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西浦昌一調教助手

昨年暮れの東京大賞典を快勝し、JCダートのうっぷんを晴らしたホッコータルマエ。ダートとはいえ、G1クラスの馬では異例のローテーションもあいまって、当欄でもすっかりお馴染みの存在になりつつあるところだ。そして、前走直後に陣営が表明した通り、年明け緒戦も、早速、川崎記念へと向かうホッコータルマエ。その先に見据える最大目標のドバイワールドカップ、ここで新たに明かされる壮大なプランへ向けて、落とせない一戦を前に、西浦昌一調教助手が語ってくれた。

川崎記念後はマイル仕様に

-:一方、川崎記念を予定しているホッコータルマエ(牡5、栗東・西浦厩舎)ですが、前走の東京大賞典はいかがでしたか?

西浦昌一調教助手:本当の力を見せてくれて良かったです。

-:あのレースを振り返っての勝因というのは何でしょうか。

西:強い相手(ワンダーアキュート)を見ながらしっかりと競馬をして、自分から動いて捩じ伏せたというのは、本来のタルマエのあるべき姿かなと。幸君もこれで自信を持って乗ってくれるやろし、もっともっと強くなれるはずの馬なので、気を引き締めて頑張っていきたいですね。

-:残すは中央のG1タイトルという目標があるんですけれど、川崎記念の後、今後のローテーションはもう決まっていますか?

西:目一杯走る馬でもないですし、実際に反動も全然ないから、月1回ずつ使っていけばグングン馬が良くなっていくので。あとは乗っている側の感覚を馬がちょっと詰める程度で、仕上がり方がちょっと変わってくるので。(フェブラリーSの)マイルをしっかりと走れるということは、それだけのスピードを求める走り方を、もっとさせていかないとダメだ、という課題があるんですけど、それに取り組んでね。まあ、イメージは最初からできているので。

-:ホッコータルマエをどうやってマイル仕様にするかというポイントをちょっと教えて下さい。

西:ハハハ(笑)。普段より(体を)気持ち起こす程度で。

-:前半の入りで位置取りを後ろにし過ぎないということですか。

西:しても良いと思いますよ。マイルを使ってくる馬は1400とかを使っている速い馬もいるので、十分に前を見ながら前の馬を交わした時には、ソラを使っても押し切れるくらいこの馬は頑張ってくれると思うので、どこでも競馬はできると思うんですけどね。

-:地力の高さでマイルを克服できると。

西:と思いますけどね、スピードもあるので。





2014・ホッコータルマエの野望

-:今週の動きはいかがでしたか?

西:まだ15-15しかやっていないのですが、躍動感があって状態は良いです。まだ、上積みがあるんだな、とビックリさせられることばっかりなんですけどね。

-:ホッコータルマエはイメージ的に言うと、東京大賞典にしろ、帝王賞にしろ、シーズン終わりに勝つという。

西:しっかりと締めてくれる馬なので、その締めをドバイワールドCに持っていったんやから、ちょっと期待しちゃいますね。フェブラリーSを使ってからドバイです。

-:何とかフェブラリーSに良い状態で進めるためにも川崎記念は落とせない一戦ですね。

西:頑張ってもらいたいです。

-:もうちょっと右往左往して戦績がまとまらないタイプかなと思ったんですが、意外にもここまでトントン拍子で来て、その辺は西浦厩舎の、"厩舎の力"ですか?

西:お互いの馬の状態を把握してたりだとか、みんな併せ馬の意図を汲んでくれているので、調整もやりやすいですからね。”やらない時はやらない、やる時はやる”その意図をみんなが把握して併せ馬を組めてるので。運動もそうだし、色々な幅が出ますよね。



-:馬の話ではなく、オーナーさん(矢部幸一氏)の話になるんですけど、JCダート前に亡くなられたんですよね。東京大賞典をお見せできなくて。

西:一応、名前は相続馬主が決まるまでは継承できていたので、最後に矢部幸一オーナーの名前で勝てたのは嬉しかったです。悲願の中央G1勝ちを熱望されていたので、それを見せられなかったということ、お亡くなりになる前に勝てなかったことには悔いが残っているんですけどね。そこの悲願を厩舎に託されたと思って、これからJRAのG1、海外G1を目指していきたいです。勝ったら勝ったで、そのお金を持って、次はブリーダーズCを目指しますからね。

-:そういうプランがあるのですか?

西:ドバイを勝つようならね。別に国内G1に拘らんと、ブリーダーズCに行っても良いんじゃないかというプランもあるんです。

-:かつて日本馬でブリーダーズCを挙げてみると……?

西:エスポワールシチーとカジノドライヴ、パーソナルラッシュ、タイキブリザードくらいでしょう。スキーキャプテンはケンタッキーダービーですか。

-:ブリーダーズCは持ち回りで競馬場が変わるんですよね。年によってダートの質も?

西:サンタアニタが3年連続というのは決まっているのでしょ?

-:タペタも場所によっては全然違いますからね。あとはハローの掛け方がドバイでもソフトに仕上げる掛け方もできれば、簡単にすることもできるという難敵なんですよね。しかし、今年の西浦厩舎は忙しくなりそうですね。この寒い時季なんでケガがないように頑張って欲しいです。それでは、ホッコータルマエを応援してくれているファンにメッセージをお願いします。

西:まだまだ力を付けていますし、底を見せてないので、早く完成を見たいというのと、まだまだ完成が先であるということを願って、期待をしつつ応援もしてください。頑張りますので、よろしくお願いします。

-:海外挑戦を楽しみにしております。ありがとうございました。

●東京大賞典前・ホッコータルマエについてのインタビューはコチラ⇒


●東海ステークス前・ケイアイレオーネについてのインタビューはコチラ⇒





【西浦 昌一】Syoichi Nishiura

昭和49年生まれ。西浦勝一調教師の3人兄弟の長男。当初はこの世界に入るつもりはなく、東京の大学に進学するつもりだったが「早く一人前になりたい」という思いから止まることに。当時はまだ西浦師の騎手時代で、父の思い出の馬を尋ねると「カツラギエースの時は小学校5年生くらいで、社宅の周りで自転車レースしていたんです。みんなおめでとうおめでとうって言って、何がおめでとうなんだろうなと。うちのオカンは騒いでるわで、凄いレース勝ったんだ位にしか思わなかった」と。

当初に所属したのは解散した星川厩舎で「当時ジョッキーだった本田さんと仲が良かったので、頼んだら入れてくれたという感じ。可愛がってもらえて、サンライズ系とか外車、サンデーなど走る馬ばっかりやらせてもらってました」。西浦厩舎は開業して1年後から15年間所属しており、現在は持ち乗り助手として活躍。毎日馬に接する時のモットーは「一緒に気持ちを分かってあげる、仲良くしているんだけど少しだけ優位に立っておきたい」。同世代に元騎手の飯田祐史技術調教師などがいる。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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