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白倉孝一調教助手

中竹厩舎の坂路調教ポイント

-:良くなっていると言われた1週前追い切りですが、天候が雨で、降ったり止んだりという感じでした。

白倉孝一調教助手:そんなに重い馬場ではなかったですが、ウチの厩舎がやる時間はけっこう遅いので荒れるんですよね。雨プラス蹄跡がつきまくっているので、けっこう時計が掛かりますし、この馬も調子が良くない時はのめってスピードに乗って行かないんですけど、今日はのめることもなく最後まで何も仕掛けなくても良い走りをしていました。

-:時計はどうでしたか?

白:54秒台で、最後は25秒ぐらいの12秒8を馬なりで出しました。むちゃくちゃ動いて53とか出す馬ではないので十分ですし、乗っていて今日は良いなと感じました。

-:ちなみに中竹厩舎は角馬場で乗り込んでから行くので、1番は7時40分くらいに坂路をあがってくるのが最初のチームなんですよね。馬場は7時くらいから開いているから、40分くらい走り込んでからですよね。でも、それは、体力強化であえて綺麗な馬場で走らせないというトレーニングの意味もあるんですか?

白:綺麗な馬場を待っているとか、タフな馬場を待っているんじゃなくて、混んでいる時間を避けたら結果的にこうなっているんです。



-:7時開門から殺到しますからね。

白:角馬場も7時前に行ったら芋を洗うみたいに混雑しているので、10分ずらして入ってグダグダやっていたら、坂路に行くのがそんな時間になっちゃうんですよ。それで結果的に荒れて時計も出ないんです。

-:でも混雑はしていないですものね。

白:どっちを選ぶかですよね。

-:馬券ファンは、坂路の時計というのは注目していますから。51秒とか速い時計に飛びつくというのもありますけど、中竹厩舎というのは荒れた時間帯しか乗ってないということを知っていれば、55秒で終い12.8でも、この馬なりに終いは伸びていると分かれば、人気にはなりにくいはずですから、そういう知識があればちょっと美味しいですよね。

白:注意して見ている人には分かっている人もいるのかもしれないですね。

-:時間帯は出ないけれども、開門直後に中竹厩舎の馬があがってくることはまずないということですね。その辺はアースソニック以外の馬にも注目していえることですよね。

白:ナンチンノンとか53秒とかであがりますが、あれが開門一番だったら間違いなく50秒とか51秒とかでるクチですからね。2秒近く違ってきますよね。

-:今を時めくナンチンノン。前回は2着でした。アースソニックは今のコンディションのまま高松宮が開催されるとしたら、1分9秒9くらいの時計でしょうから、この馬にとっては持ってこいですね?

白:良いと思うんですけど、直線の長さが心配です。今回も三浦皇成騎手に依頼しました。

-:前回、のめったというのを引きずらずに乗ってくれます?

白:折り合いだけつけてくれたら大丈夫だと思います。ハミも水勒の細いものにあれから替えて、だいぶ乗りやすくなっています。コントロールが効かない馬ではないのですが、行き脚がつくと行っちゃうので、その辺をちょっとでもコントロールできたらなと思います。出たなりの競馬をしてほしいですね。

アースソニックが仕様している水勒ハミ


-:体重は前回使っていますし、そんなに変動はないですか?

白:そんなに大きくは変わらないと思います。ちょうど中2週で競馬使えますし、一番仕上げやすいやり方です。

-:この馬のパターンとしては、来週の本追い切りはびっしりとやる方ですか?

白:ウチの厩舎は1週前は強めとか馬なりくらいで、最後は目一杯行くので。

-:時計はどうですか?

白:晴れていれば54秒切るくらですね。今の状態だったら53秒台が出るかどうかでしょうね。今日の感じだと動きそうですけどね。

-:それよりも終いの1ハロンが重要ですか?

