秋華賞にも出走したように、早くから能力の片鱗を見せていたウリウリだが、とりわけマイル戦以下の条件では抜群の安定感。ついには初めてのスプリント戦だったCBC賞で、いきなりタイトルを手中に収めた。この秋は矛先を完全にシフトさせて更なる飛躍を誓っており、同厩ストレイトガールとの対決も見物だ。今回は競馬ラボ初登場となる田中大輔調教助手に、担当者だからこそ感じられる過程を聞かせてもらった。

距離短縮で素質が開花

－：秋はセントウルS(G2)から始動するウリウリ(牝5、栗東・藤原英厩舎)ですが、CBC賞はオープン特別からの連勝でおめでとうございます。

田中大輔調教助手：ありがとうございます。

－：距離短縮で勝ってきたことで、まず、聞きたかったのは“大幅にここが変わった”というものが見えないというか不思議でした。そこを担当者の方に聞きたいなと思っていたのですが、外見とか内面的な変化がどういったところにあったのか、教えて下さい。

田：見た目はそんなに変わっていないと思いますよ。ストレイトガールみたいに昔に比べて馬が立派にゴツくなったりしたこともないですね。見た目も変わりませんから。ただ、体重は3～4歳に比べれば、20キロぐらい増えていますが。

田中助手

距離短縮に手応えを感じていた田中助手


－：内面的にはいかがですか？

田：僕も3歳の夏から担当させてもらっているので、その前のことは分からないですが、それから見る限りは、落ち着きが出てきたことや、やっぱりカイバ食いが安定してきたことなど、内面的なところは成長してきているなと。

－：1600～1800辺りを使っていたウリウリがCBC賞で距離短縮をしてきた点は、戦前からやれる手応えがありましたか？

田：手応えを感じてきたのは、やっぱり去年の阪神Cぐらいですかね。長いところを使っていたけれども、もしかしたら1200～1400の方が良いんじゃないのかと……。疑問に思ったのは、府中牝馬Sを使った時に1回先頭に立ったのが、ズルズル垂れていったという部分も「う～ん……」という結果でしたから。


「先生(調教師)も言っていたように、やっぱりパンパン馬場の方が良いとは思いますね。だから、あの馬場でCBC賞を勝てたのはかなり大きいですよね。(開幕週のセントウルSの馬場は) 言うことはないと思いますね」


－：あの時は、田中さんとしても、もうちょっとやれる手応えがあったと。

田：8着はヘコんでしまうレベルの結果でしたね。それで、その後に阪神Cを使った時、牡馬相手のけっこうなメンバーで4着に来られたので“ひょっとしたら短いところの馬かな”と薄々気付いていったわけですね。京都牝馬Sを使った時も、捲っていって最後伸び切れなかったというところもあったので。

－：そのCBC賞ですが、勝ったとはいえ、もうちょっと馬場が硬い方がウリウリに合うイメージが湧きました。馬場はどうでしたか？

田：先生(調教師)も言っていたように、やっぱりパンパン馬場の方が良いとは思いますね。だから、あの馬場でCBC賞を勝てたのはかなり大きいですよね。

－：それが、精神面だとかを含めたウリウリの成長を感じる部分ですよね。

田：そうですね。

－：今回のレースというのは、開幕週の阪神なので馬場に関しては？

田：言うことはないと思いますね。

田中助手

中2週のスプリンターズSをピークに

－：前走から休みを隔ててのレースとなります。コンディションの変化についてはいかがですか？

田：夏前の2走が走ってくれているので、帰って来た時は幾らか苦しいところがありました。しかし、ここに来て急激に涼しくなってくれたので、持ち直してくれて、前回2戦ほどのレベルではないですが、それなりに良い状態で使えそうですね。

－：そんな中で行われた昨日(9/2)の1週前追い切りは、CWコースと聞いていたのですが、実際は芝コースに変更されました。動きはいかがでしたか？

田：騎乗された田代さん(調教助手)は「マズマズそれなりやな。悪くはない」と言っていました。

－：正直、絶好調時には多少及ばないと。

田：次のスプリンターズSまで間隔も短いのでね。この馬は詰めて使った場合が未知ですからね。田代さんも「そこまで目一杯仕上げてしまうと、次はない」という意識が頭にあると思うので、それなりの仕上げ方を思い描いていると思うんですよね。だから、あれぐらいで「来週はソコソコやろうかな」ということを言っていました。


「涼しくはなってきているのですが、今年は特に暑い年でしたし、やっぱりまだまだ蒸し暑いので。水をかけてあげたり、飲ませてあげたりして、なるべく疲れを残さないよう、僕なりの配慮といいますか」


－：今回のセントウルSではなくて、スプリンターズSを一つの目標として、徐々に回復・上昇させていっている状態だと。

田：そうですね。ここで目一杯に仕上げるのではなくて、良い方に向くように、という風に思い描いていると思うので。

－：昨日も追い切りが終わって上がってきて、すぐに厩舎の洗い場に一旦入れて、水を飲ませてから、もう1回運動に行くという、見ていて優しさを感じました。その辺も暑さ対策というか？

