復活を遂げ 未知なる条件を切り拓くダイワマッジョーレ
2015/3/22(日)
紆余曲折を経て迎えるピーク
-:左右どちらでも走っている馬ですが、左回り自体は合う方じゃないですか?
甲:左は成績が良いですよね。京王杯SCでも重賞を勝ちましたし、東京では勝っていますよ。
-:これだけ順調に使えて、なおかつバラエティに富んだレースに出走している馬も珍しいですね。
甲:2000まで使っているのに、どこでも好走するんですよね。それで、勝っている重賞が1400しかないという。「1400が得意なんちゃうの」と皆は言いますが、スタートは上手くないし、そんな風には思えないですね。
-:2013年のマイルCS・2着の後の阪神Cは1番人気で7着に負けていますね。
甲:あれは調子が崩れる前だったのでしょうね。すごく調子は良いのですよ。しかし、なぜか走らなくなってくる前兆でしたね。体調は良いものの、気持ちがダメになってきてたのかなと。カッとなった感じで、これは絶対に走るやろうなと。それで、体も獣医さんが触っても「完璧、すごい。これで走らへんかったら嘘や」という感じなんですよね。それから裂蹄などもあり、その後のレースくらいからは段々悪くなっていったのです。
-:中山記念、中京記念ぐらいの時ですか?
甲:裂蹄とまで行っていませんが、その後に裂蹄になるんですよね。蹄が悪いのではなくて、歩様の悪さあってで、躓いてちょっと引っ掛けて、ぶつけたところの蹄の組織が死んでしまって、ガサガサになったのがピシッと割れてきたという裂蹄だったんですよね。痛くて早めに休めていれば、爪が伸びればすぐに治ったのですが、歩様もそれほど変じゃないのですよ。
マッジョーレを知らない人が乗ったら何てことはないのですが、毎日乗っていて、肩の出方がいつもと違う、と。「違和感がある」と獣医さん等にも言っても、どこかが悪いということはなくて。この歩様が治らんとなあ、と思いながらやっていたのがその頃ですね。良くなってきた毎日王冠で敗れましたが、(良くなったのは)その後のレースぐらいからですよ。
次のマイルCSの前くらいもやっと良くなってきましたが、調教が足りない状態だったのですよね。その後のチャレンジCの頃に“これなら走るぞ”と。それでもずっと変な負け方をしていました。しかし、ちょろちょろと伸びてきて、マッジョーレらしいところが見えて、何か良い感じになってきてると。阪神Cでは、“これで走らんかったら厳しいな”というくらい良くなって、大接戦で3着に敗れましたが、これなら大体戻ってきたなと。阪急杯は走りそうだなと思っていましたね。あそこがピークになり過ぎないように努力しないとアカンくらいの。
-:ずばり今回がピークと。
甲:本当にピークに近いんじゃないかと。だから、あんまり気だけ入れないように。
-:パドックで見る時は、あんまりテンションが高過ぎるのは良くないでしょうか?
甲:この馬がテンションが高い時はダメで、昔は煩い日があったのですが、最近そういうことがあまりないのですよね。当日輸送の競馬は、最近こそ成績が良いのですが、東京に行くと一晩イレ込んだりするんですよね。だから、次の安田記念は心配ですね。今回は当日輸送なので、そこら辺は心配なく行けるなと思っていますが。
-:この馬の未知の魅力に懸けたいですね。
甲:体型はどう考えても短いところ向きです。見た目は、この馬が3000m走るより1200の方が適性があるのでね。
-:甲斐さんからしても、参加賞の気持ちではないということですね。
甲:それは狙って行きますよ。安田記念への叩きのつもりもなく、ここはここでやっぱりG1なので、出ないと勝てないのでね。出るからにはソコソコ野心はありますが、心配の方がデカイかな。
-:最後にマッジョーレの1200に悩んでいるファンにメッセージをお願いします。
甲:ミルコが「ダイジョウブ」と言っていました。レースは時の運もありますので、流れに期待します。
-:あとは雨が降らないことをお祈りしておきます。
甲:どんな時でも雨は嫌ですね。晴れた良い天気の競馬が、勝っても負けても気持ちが良いので。良馬場でビュッと後ろから飛んでくるマッジョーレが理想ですね。もがいて出てこないというのはないと思います。今の状態なら、絶対にどこかから飛んでくると思います。それが間に合うか、間に合わないかというだけで。
-:ありがとうございました。安田記念の直前でもまたお願いします。
(取材・写真=高橋章夫)
ダイワマッジョーレ・甲斐誠調教助手インタビュー(前半)はコチラ⇒
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プロフィール
【甲斐 誠】Makoto Kai
昭和48年5月16日生まれ。高校3年の時に厩務員だった父の担当馬グラールストーン(松永善厩舎)を応援して、馬の仕事に興味を持つ。ナイスネイチャの弟だったグラールストーンは3歳クラシック戦線でも活躍していたので、身近に触れた馬が競馬場で勝つ面白さに惹かれた。
高校卒業後、栃木の那須トレーニングファームに就職し、この世界に入る。その後、JRAの厩務員課程を経て、22歳で北橋厩舎に配属される。サワノブレイブ、ラパシオン、グランプリゴールドなどが北橋厩舎時代の思い出の馬。
特にグランプリゴールドは気性も苦労が絶えなかった。この馬のオーナーが矢作厩舎にも預託していたことがきっかけで矢作厩舎に所属することになった。馬に優しいホースマンとしてオーナーからの信頼も厚い。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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