【POG】あの名牝と名種牡馬からいよいよ大物登場の予感！
2015/6/28(日)
今度こそ名牝の血が開花するか
－：それでは、今年の2歳について伺いたいと思います。よろしくお願いします。
今野貞一調教師：よろしくお願いします。まず、面白そうなのはスイープトウショウの仔・トウショウビクター(牡、父ステイゴールド)ですね。まだ北海道にいますが、栗東に入るのは秋口かと思います。
－：どんな馬か教えていただけますか？
今：ステイゴールドらしくスッキリしていて、ムダ肉の付きにくいタイプですね。血統的にどうしても成長が遅いところは否めないようですが。
－：去年でいえばレガッタ。お父さんがディープインパクトで。
今：その前のお姉ちゃん2頭がウチだったのですが…… (苦笑)。しかし、成長の遅いところがありますが、その割にはシッカリしているかと思います。
－：ステイゴールド産駒といえば、ファンにも気性面のヤンチャな部分が有名ですよね。
今：まぁ、ヤンチャですが、そんなに問題になるほどではないかなと。お姉ちゃんもキツイといえばキツイですからね。おてんばでしたよ。
－：今野厩舎といえば、スイープトウショウを担当されていた方がいらっしゃりますね。
今：はい。厩務員ですね。この馬のモノは本当にいいですよ。
－：バネがありますか？
今：かなり良いと思いますよ。ただ、体質といいますか、繰り返すように成長ですね。成長を見つついかないといけませんから、遅めになってしまうのですが、素質は相当持っていそうです。他には、今週入ってくるディライトクライ(牡、父ハーツクライ、母ベルベットローブ)はいい馬ですね。ローブデソワの下で兄姉がけっこう走っていますし、馬っぷりもいいですよ。
－：上はアドマイヤサガスなどですね。
今：そうです。上はダート馬ばかりですが、こちらは絶対ダートというほどではないので、そこはまだやってみないと分からないですが、いい馬ですよ。
－：同じ厩舎である姉のローブデソワと比べて、違うところ、似ているところはありますか？
今：こちらは男らしくて全然違いますね。割と種馬の特徴を出すのですかね。この血統はみな走っていますけどね。性別も違いますけど、ローブデソワとも全然違いますね。どちらかといえば、大人になってからの体をしっかりみたことありませんが、お兄ちゃん(アドマイヤサガス)に似ているのではないですかね。ハーツクライ産駒らしい感じはあります。
－：このきょうだいの中では、もしかしたら芝で走るかもと。
今：いや、ほぼダートかと思うのですが(笑)、芝の夢も取っておかないと。やってみないと分からないですが、今からどこを使うか決められはしないのでね。
－：この馬のサイズはどれくらいですか？
今：中の上くらいですかね。ローブデソワは牝馬にしてはデカイ馬ですからね。幼い時から体高はあって、466キロでデビューしましたが、今はもう520くらいありますからね。
- スイープトウショウの2013
- 牡、ステイゴールド×スイープトウショウ
- ディライトクライ
- 牡、栗東・今野、ハーツクライ×ベルベットローブ
牝馬ながらダートで4勝を挙げたローブデソワ
－：あの血統は幾らか大きめの馬が出ますね。
今：そうですね。それにパワーもあればスピードもあると思いますよ。何よりも素質がありそうです。続いて、こちらもこの前に入ってきたコンフィアンサ(牡、父シンボリクリスエス、母コンコルディア)もなかなかいい馬ですね。
－：大きさ的にはどれくらいあるのですか？
今：これはデカイですね。500ちょっとあるのでは？ダートっぽさもありますが、いい馬ですよ。
－：時計を出し始めていますか？
今：いえいえ、ゲート(試験)を受かったので1回(牧場へ)出しました。具体的なデビューは特に決めていないですね。馬の成長を見つつ、ゲートを受かって幾らか疲れもあるでしょうからね。まだやっぱり、どうしても緩いところがあるので、あまり早くから下ろそうというのはいないですね。体調が上がって牧場でパンとしてきたら、そこで考えようかなと。
- コンフィアンサ
- 牡、栗東・今野、シンボリクリスエス×コンコルディア
早期デビューはこの馬たち
－：ちなみに今ゲート試験を受かっている馬は何頭いるのですか？
今：コンフィアンサとファルブラヴの牝馬、あとマンハッタンカフェの牝馬と3頭だけですかね。もう受かりそうなのが1頭いるくらいです。
－：では、マンハッタンカフェの牝馬を紹介していただけますか？
