中央勢一番の上昇度で臨むニホンピロアワーズ
2013/12/29(日)
連覇が懸かっていたJCダートこそ5着に敗れたが、現役最高ともいえるメンバーの中、5ヶ月半ぶりの実戦、それもぶっつけG1を思えば存在感を示したニホンピロアワーズ。昨年は東京大賞典をパスして新年に備えたが、2013年は当レースを大目標として見据えてきた。ベルシャザールこそ不在も、今年3度先着されたホッコータルマエがスタンバイしており、倍返しするには申し分ない舞台。主戦の酒井学騎手に、叩き2戦目の上積みを聞いてきた。
-:ニホンピロアワーズ(牡6、栗東・大橋厩舎)について、酒井学騎手にお話を伺います。まずは愛知杯ではフーラブライド(牝4、栗東・木原厩舎)での見事な勝利おめでとうございます。
酒井学騎手:ありがとうございます。
-:本題のニホンピロアワーズですが、一週前追い切りについて、傍目で見ていても状態が急激に上がってきているな、という印象を受けました。乗っていての感触を教えていただいてよろしいですか?
酒:レースを使ってから最初の追い切りでしたが、使ったことで馬がシャキッとして、道中の行きっぷりや脚さばき、直線を向いてからの反応なども良かったです。一回使ったことで、上積みを感じる追い切りでしたね。
-:しかもゴールに入ってからもスッと止めない感じで。
酒:ゴールを過ぎたら一気にペースダウンしてしまうのは今回も一緒だったんですが、前走時はギュって自分でブレーキをかけたときに、トモを落とすようなところを見せていたのですが、今日はブレーキをかけたことに対しても自分でしっかり対応していました。
12/19(木) Pコースを単走で追い切り
6F:75.3-60.6-47.5-35.4-11.4秒(一杯)をマークしたニホンピロアワーズ
-:通ったコースも大外でした。
酒:前回使ってから間もあって、今回はしっかりやりたいという思いもあったので、外目を回して長い距離を走らせました。
-:状態がいい馬だからこそできる調教だな、と思いました。
酒:前走を使って、しっかり追い込んでも大丈夫だというのは充分わかったので、順調に着ていることもあってハードな追い切りを行いました。
「G1で構えた乗り方をするよりかは、思い切った乗り方をしよう、という気持ちがありました」
-:前走を振り返ると、“スタートから強気に乗るな”と感じました。
酒:休んでいたとか、中間順調さを欠いていた、ということよりも、G1の大一番だったので、そういう着を取りに行く競馬をするのではなく、勝ちに行く競馬をしなくてはならないと思っていました。勝ちに行った結果、それで勝ちきれなかったりするのは、その時点での足りなかった部分なので、あとに繋げればいいわけです。“G1で構えた乗り方をするよりかは、思い切った乗り方をしよう”という気持ちがありました。
-:夏に膝の怪我をして、その後に帰ってきて、馬体も全盛期に比べるとガレた状態から立て直して、JBCは使えず、JCダート直行という状況を知っていたものですから、あの5着を見て、改めてこの馬はすごいな、と思いました。乗っている感触としても、他の馬とは違う部分はありますか?
酒:休み明けの時点での万全の状態で、という覚悟で臨んだJCダートだったんですけど、それでもあれだけの競馬をしてくれたし、直線を向くまで「これ一発あるんちゃうかな」と思わせるほどの格好をつけてくれましたしね。思っていた以上に満足の行く結果だったと思うし、改めてこの馬の地力の凄さを感じました。
-:しかも、道中の動きを見ていると、久々の分もあって、若干かかり気味。それでいて、あそこまで粘り込めたというのも、凄いことだったと思います。
酒:G1ではあり得ないようなスローペースになってしまって、その3番手で前に壁がない状態になってしまって、更に休み明けで、馬も少し力んで走っていた部分もありました。それでいて5着までしっかりと流れに乗れたのでね。いつもは抜けだすと、頭を振っちゃうようなところのある馬なんですが、前回に関しては、最後までしっかり馬も踏ん張ってくれていますし、そういう部分では、JCダートは馬も勝負意識を持って臨んでくれていたんだと思いますね。
-:逆に、休み明けにしては走りすぎているというイメージもあったので、疲れを心配していたのですが、厩舎スタッフや先生に聞いても、そんなに疲れはなく、順調に上積みがあるということをうかがっていました。今日の追い切りは、まさにそれを裏付けるような内容だったんじゃないですか?
酒:レースが終わった翌週に何日か休ませて、運動を再開しました。いつも乗ってくれる助手さんから「疲れも残っていないし、かえってシャキッとした」というのを聞いていて、中間も上手く調整して乗ってくれていたので、今日の追い切りというのも、疲れというより、一回叩いた上積みをひしひしと感じました。
-:目指すは去年のJCダート前の究極のニホンピロアワーズの状態ですが、ここに持っていくまで、あと10日くらい調整が続きます。ファンとしては楽しみな東京大賞典になると思ってもいいですか?
酒:この1年で本当にガラッと力を付けてきた馬もいますし、G1らしい最高の相手だと思います。そこで改めて”ニホンピロアワーズ強し”を見せつけたいと思うし、前走時より明らかに良い状態でレースには臨めると思うので、なんとか去年のJCダートのようなインパクトのある強さを見せられればと思います。
-:ジョッキーとして、大井のコースの難しさはどこにありますか?
