重賞2着は4度 善戦マン返上へ マジェスティハーツ
2015/8/30(日)
-:新潟記念(G3)に出走するマジェスティハーツ(牡5、栗東・松永昌厩舎)ですが、ここ2走は安定して結果が出ていて、勝利まであと一歩というところまで来ています。まず前走の関屋記念ですが、2000mからマイル、右回りから左回りに替わったという点がポイントだったと思います。直前に(攻め専の)中山助手から「思い切った競馬をさせる」という風に聞いていましたが、どういうプランで臨んだか教えて下さい。
森一馬騎手:中山さんにも「自分が主役のつもりでドンと構えろ」と言ってもらっていました。マジェスティがいつも良い競馬をしている時は形に拘るのではなく、ゲートを出て気持ちを大切にして行くと、いつも最後必ず伸びてきてくれているので、この前もそういうレースになりましたね。
-:4コーナーを回った時には、勝ったレッドアリオンがかなり前にいました。そこから馬群を捌く時に、左前にいたシャイニープリンスが外に行った時に、ちょっと内にモタれて切り返すというか、そこの進路を見付ける時に、あの馬の癖が出たのですか?
森:そうですね。そんなにモタれはしていなかったのですが、直線に向いて残り400ぐらいのところまでは、ユーイチさんが乗っていたカフェブリリアントを目標に行っていました。僕がレース前に考えていた理想の形としては、最後にカフェブリリアントを右側に置いて、併せ馬の形で行ったら右へのモタれもマシですし、相手が伸びるだろうと思っていたのです。強い馬と併せ馬で行けたら力を発揮できると思って走っていたのですが、このまま内に行ったら詰まると思って、切り替えたら前が空いて、という形でした。左回りでハミを替えたというのも良い方に出て、いつもに比べてほとんどモタれていなかったとはいえ、時計的にも最後の3ハロンは32秒4で、かなり頑張って走ってくれたかなと。
早くもデビュー5年目 思い入れのある一頭で重賞タイトルを手にしたい森一馬騎手
-:レッドアリオンとは、マイラーズCではコンマ9秒差あったところをコンマ1秒差まで詰めている訳ですし、ハミをトライアビットに換えたというところも良かったのですか?
森:良かったと思います。左回りというのも、もちろん良かったと思います。
-:左回りは右回りよりササらないですか?
森:いや、そんなこともないですね。ハミを換える前は、新潟大賞典で2着だった時も中京記念で3着に来ている時も、かなりモタれているのを何とかしながら伸びている感じでしたが、今回はモタれはだいぶマシになりましたね。
「この間の2着も悔しかったのですが、“悔しさを晴らしたい”という気持ち以上に“マジェスティと勝ちたい”という気持ちが強いですね」
-:2000mから1600mであの競馬ができたら、今度の新潟記念というのは、ここ数走を考えると初重賞のチャンスですね。
森:調子も上がってきています。2000mという距離は競馬もしやすいと思うので、しかも左回りで同じコースですしね。
-:調教に乗っていて癖をよく知っていることは、プラスの面も大きいのではないですか?
森:2歳の時からずっと乗らせてもらっているので。
-:古くは神戸新聞杯2着で菊花賞の権利を獲ったけれど、その時はG1に乗るための30勝には達していませんでした。そういう悔しさをここで晴らしたいですか?
森:もちろんこの間の2着も悔しかったのですが、“悔しさを晴らしたい”という気持ち以上に“マジェスティと勝ちたい”という気持ちが強いですね。
-:マジェスティハーツは僕も2歳から歯痒さを感じていて、もうちょっと腰やトモに力強さが出てきたら、切れも増すんじゃないか、というイメージで見ていました。それがようやく軌道に乗ってきて、男馬らしいパワーが発揮できる体付きに成長したんじゃないですか?
森:そうですね。2歳の時に腰の骨を骨折したこともあって、そこからちょっとモタれるようになったのですが、それまではモタれなかった馬です。モタれるようになって、マジェスティの中でもバランスが変わるようなところがあったのかもしれないですが、そこからドンドン成長しています。歳を重ねる毎に良くなってきて、去年より今年の方が良いですし、これからももっともっと良くなってくれるんじゃないかなと思います。
-:成長力がハーツクライ産駒の一番の特徴だと思いますが、順調に成長していることは何よりの楽しみですね。最近は特に安定度が増していると思いますが、調教に乗っていても、変わった点を感じますか?
森:この前、放牧から厩舎にいた時に比べて、余裕がある体で帰ってきました。その余裕が良い方に出てくれたというか、今までの仕上がった感じとは、また違うような雰囲気でした。
-:精神的なユッタリ感みたいなものを感じられたと。
森:そうですね。精神的にも肉体的にも。
「マジェスティは本当に能力のある、力のある馬なので、マジェスティに乗っていると捌けない気がしないというか、特に左回りだったら自信を持っていけます」
-:2000mや1800mを走っている馬がマイル戦に使ったら、もうちょっと後ろの位置になるのかと思って見ていたら、ある程度の位置は取れましたね。
森:調子が良い時は、ゲートをちゃんと出てくれる馬なので。
-:前走は4枠4番でしたが、昨年の新潟大賞典の時も3枠5番だったので、あの辺の枠の方がレースを組み立てやすいのかなと思って見ていました。
森:そうかもしれないですね。でも、枠はそんなに気にならないですかね。
-:馬券を買うファンとしては、枠によってマジェスティが勝つチャンスが左右されるとは考えなくて良いですか?
