泰然自若の後方待機 ライズトゥフェイムがたどり着いた脚質
2016/1/17(日)
6歳を迎えての本格化気配
-:AJCC(G2)に出走予定のライズトゥフェイム(牡6、美浦・加藤征厩舎)についてお伺いします。前走の中山金杯は昨年の10月以来のレースということになりましたが、中間の調整過程から振り返っていただけますか。
加藤征弘調教師:レース間隔がある程度開いていたので、5週から6週前に厩舎に戻して、ゆっくりと立ち上げたという感じです。
-:先生はよくプールなども使いますし、いろいろな場所で調整されていたのかなと思いましたが。
加:もちろん、ありとあらゆるコースとまでは言いませんが、いつも画一的なものではなく、沢山のコースを使っています。長く置くときには長く置くなりの調教の仕方もあるので、バリエーションを織り交ぜながら、といった感じです。
-:早めに厩舎に戻したということも考えながらの調整に。
加:そうですね。徐々にピッチを上げていって、最終的には追い切りをできるように持ってきたという感じですね。
-:レース当日の馬の気配はご覧になっていかがでしたか。
加:見た目や数字的にはそんなに変わっていないけれども、最近はもう馬に実が入ったというか、どっしりとして雰囲気というのは出てきているなと思いました。確かに首なんかは結構ガシッと太くなってきています。
-:その変化というのは、精神面にも関係あったりするのですか?
加:厩舎に入ったときからそんなに燃える感じはなく穏やかな馬なので、オンとオフははっきりわかっているタイプの馬です。そういった面ではそんなに変わったところはないと思います。なかなかこういう風にはうまくいかないのですが(笑)、いい歳の重ね方をしています。
定着した脚質、爆発力の理由
-:前走はスローペースになりましたが、ご覧になっていていかがでしたか?
加:先行馬がいなかったので、レース前からスローペース必至で、石川君にも「ある程度前で進めるのは仕方ないよ」と話してはいたのですが、ここ数戦のレースの流れからか、良いのか悪いのか妙に折り合ってね(笑)。以前とは違って、1コーナーまでにハミをとったりする部分がなくなって、その分だけ終いの切れ味につながっているのではないかなと思います。
-:前半に余計な力を使わない分、それが終いの爆発力に、と。
加:そうですね。この脚質であれだけの脚も使えるようになっていますし、いじらずにこの馬の型で。うちには4歳馬でノンコノユメって馬がいますが(笑)、ある程度そういう脚質になってきているのでね。相手関係や展開を読んで一戦ごとに戦法を変えるというようなことはしないで、あの型で定着させようと思っています。
-:スローペースだからといって無理に促すといったことはせずに、この馬の競馬をしてどこまでこられるかと。中山金杯もそういった形になったということですね。
「以前、体質があまり強くないときは、休養明けの緒戦の成績がすごく良い馬だったのですが、ここ最近はそういうことがなくなりました。続けて使ってもへこたれないし、同じような走りができるようになりました」
加:結果的にそういうことになりましたね。中山金杯は先頭が62秒台のスローペースであって、かつ2番手の馬が離れて追走して63~64秒のペースにしてしまいましたから。うちの馬にしてもフルーキーにしても、離れた分だけの負けだと思っています。展開のアヤというか、レースが2つになってしまったというか。たまにあるのですが、ああなってしまうとちょっとキツイですよね。
-:レース後の馬の状態はいかがでしたか。
加:道中力まずに走れていて終いだけの競馬だったので、大きなダメージ、疲れはなくすぐに回復して、状態も前走のときから落ちることもなく、好調をキープしています。肌ツヤなんかもすごくよくなっていますよ。
-:これなら間隔が詰まってもAJCCで問題ないと。
加:そうですね。前回も秋に2回ぐらい続けて使ったかな。以前、体質があまり強くないときは、休養明けの緒戦の成績がすごく良い馬だったのですが、ここ最近はそういうことがなくなりました。続けて使ってもへこたれないし、同じような走りができるようになりました。
自分の型に徹する競馬を継続
-:この馬は以前から成績も安定していましたね。
加:安定していたというか、下級条件を勝ちあがれなかったというか(笑)。
-:勝ちきれるようになってきた昨秋あたりから変わってきた面というのはありますか。
加:以前はちょっと内面、呼吸器系に弱いところがあって。そういう部分がすごく解消されて健康になったというか、不健康で競馬に使っていたわけではないのですが、不安がなくなって更に体調がよくなったんじゃないかなと思います。
-:14日から坂路に入っていますが、このレースに向けてのメニュー、狙いというものを教えていただければと思います。
加:この馬に限らずどの馬もそうなのですが、中2週の競馬というのはそんなに強いところをやらなくてもいいし、ある程度呼吸を整えるというレベルの話になるので、そういう面では調整が非常に楽ですね。
-:特別な負荷をかけるということもなく。
加:全然ないです。かけたら逆に疲れちゃうしね。状態を維持すれば十分ということです。
-:当週はどういった調整を予定されていますか。
加:週末に15-15ぐらいの調整は、坂路かトラックかわかりませんがやる予定ですけど、週中に5Fから、70秒ぐらいでやろうと思っていますよ。それでも古馬だし、未勝利、500万レベルとは話が違うので、軽い中でもある程度の負荷をかけることになるかな。まあ70秒なら出したことでなんてことはないですよ。
-:AJCCの2200メートルに関しての見通しは。
加:意外とペースも落ち着くし、1F長くなるのも好材料かなと。コーナーがゆるく、追い出した時に前の馬との差を詰めやすいとは思うので、そういう部分ではレースはしやすいのではないかなと思います。レースの出入りが激しくなるときもあるので、そういうことに惑わされずに、自分の型で競馬ができればと良い脚を使えるとは思います。今回も前回と同じような型で、ハマるのを待ちましょう(笑)。
プロフィール
【加藤 征弘】Yukihiro Katoh
1991年に加賀武見厩舎の厩務員としてキャリアをスタート。その後、二本柳俊一、相川勝敏、内藤一男厩舎の調教助手を経て、2001年に調教師免許を取得。翌年厩舎を開業すると初年度から2ケタの12勝を挙げる活躍を見せ、2年目26勝、3年目32勝と瞬く間に関東リーディング上位の常連となった。その後も順調に勝ち星を伸ばし、11月15日にはJRA通算400勝を達成した。G1タイトルは2007年にシャドウゲイトで制したシンガポール航空インターナショナルCとノンコノユメで制した今年のジャパンダートダービーの2勝。中央重賞は8勝しているがそのすべてがG3。初G2制覇の期待がライズトゥフェイムにかかる。
1965年 東京都出身。
2001年に調教師免許を取得。
2002年に厩舎開業。
初出走:
2002年3月3日 1回中山4日目 8Rエビスイーグル(3着)
初勝利:
2002年6月2日 4回東京6日目 3Rソプランマンボ