「泰然自若」厩舎2度目のダービー制覇へ リアルスティール
2015/5/24(日)
-:皐月賞でパドックを観た時に、これまでで一番チャカチャカしていると感じたのですが、そこはどうですか?
矢:それはあったなあ。しかし、競馬に行って大人しくはないよ。
-:元気というか、ちょっとテンションが高めでも、その中で集中している暴れ方とちょっと気が散っている仕草というのは、違うと思うのです。穿った見方にはなりますが、その中でリアルスティールは気が散っているほうといいますか……。
矢:それはベストターンドアウトを獲りに行ったからいけなかったんだよ。あれは一人曳きじゃないと獲れないからね。装鞍所まで二人で曳いていたのを、パドックでは一人にしたので。おそらく今回は二人で行きますよ。
-:勝利にこだわるということですね。
矢:もちろんあの時だって、勝利にはこだわっていましたが、そういうことも頭にあったので、一人で行ってみたのです。その点は大丈夫だと思いますよ。正直言って、追い切りを掛けたらテンションがすごいんですよ。それを考えて、昨日に負荷を掛けたというのもあるよね。そうすると、今の時点でかなり研ぎ澄まされているから、来週はそこまで負荷はいらないかなと。いわゆる瞬発力を磨くような調教で良いかなと思っているので。
-:馬の伸び縮みで言うと、若干伸ばし気味な所があるリアルスティールをちょっと溜めこんで発揮させると。そう考えると、展開的にはややスローの方が瞬発力が活きてくると考えて良いですか?
矢:しかし、そうしたらドゥラメンテの方が良いんじゃないの、フフフ(笑)。それに、出す以上、どの馬だって色気はあるだろうし、そんなに速くはならないだろうな。そこは考えるけど、ジョッキー次第ですよ。
「やっぱり1回ダービーを獲っているか、獲っていないか、という差は大きいんじゃないかな。ブリランテの時は、本当に最後の1週間は毎日えずくほど緊張していたからね。ダービーを獲ってからは、割と何でも大丈夫になったね」
-:先生にとっても楽しみなダービーですよね。
矢:今回は追う立場だから楽しいよ。本当に楽しい。昨日も随分と取材で答えたが、やっぱり1回ダービーを獲っているか、獲っていないか、という差は大きいんじゃないかな。ブリランテの時は、本当に最後の1週間は毎日えずくほど緊張していたからね。それに比べると随分楽だね。
-:皐月賞の時も、先生はリラックスされていたのですよね。
矢:皐月賞の時もそうだね。ダービーを獲ってからは、割と何でも大丈夫になったね。
-:皐月賞前に被っていた帽子と皐月賞に行く時の帽子と、また変えてらっしゃって。
矢:それはよくやることだから。別にゲンを担ぐとか、そういうんじゃないんだ。気分だから(笑)。
-:リアルスティールがダービーまで駒を進められた背景には、やっぱりお兄さんのラングレーを管理されているということも強みにはなっているのですか?
矢:いや、それはあまり関係ない。リアルスティールの素質自体が飛び抜けていたから。
-:あとは、飛び抜けた才能を5月31日に花開かすだけだと。
矢:そうですね。しかし、本当に良くなるのは、今年の秋か来年だな。
-:馬をやっていらっしゃる方は全員そう言いますが、5月31日はもう待ってくれないと。
矢:そればっかりはしゃあない。最初からそこを目標でやってきたから、全力を尽くすだけです!
-:2頭プラスアルファで、実際にスプリングSを勝っているキタサンブラックも含めて、この世代の面白さはありますか?
矢:レベルは高いんじゃないのかな。そういう風に、非常に高いレベルの拮抗した争いだと思っていますね。
-:最後に、皐月賞で涙を呑んだリアルスティールファンにメッセージをお願いします。
矢:正直、相手は強いと思いますよ。ただ、僕もスタッフもユーイチも、それを負かすためにどうしたら良いかというのを、日々考えながら調整しているので、5月31日の時点での万全の状態に持っていく、やれることを全てやる、というだけですね。そうしたら、自ずと結果は付いてくるかなと思っています。
-:もちろん距離に関しても。
矢:何も問題ないです。心配していません。
-:分かりました。非常に忙しい時間ありがとうございました。
矢:ありがとうございました。応援してください。
(取材・写真=高橋章夫 写真=山中博喜)
●リアルスティール・矢作芳人調教師インタビュー(前半)はコチラ⇒
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プロフィール
【矢作 芳人】 Yoshito Yahagi
父の矢作和人氏は大井競馬の元調教師。自身は名門・開成高校を卒業するも、父の影響を受けて競馬界へ足を踏み入れる。厩務員・調教助手時代は5つの厩舎を渡り歩き、2005年に厩舎を開業。実に14回目の受験で、晴れて調教師免許を手にした。
厩舎開業後はコンスタントに勝ち星を重ね、スーパーホーネット、グロリアスノア、グランプリボス、ディープブリランテら活躍馬を多数輩出。2014年にはついに初の調教師リーディングを獲得している。
また、メディア・ファン対応も精力的にこなしており、2008年には初の著書「開成調教師 安馬を激走に導く厩舎マネジメント」を発刊。『よく稼ぎ、よく遊べ』をモットーに、他とは一線を画した厩舎運営を続けている。
1961年東京都出身。
2004年に調教師免許を取得。
2005年に厩舎開業。
初出走:
2005年3月5日1回阪神3日目1Rマルタカクイン
初勝利:
2005年3月26日1回中京7日目9Rテンザンチーフ
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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