ありがとうございました(~最終回~)
2018/6/20(水) 10:23
(短評)
もう皆さんご存知かと思いますが、
本日6月20日をもちまして騎手というお仕事から退くこととなりました。
昔から応援してくださった方、今回で名前と存在を知った方、未だに知らない方。さまざまいらっしゃると思います。
デビューさせてもらってから12年ですかね?
私みたいなもんの騎手人生なんて、ギュッとしたら3年くらいなんでしょうけど、ほんと色々な方に支えていただいたお陰だと思っております。
辞めるにあたっては、かなり前から色々考えてたんですけどね。
自分の意思でのことなんで、反省はするけど後悔のない騎手人生だった!!!のかな?と今はまだ思ったり思わなかったり。。。笑
それとね、これはほんの一部の人にしかお伝えしてなかったんですけど、去年に病気が発覚いたしまして、仕事はしながら、しばらく検査で病院に通ってたんですよ。
そして、忘れもしない10月19日。
前日の18日に調教で落馬して、病院に運ばれて怪我は大丈夫だったんですけど、翌日19日に病院から電話かかってきまして。
昨日の落馬のことかな?なんて思いながら電話にでましたら、検査で通ってた方の通知が届いたとのことで、
『予定より早く通知が届いたんですが、明日にでも親御さんと一緒に病院に。』
との電話でした。
何回か、通院を繰り返してて、その可能性はあると言われてたので、医師の方の言葉の選び方や、話し方ですぐ察しました。
そして、その嫌な予感は翌日、的中することになり、医師から言い渡された結果は
『癌(ステージ4)です。』
私自身、その可能性があると言われていたので意外と冷静だったと思うんですが、一緒に行った母親は崩れ落ちそうな心を必死に耐えてるのがわかりました。
その帰り道、何故か母親が『ごめんね。』と謝ってきました。
母親としてもっと早く気づいてあげられなかったことに、相当自分を責めて落ち込んだみたいです。
そして、そこから大きい病院を紹介してもらい、手術日が決まるまで検査や通院を繰り返し、去年末、手術しました。
入院までの毎日は、普通に調教にも乗って普段どーりの生活のままだったんで、あんまり病気のことは考えることもなかったんですけど、手術の2日前から検査入院して、就寝前、1人ベッドで横になると、目覚めたらすっごい過去に戻ってないかなぁ?とか、そもそもこのまま寝て、明日目覚めるのかよ?
なんてことを考えだしたりなんかもして、感情の起伏もあったんですけど、そんな時に心を落ち着かせれたり力をくれたのが家族、友人、仲間、お医者さん、看護師さんetcでした。
その他にもここには書けないくらい、みなさんからたくさんの力をいただきました。
そして、無事に手術も終わり、地獄の二丁目から奇跡の復活を遂げ、手術前の話では、色々後遺症が残るかもと言われてたんですが、不幸中の幸いか、後遺症も最小限で食い止められたとのことでした。
去年末のコラムに、【人生において『明』から『暗』に変わる瞬間なんてのは、人生の絶望のようにも感じるもんで、先のわからない不安に1人たたずみ時に心折れそうになり、この先に光がなかったら、向いてる方向はまるで逆で光から遠ざかってるんじゃないか?そんな暗闇にいたときもあったんですが、1人じゃ辛く不安でしかない暗闇も家族、友人、仲間etc共に歩いてくれる人がいることで、何度でも歩き出せるんだと思います。】
なんてことを偉そうにツラツラ書いたんですが、私以外にも病気と闘ってる方は世界中にたくさんいて、またそれを助けようとしてる人もたくさんいて、私もまだ通院して、ほんとの完治というわけではありませんが命の大切さや、自分が思ってる以上にまわりの方達の支えってのは、もの凄い力になるんだと改めて感じました。なので多分、求めるのは光そのものじゃないんだと思います。
今回、引退するにあたって癌になったからというのが最大の理由ではなくって、数年前から自分で色々考えた末の決断であり、逆に辞める時期はだいたい決まってたので、それまでに治して1頭でも競馬に乗って、騎手だけにしか見れない競馬の景色をもう1度見たい!というモチベーションでやってきました。
そして、ラスト騎乗を松本オーナー、池添学先生、牧場、厩舎関係者、色々な方のお陰で迎えることができ、しかも一番お世話になってる大先輩の幸さんが勝って、ご好意で口取り写真にまであつかましく参加させていただき、無事に終えることができました。
しかも小さい頃から毎週のように通ってた一番好きな思い入れのある京都競馬場で。
ほんとに感謝しかありません。
この場をおかりして、皆様本当にありがとうございました。
ネットとかでは、早く辞めた方がいいとか色々書き込んだりするみたいなんですけどね。私に限らず、皆それぞれ考えはあって続けてるわけで、引き際については周りがとやかく言うことじゃないし、見守っていただけたらと思います。
そんなわけで、当コラムも今月いっぱいってことでこれがラストになりそうですね!
ほんと、私の騎手人生とほぼ同時にはじまって、ほぼ同時に終わる。
何か運命めいたものを感じるコラムでしたね。
競馬の魅力という部分では、全くといっていいぐらいお伝えできてなかったんですが、当コラムを通じてたくさんの方と繋がることができたのは、私の一生の思い出です。
最後に色々と詰め込んじゃいましたが、競馬はファンの皆さんあってこそです。
これからも競馬に関わるすべての方、そしてファンの皆さんも一緒に盛り上げて行きましょう!
ではまたいつか!
(追伸)
検査の前には保険の見直しを!!!
これ絶対!!!
皆様、ご自愛ください!
2018 6 20 大下 智
プロフィール
大下 智 - Satoshi Ooshita
1986年5月12日、大阪府枚方市に生まれる。
2007年に念願の騎手免許を取得、晴れて騎手としての人生をスタートさせた。
初騎乗から2ヶ月経った07年5月12日、レミーエンジェル号を勝利に導き、自らの誕生日に自身初勝利を達成するというドラマを演じてみせた。
「周りの方の支え、馬、そしてファンあっての競馬ということを忘れずに頑張りたい」という信念を持ち、精力的に汗を流している。