酒:坂があったり、コーナーがキツかったりという部分は特にないので、普通の地方競馬場と同じ感覚で乗っていると「直線が長いな」と感じる競馬場です。仕掛けどころを読み違えないように、アワーズで言えば、いかに仕掛けを我慢して、余力を持って追い出せるかというのが鍵になってきますね。
-:1コーナーまでに、いかにスムーズなポジションを取れるかというのが、アワーズのポイントだと思いますが、枠に関しては、あまり内というよりかは、ある程度外で、先手の馬を見ながら進めるのがベストですか?
酒:枠は正直どこでも大丈夫ですが、あんまり内だと行き過ぎてしまったり、外から被せられて、自分の競馬ができなくなってしまう可能性があるので、できればポジションが取れる枠がいいですね。
-:前に行く馬が近くに居てくれたほうが、目標にして進んで行きやすいですね。
酒:その辺はゲートが開いてからになると思います。とにかくスピードも、スタミナもあるので、スタートしてから、スッといいポジションにつけられるところが理想かなと思います。
「相手はJCダートを大一番に考えてきた馬ばっかりだと思うので、それを考えると、仕上がりの面では少し優位に立てるのかなと思います」
-:JCダートでは、ホッコータルマエが一番人気でしたが、あの馬に外から被せていって“なんならマークして潰してやろうか”くらいの強気な気持ちが見えました。今回もホッコータルマエ、ワンダーアキュート、ローマンレジェンドと、粒ぞろいの中央勢ですが、またある程度主張して行く感じでしょうか?
酒:周りの馬に関してはあまり気にしていないし、この間はおおよそああいう感じになるな、というのは戦前から分かっていたんですけど、思いの外、ペースが落ち着いてしまいました。僕の馬が外から行った時に、ホッコータルマエが踏んで行く感じがなかったので“もうここで我慢するしかないわ”と思って少し下げました。突っついたら、もう少しペースも流れるかな、と思ったのですが、僕が外に出ても、タルマエはそこでジーっとしていたので。
-:馬の特徴として、タルマエもソラを使う面がありますし、アワーズもソラを使いますし、どっちも先に抜け出したくないというタイプですよね。
酒:そうなんですよね。何かを見て行きたいタイプだからこそ、そうやって外から行ったんだけど、もう一度、待つしかありませんでした。あのペースだったので、相手もそういう覚悟で引っ張っていたと思います。
-:このデキなら、今回はもしかしたらJCダートみたいにスパンと切れる脚が見られるかも知れませんね。
酒:前走時より明らかに良い状態で臨めると思います。アワーズにとっても勿論JCダートは獲りに行くレースではありましたが、相手はJCダートを大一番に考えて、そこを大目標に仕上げてきた馬ばっかりだと思うので、それを考えると、仕上がりの面では少し優位に立てるのかなと思います。
-:中央勢の中でも一番フレッシュなのがニホンピロアワーズ。
酒:そうだと思いますね。
-:期待しているファンが多いと思うので、最後にメッセージをお願いします。
酒:応援してくださるファンも多い馬だと思うので、去年のJCダートを勝った後はG3こそ勝ったものの、少しモゴモゴしてしまいましたが、ここで何とか、本当に強いアワーズの姿を見て頂いて、更に応援していただけるように頑張りたいと思います。
-:東京大賞典は有馬記念の翌週になりますので、有馬記念でもし馬券を外したファンがいれば、大井まで来て、ニホンピロアワーズで取り返してくれたらということですね。
酒:そうですね(笑)。取り返していただければと思います。
-:応援しています。お忙しい中、ありがとうございました。
●帝王賞前・ニホンピロアワーズについてのインタビューはコチラ⇒
歴代ジャパンカップ・ダート勝ち馬の東京大賞典成績 |
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年 | 馬名 | 出走年・着順 |
13年 | ベルシャザール | 不出走 |
12年 | ニホンピロアワーズ | 13年?着 |
10~11年 | トランセンド | 12年7着 |
09年 | エスポワールシチー | 12年5着 |
07年 | ヴァーミリアン | 07年1着・08年2着・09年2着 |
06年 | アロンダイト | 不出走 |
05年・08年 | カネヒキリ | 08年1着 |
04年 | タイムパラドックス | 05年3着 |
03年 | フリートストリートダンサー | 不出走 |
02年 | イーグルカフェ | 不出走 |
01年 | クロフネ | 不出走 |
00年 | ウイングアロー | 01年10着 | 中央と地方で砂質などが異なるからか、JCダート・東京大賞典を共に制しているのはG1・7勝のカネヒキリとG1・8勝のヴァーミリアンの名馬2頭のみ。ニホンピロアワーズは地方でもダート王に輝くべく、初の東京大賞典参戦となる。 |
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■最近の主な重賞勝利 |
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1998年に二分久男厩舎所属からデビュー。池添謙一、太宰啓介、白浜雄造、中谷雄太騎手らと同期にあたる。
デビューイヤーこそ25勝を挙げたが、その後、勝鞍が減少。7年連続で年間の勝ち星がひと桁に留まった時期も経験。 |
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