4戦無敗の東京で頂点へ 皐月賞馬イスラボニータ
2014/5/25(日)
皐月賞の戦前は初の右回りなどが不安視されていたイスラボニータだが、終わって見れば全く危なげのない走りで一冠目を奪取。2歳時から安定していたとはいえ、その成長には見張るばかりだが、今度の舞台は4戦4勝の東京コース。二冠目奪取に向け、待ったなしの条件だ。今回はデビュー時から同馬を担当する佐藤良児調教助手に、大一番に向けて態勢を聞かせてもらった。
歓喜の皐月賞時の雰囲気
-:まずは見事に勝利したイスラボニータ(牡3、美浦・栗田博厩舎)の皐月賞ですが、レース前の調整過程について教えてください。
佐藤良児調教助手:共同通信杯が終わってから放牧に出て、競馬の1ヶ月前に戻ってきました。戻ってきてからも、だんだんと大人になって、いらないことをちょっとずつしなくなりましたね。普段の攻め馬も落ち着いていました。気負いすぎることなく皐月賞まで順調にきたと思っています。
-:レース当日の馬の状態はどうでしたか。
佐:競馬場についてからはいつもおっとりしていますし、パドックに行くまでは少しバタバタしますが、自然と落ち着いてくれます。パドックの周回もおとなしいですし、初めての競馬場でしたが、いつも通りでしたね。
-:当日の競馬場の雰囲気、レース内容を振り返ってどうでしょうか。
佐:スタンドは人が多いし、馬場入場で歓声が上がったとき、首を高くして見ていたので、若干いつもより気を張っているのかなと、返し馬の後は気にはなりましたが、競馬自体はキレイに外に出ましたし、(蛯名)正義さんにうまく乗っていただいたなと。
-:佐藤さんにとってはクラシック初勝利ですが、レース直後はどんな気持ちでしたか。
佐:ホッとしましたね。後で何回もレースのVTRを見て喜んでいますが、レース直後は、とりあえず無事に終わってよかったなと。
やんちゃな馬の精神面が日々成長
-:その後の馬の状態はいかがですか。
佐:競馬を使った後、全然ゆがみもなかったですし、疲れもありませんでした。その後は週明け水曜日に、いつも通り山元トレセンに放牧に出ました。今月の7日に厩舎に帰ってきて、その後も順調にきています。今週(5/22)の1週前追い切りは、正義さんに跨ってもらいました。
-:今週は雨で馬場が良くなかったですね。
佐:馬場が若干重かったかなと。それでも、いつも通り順調に良い調整ができていると思います。皐月賞が終わって、そんなに緩んでいるわけではないので、その辺は全然心配していないです。
-:皐月賞の時の状態をすごくいい形でキープできているということでしょうか。
佐:そうですね。肉体的には、すごく大きくなったとか、この間で変わったというのはないですけど、気持ち的には、どんどんどんどん大人になってきて、鈍感になってくれています。
-:先ほど仰っていた、余計なことをしなくなってきたということですね。
佐:それが、どんどんいい方向に来ています。競馬に向けて、どうしてもイライラしてくる馬もいるけど、そういうのも出さずに来てくれているので、すごくいいかなと思います。
-:デビュー戦の頃はまだまだヤンチャだったのですか?
佐:そうです。普段の運動でも常歩なんてなかなかできなかったし、何かあればかっ飛んで歩いていました。まだたまにやりますけど、だんだん減ってきています。
-:佐藤さんからご覧になっていて、イスラボニータはどんな性格の馬ですか?
佐:小僧ですね。ヤンチャです。悪いことをするという気はないんでしょうけど、ただ遊びたいから。子供です。
-:じゃれてきたりとかですか?
佐:常にそういう感じです。
-:では、そういう面を残しながらも、だんだんレースに向けて余計なことはしなくなっているんですね。
佐:普段は全然まだお子ちゃまですけどね。運動とか、そういうことに対してはいらないことはしなくなってきました。あまり真面目じゃないところも良いところだと思います。真面目な馬だと、調教を積んでいくうちに精神的にいっぱいいっぱいになって、調教に対して嫌気がさしてきたりすることがありますけど、イスラボニータは適度に気を抜くことができているので。
初距離も不安は微々たるもの
-:レースに関しての良さはどのようにご覧になっていますか?
