関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

久保公二調教助手

大雪のアクシデントを撥ね返す快勝

-:やっぱり、大雪の影響は心配しましたか?

久:そりゃあ、雪の影響はひどかった。静岡の辺りで、高速が通ってないから待機という状態だったんだけど、いつまで経っても開通する見込みがなくて。なんの連絡もないし、情報もない中で、結局開いたのが夜の10時で、高速で9時間待たされました。その間もあんまり飼い葉は食べていなかったかな。でも、ずーっとジッとしていたので、無駄な体力は使っていなかったんでね。

-:だからマイナス10キロという、通常輸送するくらいの馬体減で済んだと。

久:夜10時に高速が通って、もちろん渋滞しているから、そこから6時間かかって東京まで行って、結局着いたのが朝の4時前かな。ちょっとでも変なことがあったら、すぐに出走取消するつもりでおって、先生(矢作芳人調教師)にもそういう風に連絡していました。で、先生からオーナーサイドにも連絡してもらいました。

-:着いてからの精神状態はどうだったんですか?

久:これが、意外に普通だったんです。馬運車から下ろしてすぐに体温を計って、平熱よりは2分くらい高かったけど、朝の8時に計り直したら平熱に戻っていました。馬の顔見たら、いつもの優しい顔をしているし。それで、先生に電話して「これ使えそうですわ」と言って「じゃあ使おう」ということになりました。

-:立ちっぱなしで長い時間いたら、関節をほぐしてあげたり、体を温め直したり、気を使わなかったですか?

久:あんまりしなかったですね。とりあえず、馬房の中をちょっと温めてあげたくらい。雪もガンガンつもってたし。「なんやこれ、これでほんまに競馬するのか」って(笑)。


「もう前回の分は戻り切っていますし、今は460キロちょっとまで戻っています。理想では本番で460キロ切るくらいかな」


-:雪国に着いた感じですね。この時の春菜賞は、雪の影響で馬場状態が重。それでもどのような感じなのかは、現場に行った人にしかわからないです。馬場を歩いた感触はどんな感じでした?

久:結構、芝が寝ていた感じがして、重と言っても硬い感じがしました。この馬は重でもこなせるかなって思ったから、馬場に関してはあんまり気にしなかったかな。

-:馬場が悪かったにしては、時計も速かったですからね。このレースは安心して見られましたか?

久:いや、18時間の輸送があったからね。

-:下馬評では、この日のレースは輸送のせいで関西馬は圧倒的に不利ということでした。その中で勝ち上がりましたね。

久:これは大きいと思います。海外遠征行っても大丈夫だし、ドバイくらいまでは行けるんちゃうんかな(笑)。

-:今回の体重はちょっと減りますか?

久:前走が減りすぎやから、増えますね。もう前回の分は戻り切っていますし、今は460キロちょっとまで戻っています。それで、明日(3/6)と来週で速いところをやって、理想では本番で460キロ切るくらいかな。460キロくらいと思っていてくれればいいです。



このトライアルでの自信度

-:ここでの意気込みというのはどうでしょう。

久:確実に権利は獲っておきたいです。あれだけの輸送をして、あれだけの競馬をしたんだから、ご褒美に優先出走権くれよ、って思っているんだけど、そうもいかないんでね。

-:ファンが一番気になるのは、一気に相手が強くなるというところです。

久:今まではそんなに強い相手に当たっていないんでね。先行力はあるし、実際に速い時計で走っているので、いい経験にはなるかな。ここでいい競馬したら先が見えてくるしね。


「余力を残しても大丈夫と思うんやけど。それくらいのポテンシャルはあります。デビュー前から言っているのは、どこかで必ず重賞を獲る馬だと思っているので」


-:ズバリ、この馬の適距離は?デニムアンドルビーの妹と聞くと、やはり桜花賞よりオークス向きだと見てしまうのですが。

久:競馬っぷりを見ると、お姉ちゃんよりは距離は持たんかなという気はするかな。なぜなら前向き過ぎるんです。1600mまでは持つだろうし、できれば2000mまでは持ってほしいな、という願望はあるんですけどね。グランプリボスみたいにぶっかかっていく馬ではないんで、抑えようと思ったら抑えられるとは思います。

-:京都のマイルで勝つことと阪神のマイルで勝つことは、ちょっと違うイメージがあります。ワンランク上のスタミナが必要なのが阪神なのかなという気がしますが、この馬のスタミナはどうでしょう?

久:パワーは間違いなくあると思うけど、スタミナはどうかな。まだ1600mまでしか走っていないし、その辺はちょっと走ってみないとわからないです。

-:トライアルという中で、今のところ賞金的には勝つか権利を獲るのが必須条件になってくるわけですが。

久:この馬の能力からして、普通に走ってくれれば権利は獲れると思いますけど、いかにその先に繋げてもらえるか、という課題もあります。

フィリーズレビュー(G2) 1週前追い切り
3/6(木) 坂路 4F55.4-40.0-25.8-12.8秒(馬なり)


-:岩田ジョッキーにうまいことエスコートしてほしいですね。

久:新馬の時に乗ってもらっているしね。逃げ馬がいるから、その後ろにつけられたらいいですね。ペースが速くなる分には全然対応できると思うので、できれば勝ってほしいし、勝って桜花賞に行きたい。

-:本番に向けてのトライアルということで、仕上り具合は余力を残しておきたいけど、余力を残すと今度は権利を獲れるかどうか、というのが難しいところですね。

久:いや、余力を残しても大丈夫と思うんやけど。それくらいのポテンシャルはあります。デビュー前から言っているのは、どこかで必ず重賞を獲る馬だと思っているので。

-:どこで獲るかを、ファンは知りたいですよね。

久:じゃあ、ここで獲ります(笑)。フィリーズレビューから桜花賞も獲れたらいいな。

-:では、フィリーズレビューで権利は獲れるであろうけど、その先の桜花賞を見据えて応援しているファンにコメントをお願いします。

久:違う厩舎ですけど、お姉ちゃんのデニムアンドルビーもドバイで頑張るみたいなので、日本では妹のヤマノフェアリーも応援してください。矢作厩舎は好調なので、このまま厩舎の勢いに乗ってフィリーズレビューも勝てたらいいなと思っています。

-:桜花賞の直前にもまた取材に来るので、その時もよろしくお願いいたします。

久:ありがとうございました。

ヤマノフェアリーの久保公二調教助手インタビュー(前半)はコチラ⇒

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【久保 公二】Koji Kubo

高校1年の時に、笠松から中央に転厩してきたオグリキャップに憧れて、この世界に入ることを決意。それを親に納得させるため、高校2年の夏休みに北海道の荻伏牧場(ブルーインベスターズの前身)に一ヶ月間、丸々アルバイトに行き、なんと卒業後は同場に就職して2年間勤務。当時の思い出の馬はシルクムーンライトで、1歳の馴致で入ってきたウイニングチケットにも跨ったことがある。トレセン勤務は吉永猛厩舎からで、定年解散後は伊藤雄二厩舎に8年間勤務し、ニホンピロニールやメイショウカチドキ、ロードアトラスなどを担当。現在は矢作芳人厩舎に所属。これまでにグランプリボス、スーパーホーネットを担当するなど、名門厩舎の快進撃を支えている。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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