遅咲きのダービー2着馬サトノラーゼンが迎え撃つ
2015/9/13(日)
-:セントライト記念(G2)から始動するサトノラーゼン(牡3、栗東・池江寿厩舎)ですが、ダービー前に取材をさせていただいて「ちょっと疲れが出ているのかな……」というお話でした。しかし、本番ではそれを覆すかのような走りを見せてくれましたね。
兼武弘調教助手:蓋を開けてみれば、ジョッキーの好騎乗というのもありましたが、あの馬の底力を感じました。言ってみれば、嬉しい誤算というか、内枠で上手く立ち回ってほしいという思い通りに、粘り強く走ってくれましたね。
-:バテているように見えない最後の踏ん張りで、ドゥラメンテに1馬身4分の3まで迫りよったと。
兼:もしかして、というところまで行きましたからね。
-:しかも、同じ馬主さんの、より人気をしていたサトノクラウンに先着してしまうという。その里見オーナーもダービーで2、3着を占めました。
兼:そうですね。来年こそはぜひ、という思いは強いでしょうね。ラーゼンはひとまず夏も順調に越せましたし、元気一杯だったようです。
-:ダービー2着馬にしては珍しく使い込んで、レース回数が多いという。
兼:本当に叩き上げというか。実戦を積む度に強くなっていったという、そんな馬ですよね。
-:追い切りは明日(9/10)ですが、休み明けでどんな状態ですか?
兼:帰ってきて、そこまで大きくなった感じはしないのですが、少しゆったりとして、ゆとりのある体付きに見えますね。調教のピッチを上げつつ、気合いも乗せつつ、という段階ですが、まだ、もう一段階スイッチは入っていない印象はありますね。ただし、明日ジョッキーが乗ってくれるので、そこでガラッと変わってくれれば良いかなと思います。
-:なるほど。1週前の追い切りでスイッチを入れていくと。この馬のデビュー時は438キロで、やや小柄でいかにもディープ産駒というタイプでしたが、勝てないながら未勝利を使っていき、休み明けの12月の時点で462キロまで増えたというキャリアです。ここで1回目の成長をしているのですね。
兼:そうなのでしょうね。そこから更に成長していくのです。本当に目を見張る成長でしたし、こちらも驚かされるほどの成長力といった感じですよね。
9/10(木)、岩田騎手が騎乗してCWコースでキロハナと併せ馬を行うサトノラーゼン(内)
ラストは追われて6F85.9-12.1秒をマークしている
-:持っている能力がより出て来たかなと。
兼:開花したということなのでしょうね。能力を秘めているところはダービーで確認できたので、今週ジョッキーで追い切ってスイッチが入ってしまえば、十分に恰好が付く競馬になるんじゃないかと思っています。
-:ドゥラメンテの戦線離脱は残念なことですが、ダービー最先着馬として受けて立つ立場ですね。
兼:そういうことになりますよね。
-:ダービーの激走の後、この馬も疲れは出なかったですか?
兼:多少の疲れはあったでしょうが、すぐに放牧に出しました。夏場は「元気一杯だ」という話は聞いていましたので、心配はしていなかったです。
-:今のところ、体重はどれくらいですか?
兼:先週の時点で470キロですので、まだゆとりがありますね。追い切ったことで460キロ台になるでしょうし、筋肉も戻ってくるでしょうね。春のバリバリ使って走っていた頃に比べると、筋肉量が足りないところがありますが、それは追い切りを重ねる中で付けていってもらえば良いでしょうから。
-:ここのところ、台風が来ていますし、馬場状態が悪いことは多いですが、この馬の場合は重いCWでの捌きはいかがですか?
兼:できれば軽い方が良いタイプかもしれません。調教では抜群に動きますが、実戦での芝の重馬場となると、この馬には軽い方が良いのかと。開幕2週目の中山なので、競馬は上手な馬ですから、前々で上手く立ち回れて、良い材料ではないでしょうか。
-:輸送も経験していますしね。
兼:輸送に関しては、全然問題ないと思います。
-:この馬のファンに、最後にメッセージをお願いします。
兼:春は使いつつメキメキと力を付けていって、ダービーで2着まで来ました。あとはクラシック最後の菊花賞に向けて、良いレースができればと思っていますので、この秋も応援よろしくお願いします。
-:最後に、近々、出走してきそうな2歳馬だけ教えて下さい。
兼:レヴィンインパクト(牡2、栗東・池江寿、父ディープインパクト、母ニキーヤ)です。今日、岩田さんを乗せて追い切りまして、重い馬場でもしっかりと走れて、問題なく来ているところですね。この馬はなかなか楽しみですよ。
-:レヴィンインパクトの馬体重はどれくらいですか?
兼:現段階で460くらいですね。追い切りもよく動けていて、いきなりから終いをまとめてくるくらいの馬なのですよ。
-:センスがあるということですね?サトノラーゼン同様、注目しておきますね。
兼:うん、走る馬ですよ。楽しみにしていて下さい。
(取材・写真=高橋章夫)
プロフィール
【兼武 弘】 Hiroshi Kanetake
滋賀県出身。1983年3月6日生まれ。初めて観戦した競馬はダンスインザダークが勝った菊花賞。中学生の時に競馬好きの知り合いが多かったため、影響を受けてこの世界に入る。高校の卒業を待たずして、北海道の千歳国際牧場で修行。その後は滋賀の湘南牧場、トレセン近郊のグリーンウッドに勤め競馬学校に入学。卒業後、池江厩舎に所属。持ち乗り(エアラフォンやバトードールを担当)を経て攻め専の調教助手に。モットーは「馬1頭ずつ個々の個性を大切にする」こと。目標は「厩舎全体のことを把握できるように頑張る」こと。業界一といっても過言ではないビッグステーブルのムードメーカー的な存在。
【高橋 章夫】 Akio Takahashi
1968年、兵庫県西宮市生まれ。独学でモノクロ写真を撮りはじめ、写真事務所勤務を経て、97年にフリーカメラマンに。
栗東トレセンに通い始めて18年。『競馬ラボ』『競馬最強の法則』ほか、競馬以外にも雑誌、単行本で人物や料理撮影などを行なう。これまでに取材した騎手・調教師などのトレセン関係者は数百人に及び、栗東トレセンではその名を知らぬ者がいないほどの存在。取材者としては、異色の競馬観と知識を持ち、懇意にしている秋山真一郎騎手、川島信二騎手らとは、毎週のように競馬談義に花を咲かせている。
毎週、ファインダー越しに競走馬と騎手の機微を鋭く観察。馬の感情や個性を大事に競馬に向き合うことがポリシー。競走馬の顔を撮るのも趣味の一つ。
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