佐:競馬に対してすごくセンスがあります。折り合いに関しては、使う度にだんだん良い方向にいっています。競走馬の多くはなかなか綺麗に良い方向にはいかないものだから、それが経験を積む度に良い方向に行っているのが頼もしいです。
-:こういうレースをしたいと思っていても、なかなかできないですからね。折り合いがもっとつけばとか、こういう位置からできればとか。
佐:みんながうまくいくわけではないのでね。なかなか実践できるのは難しいですけど、それをやってくれているセンスはすごいと思います。
-:今度は東京2400mという舞台になりますが、そういう競馬センスの良さで、どんな走りをしてくれるのかという期待の面はどうでしょう。
佐:東京2400mは初めてですけど、それは別に今までもそうでしたから。
-:皐月賞の中山だって、右回りが初めてだとか言われていましたからね。
佐:今までの初条件と比べれば、初条件の度合いは少ないです。
-:距離くらいですね。
佐:あれだけ折り合ってくれれば、良くはないにしろ、こなしてくれるんじゃないかとは思います。距離どうのこうのではなくて、折り合いさえついてくれたらいいかなと思います。
人気よりも常に走ってくれる馬
-:イスラボニータはプール調教も交えていますよね。
佐:そうです。体を鍛えたいというよりは、頭に色々な刺激を与えたいというのが、もともとの狙いです。色々な経験をしている方が、何か新しいことがあった時に、馬の頭の中で対処できるようになるだろうということと、元気がいい方なので、それを発散させる意味合いですね。追い切り後なんかにプールを使っています。
-:プールに入っている時はどのような様子なんですか?
佐:おとなしいですよ。何をやるかは大体理解していますし、全然嫌がったりもしません。遊びながら泳いでいますよ。泳いだほうが馬は体を使いますから、発散できている部分はあるのかなあと思います。
-:体の使い方にプラスの面も出たりするのでしょうか。
佐:体や関節は本当に柔らかくて、可動域が広いので、それが走り方に繋がっているのかな。
「凄く薄くて、良い皮膚をしています。ただ、俗に言う“走る馬”というのは分かりませんでした。だから、今までこういう評価だったのかなと思います(笑)。他の厩舎の人たちからは、『走りそうだね』と言われるより、『大変そうだね』と言われることの方が多かったですからね」
-:触った感触など、今までの馬との違いはありましたか?
佐:凄く薄くて、良い皮膚をしています。ただ、俗に言う“走る馬”というのは分かりませんでした。だから、今までこういう評価だったのかなと思います(笑)。6戦5勝ですけど、1番人気は一度だけですし、結果に対して人気は無い方じゃないですか。トレセンでもヤンチャな仕草を見せていたこともあって、他の厩舎の人たちからは、「走りそうだね」と言われるより、「大変そうだね」と言われることの方が多かったですからね。
-:周りの評価は関係なく結果を出してきているということで。では、最後に、日本ダービーという大舞台に向けての意気込みをお願いします。
佐:ここまで問題なくきてくれていますし、後10日くらいですけど、何といっても順調にきてくれるように、できることは気をつけて、無駄な事故や怪我がないように。何とか無事にいってもらいたいですね。健康が一番ですので。
-:そのための調整はしてきているということですね。
佐:そうです。レースに関しては、僕らがどうこう言うことではないので、後はジョッキーに任せます。
-:とにかく無事に本番を迎えて下さい。ありがとうございました。
蛯名正義騎手 日本ダービー全成績 |
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年 | 馬名 | 人気 | 着順 |
2014年 | イスラボニータ | ?人気 | ?着 |
2013年 | ヒラボクディープ | 5人気 | 13着 |
2012年 | フェノーメノ | 5人気 | 2着 |
2011年 | トーセンラー | 7人気 | 11着 |
2010年 | ハンソデバンド | 13人気 | 16着 |
2009年 | ナカヤマフェスタ | 9人気 | 4着 |
2008年 | ショウナンアルバ | 8人気 | 12着 |
2007年 | ドリームジャーニー | 8人気 | 5着 |
2006年 | エイシンテンリュー | 14人気 | 12着 |
2005年 | ダンスインザモア | 11人気 | 14着 |
2004年 | ハイアーゲーム | 3人気 | 3着 |
2003年 | スズカドリーム | 11人気 | 15着 |
2002年 | ノーリーズン | 2人気 | 8着 |
2001年 | ダイイチダンヒル | 9人気 | 11着 |
2000年 | ジョウテンブレーヴ | 5人気 | 6着 |
1999年 | オースミブライト | 4人気 | 4着 |
1998年 | クリールサイクロン | 13人気 | 15着 |
1997年 | セイリューオー | 7人気 | 10着 |
1996年 | サクラスピードオー | 4人気 | 5着 |
1995年 | ホッカイルソー | 6人気 | 4着 |
1993年 | ステージチャンプ | 7人気 | 9着 |
1991年 | シャコーグレイド | 3人気 | 8着 |
ダービーには延べ21度騎乗。初参戦となった91年は皐月賞2着のシャコーグレイドで挑んだものの8着。トウカイテイオーの二冠を許した。 95年からは毎年名を連ねており、最も栄冠に近づいたのは一昨年のフェノーメノ。勝ち馬にハナ差届かず2着に敗れ、検量室で涙を流した。大本命イスラボニータで臨む今年こそ、悲願のダービージョッキーへ! |
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