同厩対決を再度制しスプリント界の新女王狙うウリウリ
2015/9/28(月)
負けて強しを思わせたセントウルS
-:スプリンターズS(G1)に有力馬として向かうウリウリ(牝5、栗東・藤原英厩舎)ですが、セントウルSはまさかの16番で、非常にやりにくい枠だったところを、上手く内に潜り込んで②着と、あんな芸当ができるんだなと。岩田ジョッキーにもウリウリにもビックリしたレースでしたが、田中さん自体はどうでしたか?
田中大輔調教助手:枠を見た時はここに来て、この枠を引くかという運のなさというか、ちょっと青ざめましたね。
-:レースを観ていかがでしたか?
田:ゲートに行っていたので、観たのは終わってからですね。出遅れたので、「あら~っ」とはちょっと思っていました(笑)。
-:あれは、どこかで内に入れようとした意図的なスタートだったのでしょうか。
田:そこは岩田さんですね。輪乗りも最後入れなので、話をすることもできなかったので。暑かったので、頭にタオルを掛けて、ちょっと口に水を含ませてあげて、それで僕はもう離れました。完璧に岩田さんにお任せしました。
田中大輔助手も岩田騎手の騎乗に舌を巻いた様子をのぞかせた
-:外からすんなりというよりは、中をこじ開けた時に良い脚を使うというのが、ウリウリの瞬発力の使い方かというのが再確認できたレースでしたね。
田:そうですね。1回外を回してよりは、ああいう競馬をした方が良いのではないかと思いましたね。
-:府中牝馬Sと真逆のレースが一番合うという。そう考えると、中山のトリッキーなコースというのは合わないようで、実はウリウリにピッタリなコースかもしれないですね。
田:やってみないと分からないですが、ひょっとしたらそうかも分からないですね。
-:セントウルSが終わった後の疲労はいかがでしたか?
田:疲労はあるかと思いましたが、意外にガタッとは来なくて、すぐに体重も戻ったので良かったです。
「確かに時計は持っていなかったので、そこら辺がどうなるのかなと思っていたのですが、結果、時計が速くても対応できたので、ましてや大外枠、不利な条件で」
-:田中さんにとってウリウリはどんな相棒ですか?
田:藤原厩舎に来て、こうやって走る馬を任せてもらえて……何て言うんでしょうかねぇ……。
-:先生がウリウリを担当させてくれたということは、五十嵐厩舎から藤原厩舎に来て、ようやく認められたということですよね。
田:そうだと嬉しいです。段々、認められつつあるのかなと思っています。その成果をG1で出したいですね。
-:セントウルSの結果を見たら、もう目途は立っているのではないですか?
田:各紙の新聞とかを見ると「時計勝負は対応できないんじゃないか」という風に書かれていたのを見ていました。確かに時計は持っていなかったので、そこら辺がどうなるのかなと思っていたのですが、結果、時計が速くても対応できたので、ましてや大外枠、不利な条件で。
不問ながらも理想は良馬場
-:内に潜り込んで出てくるというロスがありながら。しかも、セントウルSという開幕週で内枠のアクティブミノルが逃げ残った訳ですから。それを後ろから差して来たという。今度は舞台が替わって、中山で最終週。これは雨さえ降らなければ強気になれますか?
田:雨はCBC賞の時に降っていたので、それなりの馬場でも対応できるのはできると思うのですが、やっぱり理想はこの前のように、良い馬場でやった方がより切れ味が使えるので、雨が降らない方が良いのは良いですね。
-:ディープインパクト産駒は蹄が薄い馬が多いのですが、その中でも特に蹄底が浅いというか、だからイメージできないんですよね。雨が降った芝生というのは滑りそうで、グリップが利かなそうですが、意外に走ると。ファンの中にはウリウリは道悪が巧いと思っている人もいると思いますね。
田:ローズSでも雨の時に来たりしていて、あの蹄でよく走っているなと思いますね。
-:突き差して走っているのでしょうかね。
田:どういう風に走っているのかな、とは僕も思うんですよね。
「めちゃくちゃ走った後にどうなるんだろう、と心配していたのですが、使ったことによってむしろ良い方に出そうな気配なので、少し安心しています」
-:雨で走る馬って、案外繋が起ち気味で、硬めのフットワークでそんなに大跳びじゃない馬の方がバランスを崩さないイメージがありますが、ウリウリの繋はめちゃくちゃ柔らかいじゃないですか。多分、トレセンの中でもしなやか度は抜けているのではないかと。歩きを見ているだけですごく柔らかいですものね。
田:ええ、そうですね。
-:それだけに体面でケアするのも、他の馬と違うところもあるのではないですか?むしろ衝撃を吸収しているから。
田:背トモと背中は痛くなりますね。ケアをしてあげないとやっぱり蓄積されていくので。
-:そこで中2週です。セントウルSを1分7秒台で走った後の中2週というのは、僕自身ちょっと心配しているのですが、今週の動きを見ると大丈夫そうですか?
