競馬専門紙にて記者として30年余り活躍。フリー転身後もその情報網を拡大。栗東の有力ジョッキーとの間には、 他と一線を画す強力なネットワークを築く平林氏が、現場ならではの視点でレースを分析します。
【安田記念】脇役もけっこうな馬ばかり
2020/6/2(火)
国民的アイドル、アーモンドアイが昨年の忘れ物を取りに来た。昨年はあの決定的な不利がありながら、勝ち馬インディチャンプとタイム差のない3着まで持ってきた底力。
ドバイへの空振り遠征で体調は大丈夫なのか、昨年の有馬記念のように自分自身に負けないかと勘繰りを入れた前走のヴィクトリアマイル。しかしそれを嘲笑うかのような、馬なりコンマ7秒差の完勝劇。空に向かってツバを吐いたみたいだった。今回安田記念では、まして56キロと2キロも優位な材料がある。昔で言えば単枠指定みたいな存在だ。
マイル6勝のアドマイヤマーズが登場。当然に昨年の覇者、インディチャンプも前哨戦を勝って意気が上がる。ダノンの3頭もいる。ダノンキングリーには戸崎騎手が戻り、ホームとなると俄然違う馬。ダノンプレミアムも鞍上レーンで何かしそうだ。
アーモンドアイ主役も、脇役もけっこうな馬ばかり。
20年5/31(日)2回東京12日目11R 第87回 日本ダービー(G1)(芝2400m)
- コントレイル
- (牡3、栗東・矢作厩舎)
- 父:ディープインパクト
- 母:ロードクロサイト
- 母父:Unbridled’s Song
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絶好の3番手のインにつけたコントレイル。気がつけば周りは同じ勝負服ばかり。そして道半ばで馬群の外をスルスルとマイラプソディが上がってきて一番前に入る。それでも流れはまだまだユッタリ。ほぼ誰もいまだに動かない。縦長とは言わないまでも、そんなに密集した集団でもない。
各馬、そこに付いた位置でそう動かないまま4角手前まで来た。コントレイルは内から1頭外へ出している。すぐ後ろいた同じ赤い帽子のヴェルトライゼンデがコントレイルの外へ並び、前へも行く勢いだ。さらに後ろにいたサリオスも、ガロアクリークの動きに合わせて進出してきた。皆、手応えは当然にいい。
マイラプソディはまだ頑張っている。コルテジア、ディープボンドを引き連れて先頭で直線に入ってきた。カーブを廻って、早速にディープボンドの和田騎手が追い出した。外のヴァルコスも鞍上の三浦騎手の手綱が動く。
あと500の架空の数字が画面に映る。コントレイルが難なくヴァルコスの内をスルリと抜ける。
あと400、マイラプソディ先頭で横山典騎手も追い出した。サリオスは一番外へ出た。すでにガロアクリークを抜いて内にはヴェルトライゼンデがいる。
あと300。マイラプソディの外はノースヒルズの勝負服が3頭、横並びになったが完全にコントレイルの勢いだけが違う。
あと250、マイラプソディを抜いたコントレイル、すぐ後ろ1馬身半ぐらいにサリオスが接近している。ここで福永騎手の右ステッキが唸る。1発、2 発、3発と入れる。気がつけばやや馬場の半分より外め。
あと100、完全に抜けきったコントレイルだが鞍上は緩めない。小刻みにステッキを入れ、そしてゴール。
サリオスに3馬身だが、その差は宇宙までもあるぐらいに感じられる決定的なものであった。ヴェルトライゼンデが3着、サトノインプレッサがいい脚を使って4着。ディープボンドが渋太く5着に粘った。
父、ディープボンドと同じ5番のゼッケンで無敗のダービー制覇。福永騎手の馬上礼も決まった。秋こそライブで観戦だ。
プロフィール
平林雅芳 - Masayoshi Hirabayashi
競馬専門紙『ホースニュース馬』にて競馬記者として30年余り活躍。フリーに転身してから、その情報網を拡大し、栗東のジョッキーとの間には他と一線を画す強力なネットワークを構築。トレセンおよびサークル内ではその名を知らぬ者はいないほどの存在。