「最もダービーに乗った男」吉原寛人 JDD6年ぶり地方馬Vなるか
2016/7/9(土)
二度目のダービー制覇を振り返って
-:先日はバルダッサーレ(牡3、大井・中道啓厩舎)で東京ダービー(S1)を2度目の制覇。おめでとうございます!ジャパンダートダービー(Jpn1)が迫ってきましたが、まず、レースを終えた後の印象をお聞かせください。
吉原寛人騎手:ありがとうございます!終始手応え良くて、4コーナーで「勝てるな」って思いました。ダービー勝つのなんて大変なことなのに、こんな楽に勝ってしまっていいのかな、という感じでしたね。
-:道中を見ていると、馬群で揉まれるようなシーンもありましたが、全くひるむようなところも見られなかったですね。この馬のセールスポイントを教えていただけますか?
吉:やっぱりそこは大きいです。レース経験や対応力でしょうね。戦ってきた相手も違いましたし、それが最大に活きたレースだったと思います。
-:テン乗りでしたが、レース前のイメージ通りと。
吉:そうですね。自分のペースで行って、最後にしっかりと脚が使えれば、とは思っていました。ただ、結果的に早く抜け出す形にはなりましたが、テンがやけに速かったのに、道中は息が入って遅くなったので、ああいう形になりました。
-:そこは想定外な感じであったと。
吉:ハイ、行くつもりはなかったのですが、馬の気持ち優先で乗りました。そうしたら、あれよあれよと2~3番手になっちゃったので、そこは「まあ、いいかな」と(笑)。
-:ちなみに、この馬の追い切りには乗ってはいなかったのですか?
吉:スクーリングと言いますか、馬場を見せる意味で大井競馬場の追い切りに乗る予定だったのですが(※)、予定していた日の馬場が悪すぎて追い切れなかったんですよ。その時は軽いキャンターだけしか乗ってないので、どれくらい動くとか反応とかはわからなかったのですが、まだ腰の甘そうな、緩い感じがありましたね。レース当日はパドックから気が入ってガラッとスイッチが入っていたので、また違った雰囲気を出すな、とは思いましたね。
(※バルダッサーレは千葉県印西市にある大井競馬、小林牧場の中道厩舎に所属)
「集中力を欠かせないように、というのは大事なところだと思います。気持ちよく走らせたのも勝因の一つではありました」
-:はじめに跨った時点では、こんなに走るとは思っていなかったというのが本音ですか?
吉:そうですね、レースに行くまではわからなかったです。
-:タービランスやトロヴァオが人気を集めていましたが、どの馬をライバル視して乗ったのですか?
吉:目標にしていたのはタービランスですね。あの馬を射程圏にとらえて、脚色さえ一緒にならなければ勝てるな、と思っていたので。そういう意味でも、気持ち早く行ってしまったかな、というのはありますね。
-:レース後にはジャパンダートダービーへの意気込みも語っていましたが、改めて中央勢との比較など、どのようなレースとなりそうですか?
吉:やってみないとわからない部分が多いとは思うのですが、この馬もダートに転向してからは底を見せていないですし(ダートは4戦3勝ですから)、伸びしろもあると思います。前走の勝ちっぷりも良かったので、なんとか頑張って欲しいです。
-:中央のダートで負けたのは1度だけ、その時の敗戦はブリンカーを付けなかったからなのか、それとも速い馬場が合わなかったからなのか、といった感じですが、吉原騎手から見て、この馬のもっと良くなって欲しいところがあればお願いします。
吉:中央のレースで負けていることについては、ブリンカーの有無が影響したとはハッキリ言えないですが、やはり集中力を欠かせないように、というのは大事なところだと思いますね。今回は展開が向いたのもありましたが、馬任せで気持ち良く走らせたことも勝因の一つではありましたので。そこに気をつけてジャパンダートダービーを迎えたいなと思います。
全国のダービーに騎乗、そして今年も中央受験へ
-:ありがとうございます。話は変わりますが、今年、世界の超一流騎手でも、これだけダービーに騎乗されていないはず……。世界で一番「ダービー」に騎乗したかもしれない吉原騎手ですが、地方競馬のダービーウィークはいかがでしたか?
吉:各競馬場、地元の皆が盛り上がっているところに僕が入っていって、違う味を付けたって感じではありましたが、期待している馬にも乗せてもらいましたし、参加できたことは本当に僕の人生の宝になりました。乗せていただいた関係者の皆さんに感謝したいです。競馬場ごとに色々と「味」があって、そういうものを味わうことができたのは大きかったですよね。
-:全部のダービーに乗ろうと思っていたのはいつくらいですか?
吉:騎乗依頼を頂いている途中で、「あれ、これ半分くらい乗っちゃっているんじゃない?」って思って、「じゃあ全部乗れるなら乗ってしまおう」と。半分くらいはお願いした部分もありましたけど(笑)。
-:流石に充実感はありますよね。
吉:ありましたね~!移動が相当キツかったですが、楽しかったですね(笑)。
-:そして、久々のインタビューなので、気になることを伺いたいのですが、今年もJRAの試験があります。受験は考えていらっしゃるのですか?
吉:ハイ。また頑張って受けて、なんとかまた違うステージに行けたら、とは思います。
-:わかりました。ここ数年全国で騎乗されている吉原さんですが、息抜きされている方法があれば教えてください。
吉:う~ん……。最近は色々なところへ行って、ご当地の名物とかをなるべく食べるようにしていますかね。昔はそこまで考えていなかったのですが、そういった面でも気持ちに余裕が出てきたのかなとは思いますね。
-:なるほど。それでは、ファンの皆さんに一言をお願いします。
吉:今年は「G1を勝ちたい」という目標があります。この夏を挟んで、秋に向けて大事なレースが続きますので、ソルテやバルダッサーレ、JBCもそうですが、勝っていないG1で勝ちたいと思っていますので、応援よろしくお願いします。
▲秋にはソルテとのコンビでJBC制覇を目指す
プロフィール
【吉原 寛人】 Hirito Yoshihara
2001年に地方競馬騎手免許を取得、同年4月7日に金沢競馬でデビュー。同日第5Rで初勝利を挙げ、ルーキーイヤーから95勝、JRAでも初勝利を挙げるなど輝かしい騎手デビューを果たす。08年には史上最年少でNARグランプリベストフェアプレイ賞を受賞。11年のWSJSでは初日に2連勝の活躍を見せ、総合2位にランクイン。近年は競馬場の垣根を越え全国の競馬場で騎乗。大車輪の活躍を見せてくれている。
2016年7月8日現在の通算成績は10024戦1906勝。
主な表彰
・2001年 NARグランプリ最優秀新人賞 / 日本プロスポーツ大賞新人賞
・2008年 NARグランプリベストフェアプレイ賞
・2005~10年 金沢競馬リーディング