田:めちゃくちゃ走った後にどうなるんだろう、と心配していたのですが、使ったことによってむしろ良い方に出そうな気配なので、少し安心しています。
-:しんどい時に使ったら、使った後の方がガラッと良くなるというのはよくあることですものね。ということは、楽しみなG1ですね。
田:そうですね。良くはなって来ています。
-:中2週と言っても、通常の中2週ではなくて、3日間開催があった変則の中2週で、今週は休み明けの水曜日に坂路で乗られて、木曜日の今日(9/24)はPコースで軽く乗られましたか?
田:軽いと言っても、普通キャンター程度の、田代さんがハッキング程度にちょっとほぐす感じの普通のペースで行く感じでしたね。明日、坂路でやるみたいです。
-:セントウルSから少しでも上積みがあれば。
田:毛艶も少しは良くなったと思いますね。張りも出てきましたし。
今度は引きたい理想の枠順は?
-:ウリウリは変わらないといいますか、僅かな変化しか見せてくれない難しい馬です。しかし、一番は眼力が増したような。表情がすごいキリッとしましたね。できればここでビッグタイトルを。
田:もうこんなチャンスがあるかどうか、僕自身も分からないので。こうやって人気を背負ってのG1で獲れるか獲れないかというのも、ひょっとしたら一生に一度かもしれないし。持っているか持っていないか、ですね。
-:またゲートに行くのですか?
田:毎回行っているので、今回もそうしようかなと。
- 勝つということだけを考えると、今度こそもうちょっと内枠が欲しいですね。
田:理想は、僕の中では真ん中くらいが一番良いと思いますね。内だとやっぱり包まれたりする可能性もありますから。
-:函館SSでストレイトガールが負けた時のような。
田:そうなんですよね。だから、安土城SとかCBC賞の時のように真ん中の枠だと、ウリウリの場合は自在性があるので、前目に付けながらああいう脚を使えたりしましたから、真ん中くらいが一番理想かとは思っています。
-:藤原厩舎からはG1馬のお姉さんのストレイトガールが出ますので、なかなか簡単にはいきそうにはないですね。
田:着順は上でも1キロのアドバンテージをもらっていたし、やっぱり向こうは休養明けというのもありました。本当の勝負は今回だと思いますよ。だから、胸を借りるつもりで行こうかと思っています。
当日の気配に注目。最後の難関は輸送
-:体重はどれぐらいになりそうですか?
田:乗った後に量って、478ですね。だから、今は前回とほぼ変わらない感じですよね。向こうで食べてくれたら、全く変わらないくらいで行けると思いますが、輸送が未知数なので、どうなるか……。
-:未知数というのはどういうことですか?
田:向こうで食べてくれるかどうか、ということですね。馬運車の中は普通にジッと立っている感じですが、環境が変わった時に、エサを食べてくれるかどうかだけです。府中牝馬Sの時は、自分なりに対策を練って、色々やって何とか食べてくれました。
-:その「色々やったこと」を教えていただけますか?
田:馬運車で、カイバと草を吊って行ったり、厩舎でカイバ桶を2つ付けているのですが、こちらと環境が変わらないように、その桶を2つにしたりしています。
-:一手間掛けている訳ですね。
田:今回も環境が変わらないようにして、こっちのカイバ桶を外していきます。
-:競馬場に備え付けのカイバ桶じゃなくて、いつも使っている自分の食器を持っていくと。
田:それで、府中牝馬Sの時は何とか食べてくれて、体重は減らなかったので、そういう準備で行こうかと思っています。
-:中2週が良い方に転んで、取りあえずホッとしていますか?
田:夏場の感じだったら、どうなるかと思いました。勝つことはできなかったですが、良い競馬をしてくれて、田代さん(調教助手)が「状態も問題ない」と言ってくれていますしね。張りも出て来たし、毛艶も良くなってきたし、あとは、輸送が課題なので、何とかそこをクリアできるように努力していきたいと思いますね。
-:中山の直線を勢い良く駈け上がってきて下さい。ファンは大きな支持すると思うので、本命党のファンにメッセージをお願いします。
田:スプリンターズSまで日にちがないので、精一杯自分なりに、悔いのないようにやりたいなと思っていますので、応援して欲しいですね。
-:分かりました。堂々とパドックを歩く雄姿を見せて下さい。
田:はい。ありがとうございました。
プロフィール
【田中 大輔】Daisuke Tanaka
子供の頃、両親が働いていた食堂に客として来ていた馬主を通じて競馬を知り、「ジョッキーにならないか?」と誘いを受けるも、体格が適さず断念。そこで厩務員の道を勧められ、高校3年の夏休みにビワハヤヒデがいる日西牧場へ。ここでは1カ月間休まずに働き、「お前はこの世界に入っても大丈夫やろ」とお墨付きをもらう。高校卒業前に競馬学校の試験を受け、1度目の試験は不合格となったが、高校卒業後に坂東牧場で3年弱修業を積んで試験に合格。最初に配属された五十嵐忠士厩舎ではフィリーズRとローズSを勝ったマイネレーツェルや日経新春杯で3着に入ったマイネルプレーリーを担当。2011年に現在の藤原英昭厩舎へ移り、人馬ともハイレベルの環境で更なるスキルアップに励んでいる。