関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

榎本優也調教助手

ドバイ遠征への壮行レースとなった中山記念は、天皇賞(秋)を再現するかのインパクトで圧勝。同じデューティフリーに出走するライバルを寄せ付けぬ強さを見せ付けたジャスタウェイだが、大一番を目前に控え、お馴染みの榎本優也調教助手の心境は……。国内最終追い切りを終え、あとは輸送を残すばかりという状況下、出国直前の当人に愛馬の状態と現地の課題などを聞かせてもらった。

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順調に国内最終追い切りが完了

-:今朝(3/19)の5時半にジャスタウェイ(牡5、栗東・須貝尚厩舎)の国内最終追い切りが終わったところなのですが、動きはどうでしたか。福永ジョッキーが乗られて単走で52秒9、終いが12秒0で物凄い時計というか、反応だったのですが、見ていてどのような感じでしたか?

榎本優也調教助手:本当に良かったなと思いますね。そんなに目一杯やっているようには見えない感じでしたし、ユウイチさんも上がってきて「まだ余裕があるぐらいだよ」という話をしていましたし、凄く良い動きだったと思います。

-:実質これが最終追い切りで、向こうに着いてから輸送の疲れを癒して出走するということになるんですね。向こうの調教は全部、榎本さんが担当をすると?

榎:はい、今のところはそうですね。これから先生(調教師)と様子を見ながら決めていくと思います。

-:向こうに行ったら、まず馬場状態とか確認をしに行くと思うんですけど、どんな施設かということは、ある程度は予備知識があるのですか?

榎:そうですね。一応資料は貰っています。いつもと変わらないようなことをしたいですけど、ちょっと話を聞いたり、資料を見る分には少し工夫をしないとダメなのかなと思いましたね。



-:それはどういった点で工夫が?

榎:今だとある程度はトレセンの中を歩いて、ちょうどハッキングができるような場所があるじゃないですか。真ん中にしても坂路の下にしても。そうじゃなくて厩舎のすぐ前にあるらしいんですよね。なので、最初のハッキングまでのウォーミングアップをどこでするかというのも、ちょっと現地を見てから決めようという話になっていますね。

-:着いて48時間は検疫期間で、その検疫厩舎に入って、そこに居続けることになるんじゃないですかね。

榎:常歩、曳き運動まではできるという話は聞きました。

-:厩舎の前にそういうところがあるというのは、そういうことなんですね。だから、検疫期間が明けた後はキッチリとハッキングをしたりする前の準備運動をどこでするのという話ですね。



とにかく輸送が一番の課題

-:芝の馬場状態が日本なら函館の洋芝よりもちょっとソフトな感じらしいんですけど、その辺はジャスタウェイにとって、どういう風に影響しそうですか?

榎:どうでしょうね。あんまり得意かと言われると、決してベストの条件ではないのかなと思いますけど、この間の中山記念もそうですし、アーリントンCの時もそうですし「少しぐらい緩い馬場は全然平気だよ」と、ノリさん(横山典弘騎手)もユウイチさんも言ってくれているので、そんなに心配はしていません。

-:できることなら、あの瞬発力が存分に発揮できる馬場状態だったら、一番良いですね。この間の中山記念は改めて天皇賞(秋)を思い出させるような勝ち方だったんじゃないですか?

榎:天皇賞(秋)は色々と恵まれた部分も大きかったかな、と僕自身も思っていましたし、それなりの豪華メンバーが揃ったレースでしたから、期待と不安が半々ぐらいでしたけどね。

-:レース内容がどうであれ、最後あれだけ伸びたこと、もう1回、天皇賞(秋)に近い脚を使えたというのは本格化したと信用をしていいなという感じがしますね。

榎:前回のインタビューの時に言ったかもしれないですけど、天皇賞(秋)の後に休んで帰ってきて、更に良くなったなと感じていたので、それが思った通りにレースにも繋がってくれたんで、良かったなと思っていますけどね。





-:天皇賞(秋)より更に良くなっていたとしたら、ドバイでの勝利を期待せずにはいられないですが?

榎:輸送とか、これからの課題もあるので、あまり大きなことは言えないですけど……。

-:日本からは同じドバイデューティフリーというレースにロゴタイプとトウケイヘイローとジャスタウェイの3頭が出走するんですけど、日本で見ているファンもすごく楽しみなレースですね。それが世界の強豪とどういう風に戦うのか。ドバイで直線一気は利くと思いますか?

