常識破りのローテとはこの馬のことを言うのだろう。関西馬ながらも関東圏でデビューした上で連勝し、一戦毎に距離を縮めて桜花賞の権利を獲得したクイーンズリング。それでも、聞けば綿密に見極められたローテーションであり、フィリーズレビュー組の不振を覆すだけの潜在能力も秘めていそうだ。東西無敗のマンハッタンカフェ産駒対決に待ったなし!吉村圭司調教師のインタビューを読みながら胸を躍らせていただきたい。

FRのマイナス20キロはどう見る?

-:桜花賞(G1)に出走するクイーンズリング(牝3、栗東・吉村厩舎)について、今回もよろしくお願いします。まず、前走のフィリーズレビューでは馬体重が20キロ減っていて驚いたのですが、先生はどうご覧になっていましたか?

吉村圭司調教師:よろしくお願い致します。マイナス体重でも力を出せるかなとは思っていたのですが、数字だけ聞いた時は、正直、絶望的かなと思いましたね。

-:それでも、改めてこの馬の強さを再認識できたレースだったと。

吉:そうですね。中間からカイバを食べてなくて競馬に送り出していたとしたら、正直僕らも腹を括って、これぐらいのマイナスは仕方ないかな、と思いますが、本当にビックリしました。驚きでしたね。

-:となると、(カイバは)普通に食べていたのですね。

吉:もともと食いは苦労しないのでね。当日輸送での競馬ということで、大きくイレ込んだり、発汗をしていなくても、馬が気を遣う部分が多々あったんじゃないかな、と思っているのです。

-:ファンの気にしているマイナス20キロというのは、馬体重を戻す方向で調整されているのでしょうか?あのパフォーマンスができましたが。

吉:新馬と2走目というのは余裕があったと思います。一般的にも新馬を使ってから締まっていく馬が多いから、あれが適性体重に近いと思いますよ。そうでなければ、常識から考えたら、マイナス20キロであのパフォーマンスは発揮できないと思いますからね。450前後が理想で、現状の理想体重ではないかと思いますね。

-:プラス6~8くらいで?

吉:そうですね。それくらいで十分じゃないかなと思います。

クイーンズリング

▲開業4年目ながらクラシックに無敗馬を送り出す吉村圭司調教師


-:今回の調整というのは、大体プラス8キロを目指すということは、そんなにバリバリは乗り込まないということですか?

吉:いや、数字をテーマとしては挙げていないですよ。あれ以上は減らせないから、2~4でもプラス体重で、と思っていますが、敢えてプラス何キロという形では考えていないですけどね。本当に、競馬の翌週の木曜日から乗り出せているし、食いも落ちていないし、この間使った後、萎んだ感じもないので、僕の思った通り調教は進めていますね。

-:レースで初めて乗ったミルコ・デムーロ騎手も驚いていたのではないですか?

吉:調教で1回しか跨っていなかったし、競馬のテンションも高いところを見せていたので、ちょっとビックリしたようなことは言っていましたが、競馬馬ですから、それくらいの気合乗りは必要ですよね。

-:パドックでの仕草で、頭を上下に振ったりするのは、イレ込んでいるのではなくて、クイーンズリング自体の普通の仕草なのでしょうか。

吉:あれで、周回し出して、すごく発汗が目立つようだと、危険だとは思いますが、あれでも落ち着いていましたしね。というのも、発汗も全然目立たなかったですから。新馬は競馬を分かってないので、大人しく周回するものですが、2走目も良い感じだったので、全然心配していなかったですね。

-:坂路の角馬場で歩く仕草も、若干頭を沈めながら歩く仕草をするので、この馬の癖で、ああいう風にしても別にテンションが高くなっている訳ではないのでしょうね。

吉:クイーンズリングのリズムがあるのかもしれないですね。

-:むしろ走り終わった後の方が、テンションが高いような感じはありますね。

吉:そうですね。治まっていないものね、眼付きを見てもね。

クイーンズリング

▲フィリーズレビューのレース後も元気が有り余った様子をみせていた


無敗のマンハッタンカフェ産駒対決

-:かなり大きな期待を持って桜花賞に向かえますね。関西の出走馬の中では、断トツで上位の存在です。

吉:あと1週間あるので、この過程を上手くクリアしてこなしていければ。良い状態で送り出してあげれば、チャンスはあるとは思っています。無敗で来ているから、関西馬の中では特に注目されるでしょう。しかし、チューリップ賞組も相当に馬場が悪かったですからね。巻き返してくるであろう手強い存在です。とにかく自分の管理馬を良い状態で、というのが一番ですね。

-:前回の取材の時は敢えて名前を出さなかったのですが、ルージュバックの評価も相当高いですからね。

吉:3戦とも男馬と走って、前走もきさらぎ賞を勝っている訳ですからね。普通に考えたら、頭2つ、3つぐらいは抜けているでしょうから。やっぱり今の時点でも、男馬と一緒に走って重賞を勝っているというのは、なかなか手強い存在ですよね。

-:敢えて挑戦者の気持ちで。今年の見処、様相でいえばルージュバック対クイーンズリングの桜花賞ですよね。

吉:もちろん挑戦者という心構えですよ。あの馬とぶつかることだけに限らず、クイーンズリングはG1のジュベナイルフィリーズも使っていない訳ですから。初めて一線級の中で走る訳です。ただ、ルージュバックとは種牡馬のマンハッタンからも一緒ですからね。その辺は興味深く見てもらえるところでしょうが、本当にとにかく毎日、無事に1日、1日、そこに一番神経を使っています。

クイーンズリング

一週前追い切りは坂路を単走で駆け抜けたクイーンズリング


-:今朝(4/1)の1週前追い切りは、坂路で山田和広調教助手が乗って追い切られたのですが、動き自体はいかがでしたか?

吉:「引っ張りきり」と言っていたので、ちょっと速くなり過ぎるくらいの感じの手応えだったみたいですね。55.3、終いが12.9秒で、本当に予定通りですね。

-:お母さんのアクアリングが元・藤原英昭厩舎だったのですね。その担当していた方に当時の話を聞きました。

吉:けっこう元気が良かったらしいですね(苦笑)。

-:そういう時もあるものの、僕がクイーンズリングのフィリーズレビューのパドックを見た時にちょっと驚いた、という話をしたら「いや、多分扱いやすいタイプだと思うよ」と言っていました。美浦の尾関厩舎に転厩させる時も「ムチャクチャ煩い馬だったら迷惑が掛かるから転厩させないけど、やりやすそうな馬の中に入ったのがアクアリングだった」という話を聞いたので、なるほどな、と思いました。

吉:「何走か競馬を使った後、馬場入りなどけっこう手を焼いたよな」と言っていましたよ。本当に牝馬というのは難しいですよ。

クイーンズリング・吉村圭司調教師インタビュー(後半)
「パフォーマンスが上がるための条件」はコチラ⇒

1 | 2