今：ダートっぽさがあるので、POGには少しそぐわないかもしれません。距離が長くなって持ち味がありそうな感じの馬で、モルトカリーナ(牝、父マンハッタンカフェ、母アルウェット)という名前です。ダート1800や目標は関東オークスというタイプです(笑)。今、入厩している馬ではオーヴィレール(牝、父シンボリクリスエス、母シャンパンフルート)も割と早め、夏には行けるかなと思います。
－：こちらでの動きはどんな感じですか？
今：まだ入ってそんなに経っていないので。ゲートもまだですからね。北海道から来て、幾らか体調を崩しているので、もう少し整えてからですが、夏にデビューできるかと。
－：輸送で減った分、もう一回筋肉を作り直して。
今：そうですね。疲れもあるでしょうから。早めに大丈夫そうなのはオーヴィレールと、もう1頭シンボリクリスエスの牝馬でジューンソフィア(母ブーケティアラ)。こちらは乗り込みが順調で、気性も前向きそうなので、サッと行けそうかなと。
－：こちらは芝ですか？
今：芝でも大丈夫ではないですか。
－：シンボリクリスエス産駒の特徴は、先生ではどうお考えですか？
今：特に先入観はないのですが、見た印象ではありますね。「ああ、クリスエスだな」みたいな。体もシャープさというよりは、切れる脚があるタイプかなと。多少耳が大きめでね。
－：そうですね。その分、音に敏感だったりしますか？
今：そうは思わないですね。何となく見た目で特徴は思いますが、走る分には先入観を持たずにやっています。
2勝をマークし、重賞にも駒を進めたマサハヤドリーム
－：ちなみに現3歳世代でいうと、マサハヤドリーム(2勝、ホープフルS6着)などは血統的にファンが注目しにくい馬だと思います。
今：注目されにくい馬でも他にも頑張ってくれた馬はいますが(笑)、マサハヤのお母さんも走った馬ですよね。
－：そういう馬を聞き出せないかなと(笑)。
今：「お母さんがG1で走りました」なんて馬と比べると、注目はされにくいのでしょうが、お母さん(の獲得賞金)が「億」までいっていれば、血統的には立派な馬だと思いますよ。どうしても、こういう取材となると、お母さんがG1で活躍したくらいの話ではないと、注目していただけませんから。
－：そんなことはないですよ(笑)。逆にお母さんがG1馬で活躍しても産駒が活躍できなかった馬というのは……
今：スイープトウショウじゃないですか(苦笑)。しかし、今年のステイゴールドは大丈夫です！
－：ファンにはレガッタで可能性や匂いを感じられたのかなと。
今：そうですよね。
－：それは世代を経ていく毎に、牧場の方もやり方やクセを掴んでこられたのですか？
今：普通は最初の方の産駒が走るものですが、後々の方が走るというのは珍しいですね。しかし、待望のステイの男馬なので楽しみですね。他にはセレクトセール出身ですと、シャドウストリームの2013(牡、父キングカメハメハ)ですかね。
－：今年のキンカメは牡馬で爆発しましたね。
今：北海道にまだいます。秋口くらいかなと思っていますが。
－：どんな特徴がありますか？
今：距離はもつタイプのキンカメかなと。お腹がゴロンとして距離がちょっともたなさそうな産駒のタイプではないすし、ダートに行くキンカメよりは、芝で行けるキンカメの方かと。
－：短期間にコロッと変わる可能性もありそうですか？
今：今は随分良くなっている途中なので。途中だからこそ余計に動かさないというのもあるのですが、冬場に比べると、トモなんかはひと回り違いますしね。
- シャドウストリームの2013
- 牡、キングカメハメハ×シャドウストリーム
－：大きさはどれくらいありますか？
今：今で460～470くらいじゃないですかね。先ほどのマサハヤドリーム流れでいえば、今年も同じようにマサハヤダイヤ(牡、父ハービンジャー、母ココモオレンジ)という千葉セール出身の馬がいます。芝の長めの距離といいますか、中距離が良さそうですね。
－：ハービンジャーといえば先生のところにもロカがいます。担当されていて今度は男馬です。
今：ちょっとタイプは違いますが、悪くないですよ。
－：ハービンジャー産駒の傾向はわかりますか？
今：ロカは幾らかカリカリしているところはありますが、女の子なのでね。こちらは大人しいですし、トレーニングセール出身だけにシッカリしています。
－：千葉セリということは早めの使い出しになりそうですか？
今：千葉セリ出身といっても、マサハヤドリームは疲れもあって、秋デビューでちょうど良かったです。こちらは夏に行けたらな、と見ております。続いてエイシンさんの馬で良い馬がいます。セントルイスガールの2013(牝、父キングカメハメハ)ですかね。良さそうと聞いていますが、まだ僕は見に行っていないので。
