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野中賢二調教師

12歳での重賞奪取が新年の目標

-:まだ、今年も現役を春までは続行ということですか。

野:今考えてるのは、一戦一戦が勝負やし、何かちょっとでも不安があったら絶対使わない。次に何を目標にするかで考えれば、天皇賞は8年連続で出てるし、そんなん絶対破られへんと思うんです。同一G1・8年やし、多分、ギネスとかに申請したら認められるんちゃうかという。実はギネスに関しては、オーナーも乗り気で「やる」って言ってくれているんです。じゃあ9年連続出走を目指さなくても、平場を勝ってるやつはおると思うんです。

とりあえず今の平地重賞勝ちの最高齢記録が、10歳で重賞勝ちのアサカディフィートとトウカイトリック。年数で区切られてて、トリックは10歳の12月で重賞勝ってるから。アサカディフィートは10歳の1月か2月の小倉で勝ってるから。一応、10歳の重賞勝ちが一番上なんかな。となると、天皇賞を目指しても、はっきり言って、今度は参加するだけになってくる。それやったら、今回の万葉Sに登録して、使うかどうかということと、ハンデがどんなもんになるのか、というのを、ちょっと見たかったんです。58キロになったら使わないからね。

57やろ、多分これで、余程の勝ち方をしない以上、この上よりのハンデにはならない。ということは、ダイヤモンドSを狙ったほうが現実的になってくるんだよね。賞金稼いだり、12歳で重賞勝ったら、多分それも抜かれることはないかなと思う。12歳で平地の普通のレースを中央で勝つのでも、結構破られないかな、というのはあるけど、ダイヤモンドとか重賞タイトルを、もし狙えるんやったら、体調整えば勝たせた方がね。天皇賞はここまで来たら、8年も9年も大して変わらないから。そっちに行って、そっちの勲章を狙ってあげたほうがいいかな、という思いがあります。




-:実のある方を獲った方がいいと。

野:彼にとって先々、名前が残るようにしてあげたいなと。

-:それは先生らしいマネージメントですね。しかも、あの時期はけっこう馬場が良すぎますからね。ちなみに今日の動きはいかがでしたか?

野:良かったよ今日は。2歳の馬を誘導して、教育係で併せ馬させて、問題なし。55秒くらいやから、そんなに目一杯やってないし。

-:今で目一杯やったらどれくらい動きますか?

野:それでも、もう53、馬場が良くて53半くらいかな。終いは13.0秒とか。

-:前回、久しぶりに3着に来て、勝ってから1年ぶりくらいに3着には来ているんですけど、乗ってくれた北村ジョッキーは何かコメントはありましたか?

野:「去年より良かった」と言ってたよ。レースの内容も、動きも良かったし、本当に状態も良かった。心臓も抜群によかったし、だから逆に怖い。

-:一歩間違えると。

野:そう。動きすぎちゃうと怖いよね、馬って。調子良い時ほど故障とか、やっぱり動いちゃうから。鼻血やったらさ、休ませて、引退でもいいけどね。脚とかがさ。去年のステイヤーズのVTRとか見るのがしんどいんですよ。メイショウクオリアが一周目で故障して、トリックが伸びてきてるときに、ラチ沿いで映ってるわけ。頭によぎるやん。やっぱり。明日は我が身ってあり得ることやからさ。考えると、怖いというのが。

-:でも、指揮官としては怖がってばっかりもいられず、馬を守るためには攻めないといけないっていう。

野:そうやねん。故障させんためにはちゃんと作らんとアカんしさ。せっかく、オーナーもこの馬にかなり思い入れがあるし。

-:狙って12歳までは現役を続けられないですからね。まだこれから続くトウカイトリック物語を完結させてください。

野:本当は大変なことですよ。どうしようかなと思って、ここまできたら。

人間ならば最も取材したい男

-:引退式はしないといけませんね。

野:そういう声が多いからさ。ほのぼのして引退式できれば。みんなに触らせてあげたりね。

-:馬券的に期待してるファンもいると思いますし。

野:この馬の(インターネットの)掲示板の特徴は、ホンマにみんなが応援してくれて、普通はアンチが入ってきてごちゃごちゃするらしいけど、ちょっと心が疲れたらこの掲示板に来ます、とかいう人が多いらしいですね。ほっこりしますって、みんなが応援してるから、こんな競走馬の掲示板は見たことないです、って。自分のファンとか、一口で持ってたりとかの馬の掲示板に行って、疲れたらトリックの掲示板に来ますって、箸休めにちょっとほっこりしにきました、ってのがいるらしいですね。

-:最後、応援してるファンにメッセージをお願いします。

野:ここまで長く一線で頑張ってくれるとは、引き受けた時は思わなかったけど、今となれば、厩舎の人間、スタッフ、僕もそうやけど、すごく勉強させてもらったし、馬の管理とかね。海外にも連れて行ってもらったし、開業してから、もうちょっとで6年かな、色んなことを本当に教えてくれた馬なので、何とか良い成績で走らせてあげて、現役をずっと続けさせてあげたいという思いと、何とか現役後に良い生活ができるように。

今、気持ちが複雑なところがあるんですけど、現役で走る限りは、厩舎としては良い成績が出せるように精一杯、怪我の無いように仕上げていくんで、ターフに立ってる間は応援してやってほしいなと。引退後もみんなが触れ合いやすいようなことも考えてるし、ファンが多い馬になってきてるので、何とか無事に、それを考えて一生懸命作ります。




-:もしトウカイトリックがしゃべれたら、ディープインパクトも一緒に走った、メイショウサムソンも一緒に走った、結構メジャーホースはほとんど一緒に走ってるし、一番取材したい男になってると思うんですよ。

野:3冠馬2頭と競馬したもんな。オルフェーヴル負かしてるんやから、天皇賞で(笑)。いくら調子が悪いと言え、先着はしていますからね。成績上はウチの馬の方が上でしたからね。

-:それも一つのトウカイトリックの勲章ですね。

野:ディープには先着できんかったけど、オルフェには先着してるから。

-:長いお話をありがとうございました。

野:ありがとうございました。

野中賢二調教師インタビュー(前半)はコチラ⇒

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【野中 賢二】 Kenji Nonaka

1965年福岡県出身。
07年に調教師免許を取得。
08年に厩舎開業。
初出走
08年3月1日 1回阪神1日目9R トウカイフラッグ
初勝利
08年3月15日 1回阪神5日8R トウカイインパクト


■最近の主な重賞勝利
・13年 関東オークス(アムールポエジー号)
・12年 ステイヤーズS(トウカイトリック号)
・12年 愛知杯(エーシンメンフィス号)


厩務員だった父の影響で10歳から乗馬を始める。昭和57年10月から藤岡範士厩舎に入り、厩務員から助手へと転身し、その後は厩舎を開業するまで所属。
藤岡範師を「父であり人生の師匠」と尊敬しており、番頭を任される中でタフネススター(カブトヤマ記念を勝利)などを育て上げた。当時の雰囲気を自厩舎で継承しつつ、目標でありライバルとしては「昔から一緒に馬乗りをやっていて、お互いやろうとしていることが分かる。スタッフを揃えて技術を上げていって、ああいう風にやっていきたいというのはある」と、藤原英昭師の名を挙げる。馬に対して「生きてきたそのまんま。本当に感謝しかない」と語るそのポリシーは、12歳にして平地で競走生活を続けるトウカイトリックの育て方に相通じるものがある。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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