白:そうですね。12秒台であがれるかどうかが、上手にテンを走れたかどうかでしょうね。

-:白倉さんが乗るとしたら、おろししなに馬とどういうコミュニケーションを取れるかが鍵になりますね。

白:そこら辺は競馬に繋がってくるので、おろししなからガっと行かれちゃうと、競馬もそんな風になりかねない気がします。

-:三浦皇成騎手に上手い具合にバトンを渡すとすれば、抑えて終い伸びた状態で渡したいですね。

白:ジョッキーにも、ハミも替えてだいぶ乗りやすくなっているからと、彼に意識してもらうことも考えています。そういうのも大事ですから。


「本当に折り合いですね。最初の3ハロンくらいの競馬を見ていたら、結果がどうなるのか分かってしまう気がするんですけどね。まあ、G1のペースで、このメンバーで引っ掛かるぐらいだったら、逆にたいしたものだと思うんですけどね。たぶん大丈夫です」


-:実際に馬も良くなっているわけですし、前走のイメージを引きずるのは良くないですからね。無欲の騎乗で折り合いだけ気を付けてくれればいいんじゃないですか?

白:そう思います。チャンスはどの馬にもあるメンバーなので、この後に続く良い競馬をしてもらいたいです。

-:この馬がどうなっても、最後方からの競馬はしないでしょうし、ある程度、先行集団についていく中でどれだけ折り合いをつけるかというところを僕らは楽しみにしています。

白:本当に折り合いですね。最初の3ハロンくらいの競馬を見ていたら、結果がどうなるのか分かってしまう気がするんですけどね。まあ、G1のペースで、このメンバーで引っ掛かるぐらいだったら、逆にたいしたものだと思うんですけどね。たぶん大丈夫です。

-:先ほどの折り合いが鍵ということを考えると、大外枠とかは勘弁してほしいですね。

白:極端な所はみんな嫌がるんですけどね。真ん中よりちょい内が欲しいですね。

当日の落ち着きも激走の鍵

-:パドックや返し馬でも、ある程度落ち着きは欲しいですね。牝馬が一緒のレースで極端にテンションが高くなってしまうということはないですか?

白:それは全然ないです。色気出しておかしくなっちゃうことはないです。

-:それよりも自らリズムを崩すんですか?

白:ゲートを出て燃え過ぎるきらいが最近あるので、それだけですね。

-:アースソニックを応援しているファンにかわって、おちつけと言っておいて下さい(笑)。いかに前半をリラックスして走れるかが、ゴール前に繋がりますからね。

白:そうですね。この前ので人気を落とすだろうから、ジョッキーも競馬をやりやすいと思いますから。



-:ただ、珍しいタイプですよね。時計の掛かる馬場でも走って、京阪杯の硬い馬場で1分7秒5。あのレースのダメージや反動で近走が凡走というわけではないんですよね?

白:京阪杯とその前の2走はデキが良すぎたんですよね。そのピークを保ち続けるというのはどんな馬でも無理なんですけどね。

-:では、2回凡走した後のここですね。

白:前々走の凡走の時もめちゃくちゃ良かったんですけどね。だから、この間を使って結果は良くなかったけど、良い感じで力も抜けているし、ガッと盛り上がっていける感じかなと思います。

-:馬主さんはフィリーズレビューでベルカントが勝ちましたね。

白:前田社長は中竹先生がアンチャン時代からお世話になっていると言っていて、重賞を1個なんとか勝てたので喜んでいましたが、この馬にはもうちょっと頑張って欲しいですね。まだ明けて5歳ですし、今年が一番いけると思うので。

-:あと1週間あるので、なるべく落ち着きがあるように期待しています。

白:ありがとうございます。

白倉孝一調教助手インタビュー(前半)はコチラ⇒

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【白倉 孝一】Koichi Shirakura

父が厩務員だったことに影響を受けて、競馬界へ足を踏み入れる。初めてトレセンで就業した古川平厩舎、湯浅三郎厩舎を経て、中竹厩舎へ。トレセン歴は25年以上にも及ぶ。
これまでに印象に残った馬は、厩舎のG1馬ジョーカプチーノは勿論のこと、ダービーにも駒を進めたデボネア。日々の仕事のモットーは「毎日、やるべき事をコツコツと繰り返すことが大事じゃないかと思います」と語る。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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