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今村康成調教助手

3強と呼ばれた大阪杯は、終わってみればまさかの7着。当初は天皇賞(春)を予定していたローテの変更をも余儀なくされたメイショウマンボだが、聞けば陣営は敗因を明確に把握している様子。時期的には桜花賞からオークスでの激変と被っており、その弁も頷ける。今回は絶対の自信を持つ牝馬限定G1へと舞台が戻り、快勝で最強牝馬説を再燃させたいところ。必死の調整を続ける今村康成調教助手に、巻き返しの手応えを聞かせてもらった。

思わぬ惨敗だった大阪杯の敗因

-:メイショウマンボ(牝4、栗東・飯田祐厩舎)について伺っていきます。約5ヶ月ぶりの出走となった大阪杯ですが、ファンにとっては思ったより敗れた、という印象だったと思います。馬体重が8キロ減っていて、コンディションを考えてみれば、5ヶ月前のエリザベス女王杯を勝った時に比べると、休み明けの分ということが影響していたのでしょうか。

今村康成調教助手:でも、調教はすごく動いていましたしね。状態としては悪くなく、いい感じで送り出しました。桜花賞の時も良い感じで送り出したのですが、あの結果ですからね。

-:桜花賞の時も謎の敗戦でしたね。

今:後々考えたら、時期が良くなかったのかと。桜花賞と同じ時期だったのでね。毛ヅヤも良くなかったですから。

-:その辺りは女馬だけに、生理的な部分があったのでしょうか。

今:そうかもしれないですね。

-:敗因は先生(飯田祐史調教師)のコメントにもあったようにフケだと思いますが、それをも克服している時期もありましたよね。

今:ええ。暖かくなってくるにつれて状態も上がってくる感じはしますね。


「普段調教に乗っていても、良くなってきているのは分かりますし、暖かい時期になってきて、毛ヅヤも良くなって、馬がフックラしてきた感じはするので」


-:昨年を振り返ると、桜花賞で負けて、オークスでは感動的な優勝でした。時期的にダブりますし、同じ府中という舞台。距離がマイルに変わるだけということで、もう一度期待していいということでしょうか。

今:普段調教に乗っていても、良くなってきているのは分かりますし、暖かい時期になってきて、毛ヅヤも良くなって、馬がフックラしてきた感じはするので、一回使ったことによる上積みもありますし、手応えは感じますね。

-:3歳時にG1を3勝している馬ですから、追い切りのタイムだけではないところに、上昇度を期待したいところです。オープン馬でこれだけの馬ですと、調教は動きますよね。それだけでの判断は難しいところがあります。

今:ええ、難しいですね。でも、一回使って、反応は確実に良くなっていますね。

-:その辺り、大阪杯を使われた後、積極的にプールに入れられて疲れをほぐして、それから乗り込まれていることから、前回の敗戦を引きずらずにヴィクトリアマイルに向かえると思っていいですよね。

今:そうですね。



一度使ってガラッと良くなる馬

-:今週(5/7)の追い切りですが、時計で判断すると、ゆっくり入って、終いの反応を確かめる感じだったと思います。今村助手自身、乗ってみての手応えや反応の良さはいかがでしたか。

今:テンションを上げないように、東京までの輸送を考慮し、減った体を戻そうかと厩舎全体として取り組んでいます。落ち着かせて、折り合いをつけてゆっくり入って、最後は伸ばす追い切り、という指示で、その通りできました。最後の反応もよく、1週前としてはいい追い切りができました。(5/8(木)、CWコースで6F83.1-66.4-51.7-38.0-11.6秒をマーク)

-:前回の追い切りも良かったように記憶しています。そこからの上積みに期待もありますが、違ってきている面は感じていますか。

今:調教はある程度動くので、その辺の変化はわかりませんが、馬体がフックラしてきているというのは、使っていって付いてくる筋肉があるのかなと思います。この馬は使って良くなっていくタイプですね。昨年の秋は休み明け緒戦よりも2戦目、3戦目の方が競馬の内容も良くなってきていますし、今回も一度使って、ガラッと馬体が良くなりました。逆に、攻め馬は動き過ぎてしまうので、今までそんなにやったことがないですしね。これまでは、やり過ぎないような調整をしてきました。


「馬も賢いので、レースが近いということは、追い切りをやる毎にわかっていると思います。あとはもう自分で体を作っていく態勢に入っているような気もします」


-:その辺りは先生も考えられているからこそ、幸四郎騎手ではなく、今村助手に1週前の追い切りを託されたと思います。追い切りの時計で見るのではなく、先ほどのテンションの話によると、テンの1ハロン、2ハロンをある程度ゆっくり走れた、ということを評価したいということですね。

今:やはり、幸四郎の場合は競馬で乗っているので、馬も実戦で乗る人が乗るとわかると思うんですよね。僕とか猿橋さん(調教助手・元騎手)が毎日乗っていて、あまりヤラれないとわかっているのか、馬の方がリラックスしているというか。



-:1週前でもそれほどテンション上げずに済む、ということですね。この馬は牝馬で、使いながら良化しているということは、昨秋でも証明されているのですが、エリザベス女王杯は疲れが残っている状態で、勝ち切るのは厳しいと思っていました。しかし、意に反して素晴らしい勝ちっぷりでしたね。使いつつ状態を上げていくタフな馬だなという印象が強いです。

そこで、去年を思い返してみると、オークスの1週前の馬体を見させていただいた時には、もうちょっとかなという印象でしたが、当日のパドックでの体は違ったんですよね。1週前からレースに向けて急激に良くなるというところがメイショウマンボの特徴かなと思います。ここから一気にグンと上がる可能性はありますよね。


今:馬も賢いので、レースが近いということは、追い切りをやる毎にわかっていると思います。あとはもう自分で体を作っていく態勢に入っているような気もします。

メイショウマンボの今村康成調教助手インタビュー(後半)
「スタッフ一丸での巻き返し態勢」はコチラ⇒

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【今村 康成】Yasunari Imamura

1978年10月19日生まれ。1997年に武幸騎手、武士沢騎手、松田騎手らと共にJRA競馬学校を第13期生として卒業。生涯成績は平地5勝、障害40勝と障害競走を中心に騎乗し、01年にはユウフヨウホウとのコンビで中山大障害を制している。
08年の3月に飯田明弘厩舎の所属となり、12年12月20日付で騎手を引退。そのまま同厩舎の調教助手となり、今年も引き続き飯田祐史厩舎で活動。
「FEEL潤!!」でもお馴染み、高田潤騎手とチャリティー活動を行ったり、栗東トレセン調教見学ツアーで企画を行ったりと、レース以外の活動にも熱心。


【高橋 章夫】 Akio Takahashi

1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて17年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。

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