－：評判はいいと。
今：ただ、僕はまだ見ていないので、明言は避けておきます(笑)。4～5頭ほど預からせていただく予定なのですが、楽しみですね。
- マサハヤダイヤ
- 牡、栗東・今野、ハービンジャー×ココモオレンジ
－：僕らが(牧場へ)行った時はまだ2歳馬が岡山に来ていなくて。
今：クエルクスの2013(牝、父クロフネ)はスピードがありそうです。
－：どんな特徴がありますか？
今：クロフネにしては素軽そうですね。スピードあると思いますよ。短い距離でバツッと。外傷して乗り込みが遅れたので、もう少し乗り込んでからとは思いますが、成長が遅いわけではなく、小倉までに間に合ってくれればと思っています。
－：クロフネはダートが多いと思うのですが。
今：この仔は芝で行けると思いますよ。素軽いタイプなので。気難しそうですが。
－：母父フジキセキということで、いかにもスピードありそうですね。サイズはどのくらいですか？
今：今では460から470くらいですね。牝馬にしてはまずまず馬っぷりがいいですね。
－：距離はマイルくらいまでを視野に入れていますか？
今：いや、1400mくらいかと思います。気性がかなり勝っているのでね、短いところに特化した方がいいかなと。あと穴で一発はスクリーンヒーロー産駒。
－：おお。期待のスクリーンヒーローじゃないですか。
今：エイシンサンデリーの2013(牝、父スクリーンヒーロー)。ただ、エイシンさんの馬ではないのですが、サマーセールで出ていたので。幾らか体質が弱いところはありますが、柔らかみがあっていい馬です。けっこう安かった(302万)ですね。ずいぶん立派な体になったのですが、体質は弱めで、ゆっくりやっているので、POG向きではないかもしれません。
－：そうは言いつつも、今年はスクリーンヒーロー産駒が走っていますからね。
今：しかし、走っているのは牡馬ばかりです。その辺りがどうかと。
－：そういえばそうですね。
今：ハハハ(笑)。バネはあって柔らかいので、しっかり体力つけば、というタイプです。
－：エイシンサンデリーの血統はどうですか？
今：そんなにパッとする血統ではないですね。そういうところにスクリーンヒーローがいいのではないかもしれません。
－：スクリーンヒーロー産駒は顔がいいイメージがありますね。
今：そうですか。この仔もいい顔をしていますよ。僕が馬に関しては、面食な部分があるので、顔が良くないとあまりセリとかでも選ぼうとは思わないですね。
- エイシンサンデリーの2013
- 牝、スクリーンヒーロー×エイシンサンデリー
－：馬相派ですか？
今：そうですね。それと、フレンチデピュティの牡馬もいいですね。スーパーライナー(牡、父フレンチデピュティ、母ヘヴンリーヴォイス)ですが、そこまでフレンチらしいガッチリ感がなくて、パワータイプではなく、シュッとしたスピードがあるかもしれません。
－：これは芝ですか？
今：やってみないとわからないですね。「フレンチ＝芝」という血統でもないと思いますからね。
－：先生の理想ではどうですか？
今：別にどちらでも走れば、と思います。新馬戦はね、割りと芝からという傾向があると思いますが、ダートの方がいいならダートでいいと思いますからね。競馬は一回のレースが貴重ですからね。無駄に走ってもリスクが増えるだけですからね。
POG・今野貞一調教師インタビュー(後半)
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プロフィール
【今野 貞一】 Teiichi Konno
1977年4月24日生まれ。座右の銘は『見ている人は見ている』。これは、色々な努力というのは人には分かり難いものかもしれないが、分かってくれている人は必ず居るはずだという想いを込めたもの。常に、自分は間違っているかもしれないと思う心を持つ事で、ずれずに真っすぐ進むようコントロールしてとのこと。実直で冷静。物腰がとても柔らかいクールなイケメン。昨年の阪神JFではロカが1番人気に支持されるなど、徐々に管理馬の層も厚みを増しており、今後の活躍が期待される若手調教師。
1977年大阪府出身。
2010年に調教師免許を取得。
2012年に厩舎開業。
初出走：
12年3月3日 1回阪神9R ローレルレガリス
初勝利：
12年3月31日 2回阪神3日目7R マルカプレジオ
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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