【POG】ミッキーアイルの弟ら良血続々 音無厩舎を直撃!
2015/6/7(日)
-:音無秀孝調教師に今回はPOGについて語ってもらいたいと思います。よろしくお願い致します。まず、2歳馬育成の方針を教えていただけますか?
音無秀孝調教師:よろしくお願い致します。方針は毎年同じなのですが、厩舎に入れて、ゲート試験に合格してから先に進める、というステップは変わりないですね。厩舎へ入れる時には、もちろんある程度調教が進んでいる馬を入れている、ということですよね。厩舎に入れてゲート試験に受かった後、次のステップに入る時に一つ考えるということなのですよ。
今は3頭が厩舎に入っているのですが、昨日(5//27)3頭がゲート試験に合格しました。現状で推していって良いのはブラボーウォーム(牝、父クロフネ、母ブラボーサンライズ)。あとに入ってきたのですが、ブラリサンポ(牡、父ワークフォース、母ノンキ)も推せますね。
ツイセキシャ(牡、父クロフネ、母ガンバリッコ)は良いと思ったのですが、まだ少し緩いのです。この馬は使う方向で検討するかどうかの結論は、来週以降に持ち越しにしています。今決めているのは、ブラボーウォームが阪神の最後の方で使えるんじゃないかと。現時点で入厩しているのは、その3頭ですね。
-:ブラボーウォームの距離適性はどうですか?
音:(芝の)1600~1800で勝負したいと思いますね。これの全兄弟のブラボーデイジー(重賞2勝、ヴィクトリアマイル2着)がウチにいましたが、まったく同じ配合なので。
-:福島牝馬Sを勝った馬ですね。
音:そうそう。だから、1800くらいを使って行きたいと思っていますね。その後のヴィクトリアMもウオッカの2着に来ましたね。そして、これも期待しているブラックスピネル(牡、父タニノギムレット、母モルガナイト)が来週入ってきます。これも入れて良いほど進んでいるのでね。もう1頭入ってくるのが、アカルイハピー(牡、父オレハマッテルゼ、母イイデショウ)で、実は今日入ってきますね。ただし、あんまりレベルが上がっていないのですよ。入れる時から、ゲートの試験をクリアしたらもう1回放牧も考えています。
そして、ここから入ってくるのがレッドラウダ(牡、父ダイワメジャー、母ヘヴンリーソング)。シルバーメール(牝、父ネオユニヴァース、母シルバーコ-スト)、ナーウル(牝、父ブラックタイド、母プリティアンブレラ)。大体10頭くらいを春先に入れておいて、残りは17~8いるので、秋口から順次入れるということですね。
-:この先に入れる馬たちの主戦場は阪神、小倉ですか?
音:そうですね。まあ、新潟もあると思います。ブラックスピネルの馬体重は500を超えていますが、入ったら490くらいになると思いますね。
-:タニノギムレットはあんまり特色が見えないですね。
音:タニノギムレットは小さくはないですが、大きいタイプは少ないですよ。これまでにタニノギムレットで一番走ったのはウオッカでしょ。ウオッカは牝馬で530~40くらいありますから。ただ、競馬の時はもっと絞りますから、500くらいになりますが、ウオッカのようなタニノギムレットの子供はあまりいないんですよ。他にそんな大きいタニノギムレット産駒は見たことがありません。
-:目指せ第2のウオッカです。
音:まあまあ、そこまで言えませんが(笑)、そういう風になってほしいなと思っていますね。
▲既にトレセンで調教を進めているブラボーウォーム
- ブラボーウォーム
- 牝、栗東・音無、クロフネ×ブラボーサンライズ
-:僕が教えていただきたいのは、例えば、ダノンスパーク(牡、母スターアイル)のお父さんがヴィクトワールピサで新種牡馬じゃないですか。先生の見立てはいかがですか?
音:分かりにくくて難しい種牡馬ですよね。ただ、確かに期待はしています。ピサ自体が良い繁殖牝馬に付けているのでね。だからスターアイルにも付けている訳でしょう。ピサの子は、ウチにはダノンスパークとニシカゼ(牡、母ホエールシャーク)も入ってきます。もう1頭、アンビシャスの下のルミナーラ(牝、母カーニバルソング)も同じ父なのですよね。2歳だけで3頭いて、走ってもらわないと困るという気持ちです。
-:ちなみに、スターアイル自体はディープインパクトを付けても、結構ムッチリした馬体のミッキーアイルが出ているじゃないですか。ヴィクトワールピサみたいに馬っ振りの良い馬にスターアイルと言ったら、ダノンスパーク自体の大きさはどれくらいですか?
音:スターアイルはコロンとしていますね。ミッキーアイルもディープを付けたけども、やっぱり丸いですよね。だから、マイルまでの馬なのですよ。しかし、この馬はそんなに丸くないのですよ。ピサが結構出ていて、馬体重も500を超えているので。だから、この馬はちょっとタイプが違いますよね。
-:重さというのはいかがですか?