田：涼しくはなってきているのですが、今年は特に暑い年でしたし、やっぱりまだまだ蒸し暑いので。帰ってきた時にちょっと苦しそうなところがあったので、取りあえず出来るだけ早く回復させてあげようと、水をかけてあげたり、飲ませてあげたりして、なるべく疲れを残さないよう、僕なりの配慮といいますか。

－：ウリウリに対するいたわりですね。ちなみに、今の所の体重はどれぐらいですか？

田：体重は、競馬が468なので、乗った後で472キロですかね。レースではもしかしたら減るのかもしれないですが、同じくらいの体重で行けるかと思います。

一流スタッフの下で人も日々成長

－：CBC賞の468キロがベスト体重かどうか分からないですし、そこにこだわる必要もなく、もともと軽めのつくりですからね。担当していて難しいところはどこですか？

田：カイ食いが良くないので、そこは毎回、苦労します。毎日、夜飼いに来て、その日の状態を見てカイバをつくっているので。

－：ウリウリの好きな食べ物はありますか？

田：大体、甘エン麦ですかね。でも、あんまりやり過ぎると血が濃くなっちゃうので、出来るだけ控えたいのですが、今回は状態面も考慮して、甘エン麦に頼っています。今はグッと落ちたところから良い風に上がっていっているので。

－：馬券を買うファンからしたら、状態のジャッジが難しいですね。スプリンターズSまでには快調になるでしょうが……。

田：でも、良い方には向かっていますよ。かなり毛艶も良くなってきましたし、カイ食いも良くなってきました。今週(に追い切りを)やって「来週に岩田さんか鮫島君かどっちか乗せる」と言っていたので、そこで良い方へ仕上がるとは思います。

田中助手

－：これまでもコンディションが優れない時があったと思いますが、急にギュンと良くなるタイプですか。それともジワジワ良くなっていくタイプですか？

田：今回も急に良くなりましたね。今まで毛艶も良くなかったのですが、先週くらいから急激にグーンと良くなってきたので。前回も先生からはハッパを掛けられていたのです。安土城Sを勝った後、CBC賞に行く頃は3頭持ちしていたのですが、2歳の担当馬を他の人に渡して「この2頭は絶対に勝たさなアカンからな」と言われて、2頭共に勝たせられたので良かったなと。

－：藤原英厩舎に移籍して、田中さん自身、着実にステップアップできている訳ですね。

田：厩舎の周りの人もそうですが、自分の中で考え方が変わりましたよね。馬に対する接し方は変わりました。

－：藤原厩舎はプロ集団ですからね。何かある時はどなたかに相談しているのですか？

田：やっぱり一番すごいなというのは(エイシンフラッシュを担当していた)久保さんや(トーセンラーなどの)片桐さんもそうですし、誰もが勉強になります。カイバや永年培ったノウハウを相談したら「それも良いんちゃうか」と受けて入れてくれたりもしますし、攻め専の人には「ここをどうこうせい」と助言をもらったりすることもあります。

乗り手の人は、ピンポイントで言ってくれますね。「右トモがちょっとしんどいから」と言うと、獣医さんに診せると、ものの見事にそこが厳しかったりと的確なので、僕としてはそこら辺が、馬に接している人たちからすればやりやすいですね。

パドックの気配にヒントあり

－：藤原厩舎に転厩されて、ウリウリという良血馬を担当されて大変だと思いますが、2戦目の1200ｍでも良い結果が出るでしょうね。

田：ストレイトガールもいるので、博司さん(ストレイトガールを担当する田中調教助手)には「ガチンコ勝負やな」と何回も言われているのですが(笑)、負けないように。1200ｍの2戦目なので、この結果次第でスプリンターとしての適性が分かると思います。

－：ディープインパクト産駒の牝馬と言ったら、扱いは難しそうですからね。でも、最後は切れると。

田：やっぱり切れ味はすごいですね。そして、ストレイトに勝ちたいですね。そして、他にも一流馬が一杯出てきますから。

田中助手

馬房が隣同士のウリウリとストレイトガール(右) 同厩の直接対決となる


－：ファンはパドックで馬を観るじゃないですか。良い時のウリウリの仕草というのがあったら教えて下さい。

田：“良い時”というよりは、今は一人で引っ張れていますね。前はテンションが高過ぎて、二人じゃないとダメだったのです。やっぱりその落ち着き次第ですね。一人で引っ張っていてガーッとなっているようではダメですし、良い具合にハミを受けてグイグイ行っている感じなら。

－：1200を使うような馬というのは、あまり大人しいパドックよりは若干気合いが乗っている方がスプリンターらしいじゃないですか。その辺の判断は「ちょっとイレ込んでいるな」というくらいで良いぐらいですか？

田：グッ、グッと行っている感じが良いですね。歩いていて、ちょっとチャカチャカする分には良いのですが、ずっとチャカチャカしっ放しだと「う～ん……」という感じですね。

－：分かりました。スプリンターズS直前も取材させていただくと思うので、まずはセントウルSの好走を祈っています。ありがとうございました。

田：ありがとうございます。

(取材・写真＝高橋章夫　写真＝競馬ラボ特派員)

田中助手