デビュー戦から重賞の青葉賞まで6戦連続の1番人気。それこそダービーの秘密兵器という評価を受けていたワールドインパクトだが、ここ2戦は同世代の超一線級に跳ね返されたという恰好。しかし、同馬を担当するのは、かつてダービー馬ウイニングチケットを手掛けた島明広調教助手で、そのお墨付きを受ける能力の持ち主となれば、菊花賞でも軽視できない。大ベテランならではの見立ては穴党ならずとも注目だ。

幼さを残すも潜在能力は相当

-:菊花賞に向かうワールドインパクト(牡3、栗東・友道厩舎)ですが、デビューから6戦連続で1番人気。ディープインパクト産駒ということもあって、ファンは初戦から凄く注目して見てきた訳なのですが、まずはこの馬と出会った時の印象を教えていただけますか?ディープインパクトは沢山の人が知っている名馬ですが、母系のお父さんのPivotalはあまりデータがありませんからね。

島明広調教助手:初めて跨った時に、凄く柔らかくて将来性を感じたので、できればこの馬は僕にやらせてほしい、ということは、みんなに頼んだんです。

-:よくみんながOKしてくれましたね。

島:その時に僕の手が余っていたというのもあって、タイミングもありました。

-:知識が浅くて申し訳ないのですが、Pivotalというのは白井厩舎のウエストエンドという、1200~1400mくらいでスピードのある産駒の快速馬がいました。しかし、ワールドインパクト自体とその馬とは全然タイプが違いますよね。

島:そうですね。短距離という感じはしないですね。

-:さきほど体を見させてもらったのですが、どちらかと言えば、もうちょっと長い方が良さそうなタイプですね。

島:後々はマイルから2400くらいの間ということで落ち着くかと思うのですが、今の感じだと折り合い面でも問題がないので、まだ長い距離も全然こなせるかなとは思いますね。

-:デビューから青葉賞までの6戦で2勝しているということで、あとは全て2着という堅実な面がありました。それでも、客観的に見れば、もう1つ2つ勝っても良いのかなという原因というのは、先ほどおっしゃられていた成長の遅さとかが考えられますか?

島:気性面が能力などに付いてきていない感じがしますね。もうちょっと気性が前向きというか、大人になってくれると、良いパフォーマンスができるとは思います。

-:それは余計なところで能力を喪失してしまっているというか?

島:少し輸送に弱かったりもするし、無駄に音に敏感やったり、環境の変化に対応できていないところもあるので、もう少し成長すれば、もうちょっと一人前になれるかなと思いますね。

-:これだけ使っていると、色々なことを吸収して、学習してくれても良さそうですが?

島:学習能力はあると思うのですが、気性面がまだ追い付いていない現れかなと。子供っぽいし、キ甲もシッカリ抜けてきていないので、体の成長もまだまだなのです。ここからあともう2つくらい上にステージがあるとは思います。

-:先ほど洗い場で見せていただきましたが、この馬の特徴としては前脚がちょっと内向していますか?

島:デビュー前から「脚は少し曲がり気味なので、脚の方のケアもよろしく」と、牧場の方にも言われたので。今のところは順調に使えているので、それに獣医さんとも相談しながら色々なケアをして、現に持っていますからね。だから、脚元に関しては、心配し過ぎるところはないと思います。

-:トニービン産駒も脚元が真っ直ぐじゃない馬もいましたね。

島:そうですね。どの馬も外を向いていましたしね。

-:島さん自身でそういう経験もあると。

島:引き出しも少しはあるのでね。何といっても30年くらい馬を見てきているので。大丈夫と自信を持って言えるレベルですね。


「持ってるモノは凄く良いモノやと思うし、同年代の子たちと比べても、そんなに遜色がないくらいのモノは持ってると思います。気性面が成長して、あと2つステージが上がれば戦えるレベルの馬です」


-:そういう意味では成長過程でこれだけの能力を発揮しているというのは、かなりの潜在能力は持っているということですね。

島:持ってる、持ってる。モノは凄く良いと思うし、同年代の子たちと比べても、そんなに遜色がないくらいのモノは持ってると思います。

-:それは非常に気になるポイントですが、同年代というのは、例えばイスラボニータやワンアンドオンリーらトップの馬たちと肩を並べられると。

島:気性面が成長して、あと2つステージが上がれば戦えるレベルの馬です。

前走までの敗因を振りって

-:すみれSで先行して、人気で強気な競馬というか、ド本命の競馬をして、結局スズカデヴィアスに差されてしまった訳ですが、その後、大寒桜賞で凄い差し脚を見せたじゃないですか?

島:先に抜け出すとソラを使うタイプの馬なので、川須騎手がベストパフォーマンスを引き出してくれましたね。ゴール板で交わして先頭に立つというレースを心掛けてくれたのがああいう結果になったんやと思いますね。

-:あの差し方というのは、敢えて早めに交わしきらないで、ギリギリまでタイミングを待ってということでしたか?

島:彼の好判断やと思います。

-:そこで、1つ形が見えて臨んだ青葉賞だったのですが……。

島:やっぱり少し欲が出ると、あの位置になるのかな、という気がしますね。あの位置だと、やっぱり……。結果論で「あれよりも、もう一列後ろでも良かったんじゃないか」という人もいるので。ただ、権利は獲ってもらったので、こちらとしては何も言うことはないので。

-:迎えた本番のダービーを振り返っていただいてもよろしいですか?

島:着いた時点で、もう馬が雰囲気に呑まれていました。それに暑かったので、完全にレース中に熱中症にはなっていましたね。だから、あのレースは大きく度外視してもらって良いと思います。

ワールドインパクト

-:そういう成長段階にあった春を経て、僅かな間ですが、夏休みをしてセントライト記念に向かいました。これもまた輸送の影響が出ましたか?

島:輸送の弱さがやっぱり大きかったですね。

-:神戸新聞杯という選択肢はありませんでしたか?

島:ヴォルシェーブと使い分けるということになっていましたね。最初からそういう風になっていたので。今度は京都で、当日輸送ですからね。距離は近いし、当日の朝まで自分の厩にいられるので。だから、あんまり心配していないですね。あとは距離と雰囲気に呑まれないことです。

-:セントライト記念で体重が減っていたというのは、これは度外視していいですか?

島:輸送の弱さが、モロにそこに出てきていると思います。減りさえしなければ、500をちょっと切るくらいの体重の馬だと思いますね。

-:菊花賞ではそこを念頭に置いて、プラス10キロくらいでの出走ですか?

島:プラス10キロくらいで出したいなと。今、自分の中では描いています。今は500キロを超えているので、あとは追い切りの状況を見ながらカイバの量も考えて。多分、プラス10ないしはそれに近いくらいのプラスでは出せると思います。

ワールドインパクトの島明広調教助手インタビュー(後半)
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