距離にもメド 機は熟した7歳セン馬カレンミロティック
2015/4/26(日)
収穫があった阪神大賞典の4着
-:天皇賞(春)(G1)に向かうカレンミロティック(セ7、栗東・平田厩舎)ですが、前回の阪神大賞典は直線で詰まって出て来られないという、ファンにとっては歯ぎしりをしながらゴールしたレースだったわけですが、高坂さんにとってはいかがでしたか?
高阪陽祐調教助手:阪神大賞典自体、課題は距離をこなせるかという懸念があり、目標として天皇賞(春)は置いてましたのでね。天皇賞よりは、阪神大賞典の方が馬場を考えればタフなコースだと思うので、そこをこなせるなら行けるのかなと思って、阪神大賞典を使いました。レース自体は初めての距離、初めてのジョッキーということもあって、フーラブライドとラブリーデイの後ろに付けて折り合い重視という競馬になっていましたよね。その不利もそうですが、3コーナーにかけて、仕掛けて行きたいところで前が詰まってからダメでしたよね。それで、何とか抜けて出てきたら、また詰まって、でした。
-:脚は残っていたのですね。
高:残っていましたね。まず、初めてあの距離を使って、陣営を含めてみんながあの距離はどうなんやろう、と不安があったから、思い切った競馬ができなかったというのがひとつはありますね。
-:一般ファンからすると、血統的な裏付けというのは、ディープインパクト産駒よりもハーツクライ産駒の方が距離は持つじゃないですか?
高:母父がA.P. Indyなので、そこですよね。ただ、こなせたことは確かですし、あれだけ詰まって外に出してもう1回伸びてくるという。馬場もタフな馬場でしたし、この馬はやっぱりすごい馬やなと改めて思いました。
▲阪神大賞典のレース内容に手応えを感じている高阪助手
-:思い起こせば、2013年の有馬記念の時にはオルフェーヴル、ウインバリアシオン、ゴールドシップという強いメンバーと戦った訳ですが、戦前は、脚質的に中山の2500を考えると、カレンミロティックが怖いというファンが多かったです。その時の6着より阪神大賞典の方が、僕としてはイメージが良かったです。
高:確かにそうですし、あの時は4歳で2600mを使っていましたが、久しぶりの2500以上でしたよね。函館の札幌日経オープン(1番人気⑧着)は馬場が合わなかったので、度外視ということで置いておいても。
-:函館の馬場が洋芝で合わないということを考えても、京都の3200は「ヨシ!来た!」といえる条件ではないですか?
高:そう、「ヨシ!来た!」ですね。ただ、京都よりも阪神が良かったから、タフな洋芝でも行けるやろうと思ったら、案外ダメやったというところですよね。だから、宝塚記念を想定して中距離を重視し、阪神の内回りをたくさん使って、香港ヴァーズに向かいました。馬自身、2400、2500の長距離に対して学習したというところがあるのでしょうね。かつ阪神は得意だと思うし、それを思うとあの競馬はよくやってくれたと思いますよね。
-:よくやったというよりも、先ほどおっしゃられていた距離に対する不安から、ちょっと溜め気味で走らせたことが、何か新たなこの馬の良さを引き出せたんじゃないかという気もするのですよ。2番手から押し切ったりするのも、この馬の強みのひとつではありますが、意外に溜めても良い脚を持っているんじゃないかと。
「強気な競馬でどこまで行けるか、というところですね。勝つにはそう思っていますし、レース傾向を見ていたら、1800、2000、2200の京都コースよりは3200の方がまだ競馬はしやすいでしょうね」
高:溜めて通用するのは、タフな馬場の減速ラップのコースに限ると思うのですよね。阪神だから行けますが、京都だったら絶対に切れ負けすると思うんですよ。
-:今回はある程度先手を取って、アドバンテージを、と。
高:強気な競馬でどこまで行けるか、というところですね。勝つにはそう思っていますし、レース傾向を見ていたら、天皇賞(春)は上がり3ハロン33秒台が、ここ10年では1回くらいしかなかったと思います。34秒台前半も少ないと思うので、それを思うと1800、2000、2200の京都コースよりは3200の方がまだ競馬はしやすいでしょうね。
