クラシックを占う10冠ベビー・レガッタが第2幕へ
2015/2/1(日)
超良血馬を1歳当時に見た印象
-:きさらぎ賞(G3)に向かうレガッタ(牡3、栗東・昆厩舎)について、久々登場の昆先生にお聞きいたします。よろしくお願い致します。まだキャリアが1戦1勝ということですので、最初にご覧になった時の印象から教えて頂けますか?
昆貢調教師:小さい馬だったので、1歳の間に上手に成長させないと、そのままになってしまいそうな感じでした。放牧地を変えたり、ウチから色々と注文を出して、育成法を変えてもらいました。その甲斐もあってか、普通の馬の形になったので、第一段階はクリアしてくれた感じでした。
-:1歳馬の体のを大きくするには、どういう事をなされたのですか?
昆:細かい事は牧場に任せています。そういう成長のさせ方ができればしてほしい、と牧場スタッフに頼んでやってもらいました。全ての馬ができるわけではないと思いますが、この馬はできたみたいです。
2013年のセレクトセール時のレガッタ
-:ディープインパクト産駒としても、そんなに小さかったのですか?
昆:そうですね。セリの時は体に脂が乗っていたのでポテッとは見えていました。脂を一回落として、骨の成長を早めたかったのですが、その時点で骨瘤が出ていました。筋にかかりそうなところもあり、まずいなと思ったので、「一回上(体)を軽くして、骨を成長させる感じでやってほしい」という注文で進めてもらいました。
といっても、僕はセリには行ってなかったんです。オーナーが「(セリで)落としたよ」と言ったので、2、3日後に見に行ったのですが、あの時点では高い買い物だなと思いましたね。
-:体の形ですが、いわゆるディープインパクト産駒というよりも、母系が出ていますか?
昆:僕はお母さんを知らないんですよ。勝ったレースなどは見ていますが、身近にその馬を見たわけではないので、それは何とも言えないです。
-:入厩してからの変化ですが、その頃にはだいぶ成長もしていましたか?
昆:馬の形としては、良い感じにできていました。牧場でも乗り込んでもらって、ゆっくりやって行こうということで、栗東に入れてからも3ヶ月くらい掛かりました。実が入らないまま使っていたのですが、バネが凄いということで、調教はそんなに一回目からビシビシやらなくても良いかなと。基礎体力もまだ足りなかったですし、これくらいで一回使っといてもいいかな、という感じで使いました。
能力だけで勝ち切った新馬戦
-:そして、新馬戦ですが、デビュー前から個人的にも注目していたので、(調教で騎乗している)西谷さんら(西谷誠騎手)から話を聞いていたんです。それもあって、遅い流れだとちょっと引っ掛かるのかな、という先入観で見ていました。実際のレースも流れが遅くなったので、心配になりましたが、思っていた以上に折り合いがついたのでしょうか?
昆:調教とレースではスピードが違うので、息が入りにくくはないですし、そこまで引っ掛からないです。調教は“15-15”とかの基本的なスピードになるので、馬も我慢しきれなくて行ってしまいますが、レースでは12秒台ですからね。そういうのをひっくるめても、そこまで引っ掛からないだろうと思いましたし、ドスローになった時はちょっと心配しましたが、あんな感じだろうと思いました。
「乗り味が最初から抜けていましたからね。調教で走る走らないは別として、バネのある馬は芝に行ってさらに良いので、その辺りは安心していました。走るのは間違いないなと思っていましたよ」
-:そこから圧巻だったのは、終いの3ハロンも33秒台で、2ハロンが10秒台です。思っていた以上のキレがありましたか?
昆:乗り味が最初から抜けていましたからね。調教で走る走らないは別として、バネのある馬は芝に行ってさらに良いので、その辺りは安心していました。走るのは間違いないなと思っていましたよ。まだ完成はしていませんが、肉がちゃんと乗ってきて、調教もそれなりに動くと思います。今の時点ではそこまで求めていないですし、基礎体力がもっとつけばいいなと思い間をあけました。馬も2ヶ月目あたりから、かなり良い感じにしっかりしてきたよ、と言っていたので、その辺りは目的どおりにきたと思います。
-:新馬戦とは違いますか?
昆:あの頃は馬がゆるゆるでした。能力だけで勝ちました。
-:ドスローだったので、勝ちタイムも遅いですし、終い3ハロンのタイムの速さだけが目立ったレースでした。2戦目は違うレースが見られますか?