音:重さといいますか、多分仕上がった時点でも、500を切っても490台は間違いないですね。その辺がちょっとピサに変わって、良い方に出ればなと思っています。ミッキーアイルとは全く違う馬になっているので。
▲昨年のセレクトセール当日のダノンスパーク
-:ダノンスパークの距離は持ちそうですか?
音:2000くらいまでは持つでしょうね。他には、ホエールシャーク自体が小さい馬なので、ニシカゼはこの父でもそんなに大型ではなく、450くらいですね。ルミナーラはアンビシャスをご覧になったら分かりますが、そんなに大きくはないですよ。牝馬ですから、450オーバーになったら良いと思っています。
-:ルミナーラもアンビシャスとは違うタイプと。
音:まあ、違いますね。アンビシャスは少し肉付きが良い方なので、距離の壁がありそうですよね。ですから、僕たちがダービーを使わないという理由はそこでしたね。ルメールさんを確保できなかったなど、他にも理由はありますが。話は逸れていますが、今はラジオNIKKEI賞を使って、秋に備えようということになっています。
-:ということは、妹であるカーニバルソングは大目標である桜花賞を想定すれば、距離体系はバッチリじゃないですか?
音:そうですね。これは、今回オーナーが辻牧場さんですが、期待は大きいですよ。みなさんの人気も高いようです。
-:新種牡馬といえば、僕らもファンも興味があるであろうワークフォースについて教えて下さい。
音:う~ん、何頭も見ていないから、ワークフォースは難しいですよね。例えば、このセネッティ(牡、母タッチザピーク)は長いところが持つでしょう。ワークフォースって大きいんですよ。
-:ただ、ワークフォースの馬体を見たら、あまり軽いタイプじゃないですね。
音:そうそう。セネッティもけっこう体がありまして、500くらいありますよ。
-:これは先々のタイプですか?
音:そうですね。秋になりますね。
▲3歳世代で活躍したアンビシャス。その半妹にも期待が懸かる。
-:クラレント、リディル、レッドアリオンらの下となるレッドアヴァンセ(牝、父ディープインパクト、母エリモピクシー)はいかがですか?
音:お姉さんより一回り大きくなって、今の時点で450あります。入れるのは秋口になりますが、出来ればもう少し馬格が欲しいですね。理想は460くらいかな。
-:しかし、小柄なディープ産駒ですからね。
音:だから、競馬で440くらいになるのですよ。まあ、ディープも440で競馬をしていましたからね。
-:エリモピクシーは先生の大好きな瞬発力を兼ね備えていそうですね。
音:兼ね備えているでしょう。この血統はマイラーなので、オークスじゃなくて最初から桜花賞ですよ。欲を言えば、マイルなのだから言わずと知れたNHKマイルCと阪神ジュベナイルフィリーズもありかなと。9月に何とか早めに勝たせて、権利を獲るために2勝ぐらいさせた中で、目標はそこに行きたいなと思っています。
音無厩舎おなじみJDD勝ち馬クリソライトの妹にも期待したい
-:読者としては、今年エリモピクシーを獲れるかどうかに懸かっている訳ですね。
音:そうですかね、ハハハ(笑)。牝馬の中では、アルマンディン(牝、父ステイゴールド、母クリソプレーズ)も面白いかと思います。半兄がクリソライトですよ。
-:どんな魅力がありますか?
音:牝馬なので、ダートではなく、芝を走って欲しいですね。ステイゴールドということで、芝にも色気が出てくるじゃないですか。
-:ダートというイメージは薄いですね。
音:ええ、クリソプレーズは芝で勝っているのです。牝馬はディープで芝を走っていますから。ステイゴールドなので距離もこなすのではないかと。
-:このクリソプレーズも、ちょっとムッチリとした子を出すタイプですか?
音:まあ、そうですね。牡馬はみんなムッチリとしてデカイですよね。この子はステイゴールドということもあって、コンパクトに出来ているのではないでしょうか。
POG・音無秀孝調教師インタビュー(後半)
「大化けの可能性もある?穴馬候補」はコチラ⇒
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プロフィール
【音無 秀孝】 Hidetaka Otonashi
1979年に騎手デビュー。1985年のオークスをノアノハコブネで制したが、通算は1212戦85勝と決して振るわなかった。脚光を浴びるようになったのは厩舎を開業させてから。開業年にイナズマタカオーで重賞を2勝。 以降も坂路を主体とした調教方法で実績を積み重ねると、オレハマッテルゼ、ヴィクトリー、オウケンブルースリ、カンパニー、ミッキーアイルらのG1馬を輩出。常にリーディング上位に名を刻む栗東のトップステーブルとして、その地位を固めている。
1954年宮崎県出身。
1994年に調教師免許を取得。
1995年に厩舎開業。
初出走:
95年6月24日 3回中京3日目12R キーペガサス
初勝利:
95年7月23日 2回小倉4日目11R イナズマタカオー
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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