森:そんなに気にしなくて良いと思います。この前も若干そうでしたが、スタートする向正面も、一番内と一番外を比べたら微妙に差がありますからね。直線や3~4コーナーに比べたらまだマシかもしれないですが、スタートした直後の馬場の状態の良さとしては、やっぱり外の方が良いことは良いです。マジェスティはとにかく馬場が綺麗な方が良いので、外だったとしても、今度は逆にそういう利点が生まれてくるのかな、という感じです。
-:新潟大賞典の時もユールシンキングとほんのちょっとの差でしたからね。
森:マジェスティは本当に能力のある、力のある馬なので、マジェスティに乗っていると捌けない気がしないというか、特に左回りだったら自信を持っていけます。
-:森騎手は左回りに自信を持っていますが、この間の人気を見ると、馬券を買うファンからしたら、マジェスティにとって左回りはどうなのだろうと。右回りでモタれる、ササるという印象が強かったと思いますが、やっぱり左回りの方が良いということですね。
森:はい、競馬はしやすいですね。
-:今朝(8/26)の追い切りは5時半からCWコースで追われました。動きはいかがでしたか?
森:中2週で、今週は競馬の1週前なので、そんなにやるつもりはなく、時計はそんなに出ていないですよね。息を整える程度というか、内容としては本当に順調な内容で、マジェスティの体の動きも思い通りというか、良い感じですね。
-:追い切り時計は6ハロン90.9-74.3-58.1-43.3-14.0ですね。
森:“15-15”で最後まで持っていましたが、抑えていたのをちょっと緩めたくらいの負荷でしかやっていません。中2週なので、しかも輸送もありますしね。予定通りです。
-:体重や2回目の新潟に輸送するということで、最近の気温の高さによる夏バテというところはどうですか?
森:夏バテは全然感じないですね。ただ、調教で乗っている感じだったらそんなことはないと思いますが、中2週で2回新潟に輸送するので、大きく体重は減らない方が良いと思います。
「今まで負けていた時は“抜け出したと思ったら最後に差される”という形でした。この間は色々考えて、“今度こそ大丈夫だろう、というタイミングで行ったら、逃げ馬がもう一脚使って”という競馬でした。そういうことも新たに頭に入れて、今回はより満を持して、競馬に挑めるかなと思います」
-:あとは先ほどマジェスティハーツのリズム、それを重視した競馬をすると。また今回も直前にマークする馬を考えますか?
森:そうですね。マークしていても、この間みたいに途中で止めるかもしれません。前走もカフェブリリアントばっかり見ていたら、確実に詰まっていましたからね。臨機応変に、ですね。目標と言っても、絶対にその馬にビッチリ付いていくつもりはなく、それよりもマジェスティ自身のリズムを考えて乗るつもりなので。
-:この前はレッドアリオンの前残りじゃないですか。過去の新潟大賞典とかだったら、抜け出したところを外からユールシンキングにやられているという、どっちもまたあると思うので、ある程度人気を背負って乗る立場からしたら、乗りにくくないですか?
森:そんなに乗りにくいとは思わないですね。今までマジェスティで人気に推してもらったことが何回もありますが、だからと言って、気負いや変に“頑張らなきゃ”みたいな心境になったことはないので。でも、今まで2着、3着と負けていた時は“抜け出したと思ったら最後に差される”という形でした。神戸新聞杯以外はタニノエポレットに負けた時もそうだし、中京で負けた時もそう、新潟で負けた時も全部その形です。この間は色々考えて、“今度こそ大丈夫だろう、というタイミングで行ったら、逃げ馬がもう一脚使って”という競馬でした。そういうことも新たに頭に入れて、今回はより満を持して、競馬に挑めるかなと思います。
-:特に新潟は直線が長いので、関西圏の2000mよりも流れないと思いますから、逃げ馬も脚が残っているということですね。
森:この間は持ったままというか、誰も行く馬がいなくて、(レッドアリオンが)楽をしていましたからね。
-:馬場状態も変わって、外側の馬場の方が良いだろうから、ちゃんと外に導けたら初重賞に……。マジェスティにとっても森一馬にとっても、飛躍出来る一鞍であることを祈っています。
森:頑張ります。
-:マジェスティハーツのベストパートナーというのが森一馬ということですね。
森:そうありたいですね。そう言ってもらえるように頑張ります。
-:応援してくれるファンも多いと思うので、最後にメッセージをお願いします。
森:重賞勝ちのチャンスを何回も貰いながら、まだ勝てていません。今まで応援してくださった方のためにも、自分のためにも勝ちたいので、とにかく1着でゴール板を通過できるように頑張ります。
-:2着と1着では違うというところが厳しい世界ですが、森騎手もケガをしたり、これまで若いながら苦労をしてきた分を、取り返すだけの勝利にして下さい。
森:はい、頑張ります。ありがとうございました。
(取材・写真=高橋章夫 写真=競馬ラボ特派員)
プロフィール
【森 一馬】Kazuma Mori
栗東の松永昌博厩舎所属騎手として、2011年にデビュー。騎手としては大きな体格の持ち主で、現在は平地・障害を問わず騎乗。昨夏はフランスの若手騎手招待レースにも出場し、海外での騎乗も経験した。
2013年には所属厩舎のマジェスティハーツとのコンビで連勝を決め、神戸新聞杯でも2着に入るも、G1騎乗条件となる通算30勝に届いておらず、大一番で乗り替わりの苦杯をなめた。同馬とのコンビでは重賞で2着3回、3着1回と惜敗が続いており、人馬ともに悲願のタイトルを狙っている。
1993年、神奈川県出身。
2014年に松永昌博厩舎からデビュー。
JRA初騎乗:
2011年3月5日 1回阪神3日1R ミスバイアモン
JRA初勝利:
2011年3月26日 2回小倉5日1R スパークスフライ
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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