-:上がりがスタミナ型のラップになってくれると。
高:そうですね。だから、それも踏まえて阪神大賞典の3000をこなせるのだったら、京都の3200もこなせるかなという考えですよね。
-:絶対にこなせるでしょうね。逆は無理でも、京都の3000しかこなせない馬が阪神の3000に行こうと思っても無理でしょうが。
高:そう思いますね。
当週の課題はシェイプアップ
-:そこで強気な競馬をするにあたって、一番課題になってくるのは馬体やコンディションが良くなかったら、途中でスタミナ切れを起こしてしまうというところだと思います。現状のコンディションは、お腹の辺りがまだちょっと太いのかなと感じました。
高:さすが高橋さん、その通りです。コンディションは香港から遡ると、香港が初めての海外遠征で輸送は上手く行かず、厳しい状態でした。その中で何とか立て直して競馬をして、帰ってきて、疲れがグッと残ったのですよ。それでも、年を明けて天皇賞(春)を使う方向になったので、いきなり3200を使っても適性が分からないですし、阪神大賞典か日経賞で始動という話になりました。牧場でももうひとつ疲労の抜けが良くなかったので、阪神大賞典は無理かな、という感じだったのですが……。
その状態で厩舎に帰ってきて、3~4週間で阪神大賞典の日程で、乗り出した時は物足りないですし、この状態で競馬まで行けるのかなと。きっちり実力が発揮できる状態で使わないと、3000が保つかどうかをはかる意味がないのでね。仕上がってないから走らなかった、という言い訳をしたら、そのレース自体が無駄なので、目標を春の天皇賞に置き、しっかり適性を見るためには、仕上げれるところまで仕上げていかないとダメだったのでね。
それでも、CWで追い切りもして、ハードに競馬に向けてつくって行ったら、やっぱり良くなっていきましたね。絶好調ではないですが、これは力は発揮できる、言い訳はできないレベルかな、というところまで馬はできたと思ったので。そして、休み明け、遠征明けがどうかだけでしたが、気の良い馬なので、そこまで苦にしませんし、ダメージを引きずる方でもないので。それなりに走れる状態だったと思います。
▲4/22(水)、CWコースで3歳未勝利馬(外)と併せ馬
蛯名騎手が騎乗し6F84.4-12.5秒をマークしている
-:なおかつその通りの結果になったと。
高:距離はこなせるし、それなりに走れる状態だったのだと、改めて確認しました。そこから更にグッと良くなったというのはありませんが、順調ですよ。3~4カ月休ませて、1回競馬に使ったことで、また息もできてくるので。良くなっているのは間違ないと思います。
-:お腹周りの余裕は、あと1週間でどうにか調整できそうな目途は立っていると。
高:具体的に言うと、実際に先週量って太かったのですよね。また、牧場に1回放牧に出したので。先週が472で、今週が466。この感じで行くと来週に460くらいになって、450の頭から真ん中ぐらいで競馬だと思うので、しっかり力を出せる体にはなると思います。
カレンミロティック・高阪陽祐調教助手インタビュー(後半)
「馬は違えどジョッキーの3連覇に期待」はコチラ⇒
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プロフィール
【高阪 陽祐】Yosuke Takasaka
幼少の頃から競馬に親しむ。大学卒業後に軽種馬育成調教センター(BTC)の育成調教技術者研修へと進み、修了後は栄進牧場、ノースヒルズ、馬の温泉などを転々。年齢制限ギリギリで厩務員課程に合格した。
最初に所属したのは湯浅三郎厩舎で、ワンダースピード(後に転厩)などを担当。湯浅厩舎解散後に平田厩舎へと移った。「自分の馬乗りが達者だとは思っていないから、馬の能力をスポイルしないように。マイナスを極力減らすことを考えている」と、謙虚な姿勢で馬と接することがモットー。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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