榎:さすがにケツからは無理かもしれないですね。それなりに昔のレースを見たりもしたんですけど、追い込みが利かなくもないのかな、と思いましたね。ジョッキーはどんなイメージで乗ってくれますかね。

-:自身も緊張はしますか?

榎:緊張よりは輸送でどうなってしまうのか、というところが一番の心配ですね。

-:先に行ったベルシャザールとホッコータルマエとデニムアンドルビーの輸送はすごくスムーズだったらしいですよ。かつてないぐらい。何がどうなって、そんなにスムーズだったのかまでは分からないですけど、ダメージもなくて、こういう独特の極端な萎みもなく馬が元気に到着をしたという連絡は受けたから、それは日本馬にとっては良いですね。馬は金曜日出発ですが、榎本さんは?

榎:僕は先に行ってしまいますね。明日(3/20)です。夜には飛行機に乗っていますね。

-:着いたら、まずは何をしましょう。

榎:ちょっと全然想像がつかないですね。結局、僕らが予定通りであれば、向こうの時間で朝の6時ぐらいに着きます。それで、馬はその日の夜ですね。日付が変わったぐらいに遅れて。だから、実質1日僕らは暇ですね。

-:その時はメイダン競馬場の中を視察できる訳ですか?

榎:と思いますよ。結局、最後は厩舎で馬を待つ形になるので、それまでに。

-:その時までには日本のスタッフや、獣医さんも?

榎:獣医さんはノーザンファームの方が。ジェンティルドンナがメインだと思うんですけど、ご協力いただけると思います。僕は今、海外遠征にあたって身の回りの世話をしてくれている方と一緒に行きます。



-:メイダン競馬場に入厩する訳ですか?

榎:はい。貿易センターみたいな検疫をするところが一緒にあるみたいなので。行ってしまったら、滞在する形でそのまま競馬ですね。

-:すごく良い環境らしいですね?

榎:そうやってみんなが言うのでね。楽しみもありますけど、ジャスタウェイに関して言うと、本当にどれぐらい環境に変化に対応できるかなと……。今でも普通の厩舎から検疫厩舎に移ったじゃないですか。若干落ち着きがないというか。ちょうど開催日が掛かったりすると、時間帯がガラッと変わったんですよね。土、日が昼から乗った感じで、また月曜を挟んで火、水と、今度は早くなって。だから2回反応していましたね。

-:そういう時間帯の変化とか、環境の変化を乗り越えて更に空輸という、馬にとっては結構過酷ですね?

榎:僕らは可哀想だとか言ってられないですけど。

-:ある程度は輸送減りすることは織り込み済みで行って、向こうに着いてからどれだけ回復させてやれるかということに気を使うしかしょうがないですね。

榎:そうですね。

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【榎本 優也】Yuya Enomoto

競馬ラボでは『トレセンLIVE!』のコーナーでコラムを担当。
大の競馬ファンである父親の影響で、幼い頃から阪神競馬場、京都競馬場へ足を運んでいた。 武豊騎手に憧れてジョッキーを志すも、目の悪さで受験資格をクリア出来ず断念。 しかし、競馬関係の仕事に就きたいという思いに変わりは無く、牧場勤務を経て、25歳の時にJRA厩務員課程へ入学し無事卒業する。

しばらくの待機期間を過ごし、09年5月に須貝尚介厩舎で待望の厩務員生活をスタート。 7月には持ち乗り助手となり、それ以来、2頭の競走馬を担当している。

同年10月17日、4回京都3日3Rの2歳未勝利で、担当馬ニシノマナザシに初めて武豊騎手が騎乗。 憧れの存在との初仕事に喜びと緊張を感じる。

その後は、アスカクリチャン、アスカトップレディ、クリーンエコロジーなど、厩舎の代表馬の育成を担当。2012年に担当するジャスタウェイがアーリントンC(G3)で重賞初制覇。NHKマイル、日本ダービーと駒を進め、遂には2013年に天皇賞(秋)をも制覇。G1という頂に辿り着いた今、更なる飛躍へ向けて、日々精進している。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。


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