関係者の素顔に迫るインタビューを競馬ラボがオリジナルで独占掲載中!

阿南勝厩務員

ゴールドシップばかりがクローズアップされる須貝厩舎(S.R.S)だが、僚馬アスカクリチャンとて重賞2勝馬で昨年は香港ヴァーズにも挑戦した歴戦の猛者。常に人気よりも前に来る意外性は穴党の心をくすぐり、可愛い名前とは裏腹の勝負根性が売り物だ。今回は同馬を担当する大ベテランの阿南勝厩務員に、2戦目の上積みや激走ポイントなどを伺った。

日経賞を使って状態面は上昇

-:天皇賞(春)を予定しているアスカクリチャン(牡7、栗東・須貝尚厩舎)についてお聞きします。香港から帰ってきて日経賞(8着)を使いましたね。

阿南勝厩務員:日経賞は放牧から帰ってきて、もうひとつの状態でしたね。当時はちょっと活気がなかったです。攻め馬もあんまり良くなかったんですよね。

-:この馬の良さである粘りがあまり出なかったところを見ると、本調子じゃなかったのかと思います。1回使って、状態は良くなっていますか?

阿:ええ、上向いています。今度の方がスムーズに、順調に来ていると思います。

-:今朝、ゴールドシップとの恐ろしい追い切りが2頭併せで行なわれました。ゴールドシップが76秒、クリチャンが77秒。相当速いというか、負荷が掛かっている調教でした。終わってからの疲れはありますか?

阿:全然疲れはなかったです。ただ、今週はしっかりやったので、来週はそんなにやらないでいいくらいですね。

-:去年の夏の函館で活躍して、この時期からでも走れるかどうかに注目ですが、夏にならなくても走らないわけじゃないですよね。いい時はどこが変わってくるのでしょう?

阿:それがあまり掴めないんですよね(笑)。確かに、日経賞よりは良くなっているし、使ってから、体にはハリがあるのがわかるのですが……。



位置取りはゴールドシップよりも前?

-:この馬は馬場が悪くなって走りますよね。蹄底の浅い、蹄底のないタイプの爪を持っていながら、あの悪い馬場をこなせるのはどんな秘訣があるのでしょうか。

阿:気がキツイところがあるからではないでしょうか。根性で走っているからね。

-:血統的にもダートこなせそうですね。前脚もトモだけでなく、四肢を均等に使ってバランスよく走っているところがありますよね。日経賞を使ってからの体重の変化はありますか?

阿:そこは変動がないですね。自分で体をつくるタイプですから。

-:そんなにムキムキタイプでもないですからね。500キロあるけど、筋肉量が多いタイプでもなく、ステイヤー体型?その辺からしても血統的には意外では。

阿:うん。意外だね。そういうところもこの馬のキャラクターなのかな。



-:(登録している)バンデがこのままいくと賞金的に1頭出られなくなるので、そうなると、ある程度主導権を握る可能性があるかもしれませんね。アスカクリチャンにとっては、ちょっと馬場は渋ってほしいですか?

阿:でも、良馬場でもいいと思う。かえって、後ろから突かれずに、単騎で逃げさせてくれればいいかもしれないね。

-:ゴールドシップがちょっとクリチャンとの間を離して、京都によくある大逃げパターンで。

阿:そう、大逃げパターンで。

-:このまま順調にいってほしいですね。ゴールドシップのペースメーカーというわけではなく、クリチャンのペースで上位を狙いに行くと。

阿:そうやね。開幕2週目で馬場も良いだろうし、インをピッタリ回ってくるといいね。

-:展開利と状態アップで上位を狙うと。大穴党でクリチャンから狙っているファンへ向けてメッセージをお願いします。

阿:クリチャンなりにマイペースで頑張ります。応援してあげてください!




【阿南 勝】 Masaru Anan

吉田三郎厩舎に所属していた父の影響で中学時代から馬に携わり、昭和48年に田中四郎厩舎でトレセン生活をスタート。同厩舎解散後、中尾正厩舎に異動し、20余年という年月を過ごす。当時の担当馬はエイティグロー、オースミロッチ、ビッグサイクル、オースミギムレットなど。同厩舎解散後は須貝尚介厩舎に所属して現在に至る。アスカクリチャンを手掛けているベテラン厩務員。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

■公式Twitter