
腕利きが認める一級品の資質ワールドインパクト
2014/10/19(日)
-:ファンにとって注目なのは、デビューから3戦続けて乗ってこられた岩田ジョッキーがヴォルシェーブに回って、ワールドインパクトにはフランスの若手のブドー騎手が乗るということですね。
島:調教師、牧場、オーナー全てが考えたことだと思います。ヴォルシェーブに関しては「過去に乗ったことがある人の方が、気性的なこともあるんで良いだろう」という判断だと思うんですよね。ワールドはそんなに乗り難しい馬ではないのでね。
-:当週の木曜日くらいの追い切りに1度乗ってもらう、という予定ですか?
島:ジョッキーの都合次第ですが、別にテン乗りでも、そんなに難しいことはないと思いますね。彼が英語さえしゃべれれば、伝えることは全部伝えられると思いますが、フランス語だけはちょっと伝えにくいかなと思います。
「こういう馬が長いところを走れなかったら、ディープの子はホンマに長いところ走れへんのかな、と僕は思いますね」
-:若い人でフランス人の方は英語しゃべれるでしょうしね。あとは距離に関してはいかがですか?
島:ディープ産駒が長距離を勝っていない、という話を聞いて、そこはどうかな、と思うのですが、こと折り合いという点に関しては、ディープ産駒の中でも全然問題のない方だと思うので、あとは本当にディープ産駒が長距離を走れへんのかどうか、ということですね……。
-:でも、トーセンラーとかも天皇賞(春)で上位に来ていますからね。
島:2着ですね。まあ、こういう馬が長いところを走れなかったら、ディープの子はホンマに長いところ走れへんのかな、と僕は思いますね。
-:この厩舎ではスカイディグニティがゴールドシップの2着で、菊花賞と縁起の良い厩舎ですしね。
島:そうですね。あんまり心配していないです。距離も京都ということもジョッキーも。
-:京都はどちらかと言えば、ディープ産駒の得意なコースですからね。
島:あとは、その日に「絶好調」と言えるだけにすることに尽きます。
-:ダービーの時に、雰囲気に呑まれたということを考えると、30年のキャリアを誇る島さんがどういう段取りをされるかというのが気になるのですが?
島:京都とか当日輸送の競馬場は、厩舎にマスコミもあまりウロウロしていないのでね。前日輸送だと、前日に降ろすところからカメラマンが20~30人もいたりするんで。その辺で今回はあんまり心配していないですね。
-:今週、来週辺りは、我々カメラマンはあまりワールドインパクトの周りをウロウロしない方が良いですか?
島:普段は全然大人しいんで問題ないですね。競馬場で雰囲気が変わった時に、過度の性格の弱さがモロに出るので、トレセンにいる時はね。さっきも写真を撮った時に見てもらったら分かるように、全然大人しいです。
-:どちらかと言えば、まったりとしていましたね。
島:自分で耳を立ててポーズを決められるような馬なので、全然問題ないですね。
-:その辺は期待されてきた馬ですから、立ち写真も場数を踏んでいますからね。
島:問題はないと思います。
-:今回は4コーナーを2回回るので、ワールドインパクトだけじゃなくて、どの馬も共通して言えることですが、そこで噛むとか引っ掛かったりはありませんか?
島:そんな映像が浮かばないんですよね。この馬が引っ掛かった、という状況が。だから、その辺はあんまり心配していないですね。
-:僚馬のヴォルシェーブと同じようなポジションから差すという?
島:ワールドの方がヴォルシェーブよりも一列後ろだと思うんですよね。ヴォルシェーブの方が長く良い脚を使うタイプなので、もうちょっと前だとは思いますね。2頭で、できれば良い結果が出るように。

-:(島助手が担当していた)ウイニングチケットの菊花賞はビワハヤヒデが勝ちましたね。あの馬は輸送が苦手だったみたいで、やっと地元の京都で結果を残せました。
島:そうですね。ビワハヤヒデの厩は関東に行った時は全部暗幕でしたからね。周りが見えないように、窓に全部黒い布を張って凄かったですよ。
-:それで、余計にイレ込まないものなのですかね。
島:そうしないとダメだったらしくて。だから、そういうこともしていたけれど、勝てへんかった訳ですから。あれくらいのパフォーマーが勝てなかったというのは、輸送に弱いというのは大きなモノだとは思うんですよ。
-:ワールドインパクトは成長過程で、これからまだまだ上があるとは言え、今の現状で戦わなくてはなりません。
島:今の状態のベストを尽くしたいと思います。
-:できればご自身として2勝目のG1を?
島:ヘヘヘ、頑張りたいですね(笑)。
-:忙しい時にありがとうございました。
(取材・写真=高橋章夫)
ワールドインパクトの島明広調教助手インタビュー(前半)はコチラ⇒
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プロフィール
【島 明広】 Akihiro Shima
宝塚記念勝ちのオサイチジョージを担当した名物厩務員の父や、おじもG1勝ちを経験したという、いわば「競馬一家」の出身。高校卒業後、今は無き荻伏牧場で一年間の勤務を経たが、重賞ウィナーのクシロキング、タケノコマヨシも騎乗した経験を持つ。その後、競馬学校を経て、名門、伊藤雄二厩舎より調教助手生活をスタート。
伊藤雄二厩舎ではスリリングサンデー、メローフルーツ、センターライジングらを担当したが、ダービー馬ウイニングチケットを手がけた事で知られる。「その頃はトニービンがどんな血統か分からなかったですね。けれども、雄先生は異常に自信を持っていましたよ。普段は大人しくて、人が跨ると急に態度が変わるような、凄く利口な子でしたね」と当時を述懐する。
友道厩舎に勤務してからは約10年を数える。現在、グリッターウイングも手がけている。馬造りのポリシーは「芽を摘まないこと。馬の成長や、走りたいという気持ち、その芽を摘まないように育てて、あとは乗り役が『乗りやすい』と言ってくれるような馬にするのが、競馬でベストパフォーマンスするために一番必要なのかなと思います」と語る。関西のトップステーブルに経験という財産をもたらす腕利きとして活躍している。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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