様子で、後ろが前の動きを見て牽制してくれたらとは思っていた様だ。この処の出来があまり良くなかったが、やっと少し上向いて来たとも語っていた。
14日に船橋競馬場で石崎隆之騎手の引退セレモニーに参加したことへの質問もしたりしたが、丁寧に想いを聞かせて貰った。この時間が大事。あまり時を経ないうちに思いついた事は聞いておいた方がいい。レースは終わっても競馬は続いているのであると、常に行動したい。
火曜朝、角居厩舎に寄って戸崎騎手の直線の事を酒井助手に聞いたら、《あ~あ、僕も新聞で知ったんですけど、戸崎騎手が3000以上で勝ってないと自分で書いてありましたものね~》と応えてくれた。《ふーん、そんなこともジョッキー心理に影響するもんだ…》と変に納得した朝でした。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。