オーナー初の所有馬をG1獲りへ導くクロスクリーガー
2015/7/3(金)
-:POGのインタビューもお願いしたばかりの庄野調教師ですが、今回もよろしくお願いします。ジャパンダートダービー(Jpn1)に出走するクロスクリーガー (牡3、栗東・庄野厩舎)ですが、まずはこの馬との出会いから教えていただきたいと思います。
庄野靖志調教師:馬主さんと「トレーニングセールで1頭買いましょう」という話をしていて、色々なセールで何頭か馬を見たりしていたのですが、牧場さんからの薦めもあって「この馬にしようか」と決めたのです。当初から走りはすごく良かったです。ただ、ちょっと脚元があまりキレイじゃなかったというか、どこか球節に不安が残る脚だったので、そこだけが不安でしたね。
-:アグネスタキオンの血も入っていますし、その頃はまだ体質面が伴わなかったと。
庄:最初はそうですね。それでも、その時点である程度、アカ抜けした体だったとは思いますよ。同世代と比較しても割と完成されていたというか、完成形に近いものがあったと思います。
-:アドマイヤオーラにブライアンズタイムの肌ということで、最初から着地点はダートということで考えていらっしゃったのですか?
庄:いや、走りや馬体を見ても、芝でも行けるかとはずっと考えていたのですが、何せその球節がモヤモヤするところがずっとあったので、オーナーさんに時間も掛けてもらいましたし、やっぱりダートからで良いのかなと。
自身2つ目のJpn1タイトル奪取を狙う庄野師
-:デビュー戦で450キロぐらいですから、脚元がモヤモヤしつつも、体重がそんなにないというところが、この馬にとっては良かったと。
庄:確かに良かったかもしれないですね。
-:デビュー戦を迎えるにあたって、厩舎に来てからの追い切りや調整の進み具合はどうだったのですか?
庄:厩舎に来てからは、特に問題はなかったかな。ゲートも割と素直で、追い切りもやればしっかり動いてくれる馬でしたし、特に手の掛かる方ではなかったですね。
-:そういう状況で迎えた新馬戦で2秒1ちぎったのですね。
庄:追い切りを見ていて、大体新馬戦でソコソコはやれるのかな、勝ち負けになって勝負できるのかな、という印象は持っていたので、ある程度期待していたのですが、他にも評判になっているような馬もいたので、まさかあそこまでぶっちぎるとは思っていなかったですね。
新馬戦で衝撃的なパフォーマンスをみせたクロスクリーガー
-:一気に、この馬の能力に対する期待が高まったということですか?
庄:何が良いって、新馬戦にしても砂を被っても全然動じなかったし、騎手に対してもすごく操作性の良かったです。1800mのダートを走ってきて、最後の1ハロンを12秒0で走れているというのは、すごく心強いというか、強いなと思わせる時計でしたね。
-:初戦でそれだけの能力を出せる上に、逃げ切りではないということなかなかありませんよね。荒削りな面を解消してきたならまだしも、ここまで競馬を知っているというのはなかなかないじゃないですか。
庄:トレーニングセールを見ていても、特に癖のある走りだった訳ではないし、乗り難しそうだという印象もなかったですね。その辺は育成場の方もかなり気を使って育成していたんだろうと思います。トレセンに入ってからも、特に苦にすることなく調教も進められたし、あとは本当に脚元だけを気を付けながら、という感じでしたね。
-:2戦目の黄菊賞は芝に挑戦しましたが、結果はそんなに悪くはなかったですね。
庄:悪くはないですね。あの時期はクラシック前ですから、どれぐらいやれるのかというのも見てみたかったので、芝に行ったのですが、岩田君のコメントでは「2戦目ということで、返し馬からゲートの中までちょっとイライラしていた」とのことです。つまりは2回目で競馬を覚えてきたのかと。「あまり慌てさせないで、前半はなるべく落ち着かせるように乗ってきた」というレース運びだったようですが、それでも最後は33秒台で上がってきていますからね。からっきし芝がダメだとは思いませんが、ダートの新馬戦でかなりのパフォーマンスを見せてくれたので、芝を諦めてというよりは、切り替えてまたダートへ、ということにしました。
-:その後は4戦3勝という成績で、ヒヤシンスSの3着というのは、敗れたゴールデンバローズはもちろん評判の馬でした。このレースで初めての輸送はいかがでしたか?
庄:特に問題はなかったですね。強いて挙げれば、やっぱり距離なのかなと。1800から1600に詰めなければならない、ということで、どちらかと言うと1600仕様の馬になっていっていたのかと思いますよ。調教過程もそうですが、多少ハミを噛むところが多かったのでね。勝った馬はもちろん強かったですが、この馬も1600に対応できるスピードもあると分かったので、それはそれで良かったかなと思います。
-:実際は、もう少しこの馬には距離があった方が良いと。
庄:距離があって、あまり急かすよりは、やっぱりゆったり自分のペースで走れている方が良いと再確認したレースでしたよね。
庄野靖志調教師インタビュー(後半)
「至極順調でJDDの見通しは良好」はコチラ⇒
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プロフィール
【庄野 靖志】Yasushi Syono
少年時代は馬産を志して日本大学獣医学部に進学するも、調教師に目標を改め、厩舎を開業。開業2年目にホクトスルタンで目黒記念を制し、重賞初制覇を挙げると、2010年のJBCスプリントをサマーウインドでG1(Jpn1)初制覇を成し遂げた。管理馬は王道血統ばかりではないが、昨年もワイドバッハで武蔵野Sを制するなど活躍をみせている。実家が北海道、門別の庄野牧場という、ホースマンのサラブレッドというべき家庭環境で育ったことでも知られている。
1970年北海道出身。
2006年に調教師免許を取得。
2007年に厩舎開業。
初出走:
07年3月4日1回中京2日目11R マチカネオーラ
初勝利:
07年6月2日3回東京5日目4R ハリーコマンド
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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