昆:あの時点で、新馬なら速いレースは心配していませんでした。ただ、今度はG3なのでそれなりのメンバーも出てきますし、完成度の高い馬もいますからね。その辺りを考えると、基礎体力のない状態で出しても、ダラダラと走って帰ってくるだけで終わると思いましたし、それなら基礎体力をつけて、不安な部分を少しでも解消しないと、と思ったので間を空けました。
-:それでは間を空けたことがこの2戦目、しかも重賞というところで生きてくると。
昆:僕はそう思いますね。
-:上積みに期待したいですね。
昆:この前は馬なりで勝っているのでね。上がりは33秒2でしたが、そこも馬なりでしたし、ビシッとやれば32秒台で来ていたかもしれません。でも、そこまで攻める必要はなかったですし、福永君も次のことまで考えて競馬をしてくれました。ですから、内容はあれで良かったと思っていますよ。
期待が高い故のきさらぎ賞挑戦
-:今朝(1/28)の追い切りですが、2頭併せで四位騎手が乗られていました。82秒台で上がってきましたが、動きはいかがでしたか?
昆:大体予想していた通りの時計でした。調教ではあまり走る馬ではないのでね。先週の時点で四位君も調教ではそんなに動かない、という感触は掴んでいると思います。僕としても上(坂路)でやっても下(コース)でやっても、あまり動かないと思っていますし、82秒台が出れば十分です。前の馬を追いかけるかたちができれば良かったとは思いますが、前の馬が進んで行かずに途中で前に出てしまいました。それでも良い追い切りだったとは言ってくれましたよ。
-:今回は四位騎手が初めてということで、坂路だけでなく下のコースも、ということだったのですね。上がってきた時の反応はいかがでしたか?
昆:「(ハミを)噛みそうな雰囲気はあるが、良く我慢していたし、前に出た時はしっかりと抜けて、自分の中ではイメージ通りにできた」とは言っていました。
-:それでは楽しみにして良さそうですね。
昆:調教も走ってレースも走ってくれれば一番分かりやすいのですが、この馬は調教では動かないのでね。でも持っている能力がなければ、あれだけの脚は使えないと思いますし、仕掛けたのは並びに行った時だけで、あとは馬なりみたいなものでしたからね。しかも物見しながら外に逃げていった、とも言っていたので、馬自身にはまだ能力があるのだと思います。
-:気になるポイントでは若干ですが、京都の馬場は荒れ気味になっています。
昆:そこはもうG1を獲るには言い訳にならないと思っています。そんなことを言い訳にしているようでは無理ですからね。
-:先の話になりますが、母がスイープトウショウという血統をふまえ、距離適性はどの辺りがベストだと考えていますか?
昆:父のディープインパクトが読みづらいところがありますよね。なので、僕としては母系のほうが出てほしいなとは思っていますが、こればかりはどうしようもできないですからね。正直に言えば使っていかないと分からないところではあります。ゲートも遅くて良いので、練習はほとんどしていないですし、終いに徹して、やれるようになってくれれば良いなと思っています。その上で競馬を使いながら覚えてくれればと。
「ここで結果を出せないとね。休み明けとかは言い訳になりませんから。そこも踏まえてやっていますので、どんな形であれ結果を出してもらいたいです。次からはもっと強い馬との勝負になる訳ですから」
-:それだけ先生が期待しているからこそ2戦目がここになったのですね。
昆:このレースを選んだのは新馬戦と同じ雰囲気のまま走ることができるので、馬自身にあまりプレッシャーをかけないで済むと思ったからで、そこでしっかりと走ってくれれば、違う競馬場に行った時も大丈夫なのかなと思っています。2000だとか1600だとかも考えたのですが、久々なので同じイメージでできる方が良いのかなと。今度はオープンになりますし、全体の時計も出るでしょうから、そこをクリアできれば先のことが見えてくると思います。
-:馬券を買うファンとしてはパドックや馬体重を気にするのですが、2戦目での体重の変化はあるのでしょうか?
昆:ほとんどないと思いますよ。ただ、そこに芯が入っているかが問題で、中身は違っていると思います。
-:改めて真価が問われる一戦になると?
昆:ここで結果を出せないとね。休み明けとかは言い訳になりませんから。そこも踏まえてやっていますので、どんな形であれ結果を出してもらいたいです。次からはもっと強い馬との勝負になる訳ですから、ここは頑張ってもらうしかないですね。
-:それでは、ここから楽しみが広がるようなレースを期待しています。ありがとございました。
(取材・写真=高橋章夫)
プロフィール
【昆 貢】Mitsugu Kon
11年にわたる騎手生活を経て、2000年に厩舎開業。日高の生産馬を管理することにこだわりを持ち、着実に成績を積み重ねると、08年に管理馬のディープスカイがNHKマイルCとダービーの変則2冠を達成。また、09年にはローレルゲレイロが春秋スプリントG1連覇を成し遂げた。他にも12年の天皇賞(春)を制したヒルノダムールや地方交流G1・2勝の実績を誇るハタノヴァンクールなど超一流馬を管理。今年はレガッタを始めとする3歳馬が好調。すでに7頭が勝ち上がっており、クラシック戦線での活躍が期待される。
1958年北海道出身。
1999年に調教師免許を取得。
2000年に厩舎を開業。
初出走:
2000年3月5日 1回 阪神4日目 12R アルアラン
初勝利:
2000年4月15日 2回阪神7日目 7R アルアラン
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
■公式Twitter
@aklab0328さんをフォロー