連覇を狙うホッコータルマエ 進化の姿を魅せつける
2015/1/21(水)
-:川崎記念(Jpn1)で連覇を狙うホッコータルマエ(牡6、栗東・西浦厩舎)ですが、チャンピオンズCで中央G1初制覇の後、東京大賞典も優勝と、改めておめでとうございます。
西浦昌一調教助手:ありがとうございます。
-:東京大賞典の勝利は力通りでしたか?
西:一皮むけた感覚はチャンピオンズCの前からあったのですが、力があるところを見せてくれた良かったです。
-:内容的にはいかがでしたか?
西:ソラを使うこともなく、タルマエ自身が楽しんで走ってくれたので、心強かったです。
-:ホッコータルマエと言えば、使いながら良くなってくる馬で、チャンピオンズCの前はJBCクラシックしか使っていなかったので、状態が上がっているのか分からずに不安に感じていたファンも多かったと思います。そのような叩き良化型にも関わらず、中央G1初制覇を達成したということは、馬自身の能力の高さの証明ではないでしょうか?
西:いつもなら段々と良くなるところが、今回は一気に良くなったので、そういう意味でも、一皮むけたなという感じはしますね。
-:JCダートから3回目の挑戦になった昨年は、前2回よりも年齢を重ねて、馬が成熟している感じがあったのですか?
西:一昨年のJCダートの時にどれくらい強くなるんだ、という手応えで、そこからさらに良くなっていたので、末恐ろしいなと思いますね。当時はまだ3歳で、将来が楽しみな競馬をしてくれた印象でした。そこから色々と課題はありましたが、一つ一つクリアしてくれて、欠点のない馬に成長してくれました。
-:やっぱり適正な調教をコツコツと続けてきた賜物なのでしょうか?
西:いやいや(笑)。でもそういうのを含めてチーム一丸となって、取り組んでいる成果だと思います。
-:これまでの取材を通して西浦助手がおっしゃっていたのは、「もう少し瞬発力を付けたい」ということでしたが、その辺りも良くなってきたのでしょうか?
西:そうですね。徐々に改善されてきて、今では欠点らしいものはないですね。
-:ホッコータルマエは完全にマークされる側にいると思いますが、競馬としては勝ちにくい立場になったと思います。
西:ずっとそういったポジションにいますからね。その立場で競馬をしても強いというのが、タルマエの強さだと思います。
「スピードの持続力もありますし、スタミナもありますし、切れるような競馬をさせれば切れますしね。ケチのつけようのない馬に仕上がっていると思います」
-:一昨年のJCダートではベルシャザールの末脚に屈したりなど、苦い経験もあったわけですが、どちらかと言えば、ホッコータルマエ自身はパワータイプで時計が速くなることはあまり良くないタイプですか?
西:そうでもないと思いますよ。スピードの持続力もありますし、スタミナもありますし、切れるような競馬をさせれば切れますしね。ケチのつけようのない馬に仕上がっていると思います。
-:チャンピオンとして、胸を張ってドンと立ち向かうことができると。
西:実際にどこから競馬をしても良いようになっています。幸騎手も「逃げてもいい」と言っているぐらいです。
-:何の不安もない状態だと?
西:そうですね。前走はマイナス体重になってしまったのですが、回復が思ったよりも早かったです。
-:今回の川崎記念はファンも負けるとは思っていないと思います。むしろ、その後に控えているドバイワールドカップに関心が高まっていると思いますが、昨年と違うのはフェブラリーSをキャンセルして、直接向かう点だと思います。
西:そこは流動的で、実際にどうなるか分かりません。川崎記念の結果と状態次第になると思います。
-:ホッコータルマエは使うことがマイナスになる馬ではないでしょうから、フェブラリーSを使うことがマイナスにはならない気がしますが。
西:そこは調教師(西浦勝一師)が決めることですからね。
-:その辺りは流動的ということですね。中央競馬のファンとしたら、ドバイ遠征の前にフェブラリーSで見たいという気持ちが強いと思いますし、万全な状態のコパノリッキーとの勝負も見てみたいです。気の早い話になりますが、今年からドバイはダートになります。その点は明るい材料ではないでしょうか?
西:そうですね。楽しみしかないですね。
父であり、調教師である西浦勝一師(左)と昌一調教助手
-:ダートに変わることで、日本馬にとってはプラスになる可能性はありますよね。
西:その辺りは楽しみです。どのような馬場に仕上がっているのか。
-:昨年一回行っているので、コンディショニングとか調整方法とかは変えたりするのでしょうか?
西:同じではいけないと思います。良いパフォーマンスをする方法としては、やっぱりこっちで作っていって、輸送の疲れをとって、あとは馬場の状態だけ、という風になるのが、一番良いパフォーマンスになる、そのようなことは調教師とも話しています。
-:昨年は思ったよりも負けてしまって、あれがホッコータルマエの本当の力じゃないというところを見せてもらいたいですね。
西:昨年は適性がないと言われたのですが、適性はあったんですよ。ただ調整を失敗したというのは否めなかったと思います。
-:究極の状態に持っていこうとしたからこその誤差みたいなものだったのでしょうか?
西:疲れ知らずだと思っていたのですが、やっぱり馬ですからね。疲れが出て、ピークを越えてしまいましたし、グンと上がると思っていたのが、逆にガクンと落ちてしまいました。
-:その点を合わせることができれば、ドバイでの快挙も達成する可能性もあると。
西:あるとは思いますけどね。
ホッコータルマエ・西浦昌一調教助手(後半)
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プロフィール
【西浦 昌一】Syoichi Nishiura
昭和49年生まれ。西浦勝一調教師の3人兄弟の長男。当初はこの世界に入るつもりはなく、東京の大学に進学するつもりだったが「早く一人前になりたい」という思いから留まることに。当時はまだ西浦師の騎手時代で、父の思い出の馬を尋ねると「カツラギエースの時は小学校5年生くらいで、社宅の周りで自転車レースしていたんです。みんなおめでとうおめでとうって言って、何がおめでとうなんだろうなと。うちのオカンは騒いでるわで、凄いレース勝ったんだ位にしか思わなかった」と。
当初に所属したのは解散した星川厩舎で「当時ジョッキーだった本田さんと仲が良かったので、頼んだら入れてくれたという感じ。可愛がってもらえて、サンライズ系とか外車、サンデーなど走る馬ばっかりやらせてもらってました」。西浦厩舎は開業して1年後から16年間所属しており、現在は持ち乗り助手として活躍。毎日馬に接する時のモットーは「一緒に気持ちを分かってあげる、仲良くしているんだけど少しだけ優位に立っておきたい」。同世代に元騎手の飯田祐史調教師などがいる。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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