一昨年の金鯱賞から勝利に遠ざかっているものの、昨年の宝塚記念で2着、前走の天皇賞(春)では3着と、大舞台でキャラクターを確立させつつあるカレンミロティック。いよいよリーチかと思われた今年の宝塚記念は陣営もさぞかし強気かと思いきや……。しかし、そこが穴馬の真骨頂であり、デビューから5年間続いている高阪陽祐調教助手との名コンビ。今回のインタビューもインプットしておいて損はない本音中の本音話が満載だ。

激しい戦いだった天皇賞(春)

-:宝塚記念(G1)に出走するカレンミロティック(セ7、栗東・平田厩舎)ですが、天皇賞(春)前にも取材をさせていただいて、結果は頑張っての3着。あのレースはアドマイヤデウスが熱中症になったりもして、タフなレースでしたよね。ミロティックもレース後のコメントからすると「熱中症になっていた」ということでしたが、どんな状態だったのですか?

高阪陽祐調教助手:競馬を上がってきて上がり運動をしている時に、いつもと状態が違って、バタバタしていました。そのバタバタが治まったら、今度は動きたくないのか寝ようとして、明らかにいつもと上がりの状態が違ったので、これはおかしいということで、診療所に行って治療したのですね。

-:それは暑くなる前で、馬の体が気候に馴染んでいなかったということですね。

高:そうだと思いますね。真夏でもなるのでしょうが、時季的にも暑い日はありましたし、体がシッカリ適応していなかった頃だと思います。

-:そういう疲れを癒すために放牧に出て、帰ってきた時はどんな状態でしたか?

高:いつもの放牧帰りより発汗もあり、テンションも高かったですね……。皮膚病になるようなタイプの馬ではなくて、抵抗力はある方なのですが、皮膚病をわずらって帰って来たので、疲れが出ているのだな、と。

カレンミロティック

この中間はカレンミロティックの体調面のケアに努めてきた高阪助手


-:そこからの調教のパターンというのは、そんなに強められないということですか?

高:様子を見ながら、ここから疲れが慢性化して状態が下がってしまうのか、悪いなりにこれからまた上がっていけるのか、というのを探りながら、まずは軽めにこなしてきました。体調と相談しながら、まずは落ち着いてテンションを下げさせてやるということで。

-:天皇賞(春)前の体は良い感じでフックラしていて、ここからちょっと絞れた方が良いな、という状態で向かったと思いますが、今回は逆に幾らか張りが足りない状態ですかね。

高:そうですね。今はそこから戻しつつありますし、実際に戻ってきているとは思いますね。

最終追い切りと馬体重は要注目

-:今のところの体重はどのくらいでしょうか?

高:462キロ(前走出走時は454キロ)なので、意外に目方はありますよ。ここ2走がすごくカイ食いが良かったのですが、今回はやっぱり食いも落ちているので、その割にはキープしているなと思いますね。

-:ここからあと1週間でいくらか減りますか?

高:減るでしょうね。競馬は450くらいになると思います。ただ、(垂水Sで)レコードを出した時が444なのです。これは、攻め込んだ結果の444だったので、今回はそこまで攻め込まず、という仕上げだけに、450を切るくらいかと思います。

-:近走で言えば、有馬記念がそれくらいだったと思います。

高:ただ、食べられていない、と言っても、この2走がかなり食べられていたので、香港に行く前の食いっ振りに戻ったという感じですね。そこまで気にしていないです。必要なものは食べているので。

-:1週間でどこまで戻せるかですね。それでも、馬は3日あったら変わる可能性がありますからね。

高:何せ、ずっとコメントさせてもらっているように気の良い馬なので。当週は蛯名ジョッキーが来てくれるらしいので、ジョッキーが乗ってスイッチを入れたら、馬自身で上げていくかなと。それが今回、どれだけ上げられるかは、当週の金曜日に僕が乗ってみて感触を確かめてみないことには分からないですけどね。

カレンミロティック

-:蛯名さんにちょっとスイッチを入れてもらうということですね。

高:今週の追い切りでもそんなに悪くなかったのです。良い馬場だったという事実はありますが、僕が乗ってあの時計(坂路で4f52.6秒)だったら及第点だと思いますよ。物足りないと言えば物足りないですが、時計的には問題ないかなと。

-:思っているよりも疲れは心配しなくても良いかもしれないと。

高:杞憂に終われば良いなと思っていますが、いつもとはやっぱり違いますね。ただ、毛艶自体は良くなっていますし、獣医さんに診せると「そこまで心配しなくて良いやん」みたいなことを言われますね。もうミロティックとは5年の長い付き合いですから、何となくちょっと違うな、というのを感じるので、それを信じたら慎重にはなりますが……、これが杞憂に終われば良いですね。

-:そういう中で、阪神競馬場の芝はけっこう時計がかかっていて、ペースに関係なく差せる馬場で、先行馬が受難のレースが目立ちます。ミロティックは先行して粘り込むタイプじゃないですか。どちらかと言えば、馬場が綺麗な方が良いですか?

高:もちろん馬場が良いのがいいですが、去年の宝塚記念から、割と荒れている馬場にも対応できるようにはなりましたからね。だから、この間の天皇賞(春)でも、散水がどうだという馬場でもありましたし、幾らか重い馬場でも対応できますね。ただ、天皇賞は重いと言っても、終い11秒台で来るような馬場ですから、そこまで重くないのかもしれなかったですね。


「ミロティックも本来は(良馬場向き)そうだったのですが、結局、そこに対応できるようになりましたよね。それはひょっとしたら、去年の宝塚記念から始めた接着装蹄の効果かもしれません」


-:馬場に対する許容範囲が広いと思いますね。しかし、あの天皇賞の馬場は、良馬場前提の馬はすごく泣いていましたからね。

高:ミロティックも本来はそうだったのですが、結局、そこに対応できるようになりましたよね。それはひょっとしたら、去年の宝塚記念から始めた接着装蹄の効果かもしれません。ほんの何ミリの世界なのですが、エクイロックスの間に挟んでいる接着がありますが、それで深さがちょっとついたことも走りやすくなったのでしょうね。

-:前の蹄の高さがない分の何ミリで四肢のバランスが良くなったと。

高:そうですね。

-:馬場状態をこなすと考えたら、先行して渋太いミロティックというのは……。

高:ただ、どうしても差せないから、溜める競馬ができないですよね。今回はメンバーを見て、逃げも手だな、というのは僕の中ではありますが。

-:スタミナ系のミロティックの作戦が一番ハマるとしたら、逃げだと。

高:もちろん番手が一番良いのでしょうが、逃げ馬がいないなら逃げかですかね。ドスローからのロングスパート戦にしないと力は出せないのでしょうが、毎度の話のとおり、結局そうなるとゴールドシップと勝負になりますよね(笑)。

-:でも、今回は少頭数で、どの馬もビッグネームばっかりで、そこを引っ張るというのは根性のいる、勝負師・蛯名ジョッキーの出番ですね。

高:そうですね。天皇賞(春)が本当に思っていた通りの乗り方をしてくれましたし、こちらが何か言うようなジョッキーではないので、当然お任せなのですが、おそらく前回みたいな番手、もしくは前目で、早め先頭で抜け出し競馬で凌ぐという形ですよね。“やっぱり天皇賞を勝っているジョッキーだな”という乗り方でした。

高阪陽祐調教助手インタビュー(後半)
長距離から中距離への対応は?(後半)はコチラ⇒

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