狙うは連覇!リベンジだ!2016年 年度代表馬キタサンブラック
2017/4/26(水)
昨年は天皇賞・春、ジャパンCを制し、並み居る強豪を差し置いて年度代表馬に選出されたキタサンブラック(牡5、栗東・清水久厩舎)。そんな日本競馬を牽引する存在は、昨年同様に始動戦は大阪杯を選択。今年からG1に格上げされた事で強者揃いの一戦となったが、先行押し切りという盤石の競馬で他馬を圧倒。初代王者に輝いた。そして、天皇賞では有馬記念で敗れたサトノダイヤモンドとの再戦。リベンジに燃える思い、そして、連覇へ向け、清水久詞調教師の胸中に迫った。
年明け初戦の大阪杯快勝で初代王者に!
-:今年初戦となりました大阪杯は見事快勝でした。おめでとうございます。レースを振り返っていただけますでしょうか?
清水久詞調教師:内容は良かったんじゃないですか。勝ってホッとしたというのが本音です。
-:レース内容としてはさらにパフォーマンスを上げたというか、レベルの違いを見せつけた印象を受けましたが、直線は最後まで脚が衰えることがありませんでした。
清:(前に)行くというような馬がだいたい予想出来ましたので、展開は考えていた通りでした。ああいう3番手でもシッカリ折り合っていましたね。
-:スタートも完璧でした。スッと行って、無理せずポジションを取れて競馬も文句なし、オッズ以上に強い内容でした。
清:そうですね。アレっというくらい、3~4コーナーでいつまでも後ろの馬が被せてこなかったのでね。
-:道中は途中(1~2コーナー)までサクラアンプルールがプレッシャーを掛ける形になりました。
清:まあ、そうですね。そこでも掛かることなく、気分良く走ってくれました。
-:精神面は鬼の心臓ですね。
清:そうですね。当日は落ち着きもありましたので。
-:休み明けということで、前回の休み明けでレースを迎えた京都大賞典の時と比べて、雰囲気や状態はいかがでしたか。
清:その時よりはシッカリと調教を積みました。G1というのもありましたし、年度代表馬なので“叩いて次”というような考えではなくて、シッカリと今年初戦から結果にこだわってという部分で、あの時よりは調教量もシッカリ積みましたしね。
-:5歳になって中間に自己ベストを出すぐらいの速い時計も出されていたと思うのですが、その辺りは速い時計もシッカリ出すという調整プランだったのですか?
清:そうですね。やっぱりいつもですけど、1週前、2週前はシッカリと全体の時計にもこだわって、そういう調整方法でやってきていますのでね。
「(前回の馬体増は) 丸々成長分でしょう。全く太く見えなくて、シッカリ仕上げた上での+4なのでね」
-:中間に併せ馬で負荷を掛けられるというのはこの馬の特徴ですね。
清:こちらが予定するというか、逆算してこんな感じで追い切りを重ねていこうというプラン通りに、今までこなしてくれていますので、健康でそういう部分も優れた馬ですよね。
-:以前にお伺いした時でも「体のつくりは自分で調整したり、レースに仕上げていくくらい頭が良い」とおっしゃっていたと思うのですが、その辺りが中間の調整の仕方に出ているということですね。
清:本数を重ねていって、時計も強くなってくることで馬も把握出来ていると思いますので、本当にひと追い毎に体の張りも変わってきますね。
-:レースが近づいている事をわかるということですね。大阪杯当日のパドックの雰囲気はいかがでしたか?
清:もう最高でしたね。いつもの良い時の雰囲気でしたから。
-:+4キロと体重が増えての出走でした。
清:丸々成長分でしょう。全く太く見えなくて、シッカリ仕上げた上での+4なのでね。
-:あれだけ(調教を)やっていてプラスで来るのかというのが一番の驚きでした。今回の大阪杯はG1昇格第1回でしたが、意識されていたことはありますか?
清:初代チャンピオンの意識はありました。今後にも残りますしね。
危な気ないレースぶりで栄えある大阪杯(G1)初代王者となった
中間も順調そのもの 強い負荷に耐える強靭な体
-:大阪杯が終わって中間の過ごし方、雰囲気というのはどのような感じですか?
清:何の不安もないです。中3週なので、在厩調整でした。
-:時計はいつから頃からでしょう?坂路の調整などは?
清:先週の週末に少しやって、今週の水曜日ですね。中間は来週と3本です。今回は坂路で3本乗りしていませんね。Cコースでの調整でした。
-:ラスト1ハロンは11秒7出ていますね。
清:はい、終いの脚はよかったですね。いい状態です。
-:あれだけやってもテンションが変わらない。普段からどっしりしていますね。
清:そうですね。競馬の後でもジッとしてくれていますのでね。調教から上がってくる時の雰囲気も今回だけではなく、いつもそうですけど、全くイライラした素振りもないですしね。
-:心肺機能の高いってことでしょうか。あの調教に耐えられる馬って、なかなかいないんじゃないですか?
清:本当に健康な馬ですね。
「確かに大きな馬ではあったんですけど、ちょっと細身に見える馬でしたし、そういう部分では成長する余地はたくさんあるなと思っていたんです。まさかここまでの成長力を兼ね備えていたとは想像も出来ないですよね」
-:5歳になって、今までも良かったけど何かさらに良さが出たとか、さらに強みが増したという所を挙げるとすればどういったところでしょうか?
清:背も伸びていますし、体の幅も出てきていますね。
-:それは若駒の時から、ここが成長していくだろうなというイメージがあった部分が身に付いてきたということですか?
清:確かに大きな馬ではあったのですが、ちょっと細身に見える馬でしたし、そういう部分では成長する余地はたくさんあるなと思っていました。まさかここまでの成長力を兼ね備えていたとは想像も出来ないですよね。
-:毎回聞く度に「パワーアップしている」と、先生の口から頂いていますね。気性面でも不安がないとのことで、賢さが秀でている印象です。
清:そうですね。賢いですし、肉体的にも能力がありますし、回復力がありますし、免疫が強いというか、健康ですよね。
-:毎回レースの度に、先生がかなり自信を持っているのがすごく印象的ですが、仕上げや当日の状態で今までに不安を持ったことはなかったですか?
清:う~ん、ないですね。ただ、少しずつメンバーが変わってきて、新馬、500万から重賞、皐月賞、ダービーになった時に(徐々に)相手が強くなるので、どこまで出来るのかなという感じはありましたけど、状態に関しては不安に思ったことは一度もないですね。
-:輸送もデビューからアッサリとクリアしてくれました。
清:輸送も、馬運車の中でも本当に落ち着いたものですし、着いてから環境が変わっても、どこへ行ってもドッシリ構えていますので、初めての場所でも必ず結果を出してくれますのでね。
3頭併せの真ん中からグイッとひと伸び、好気配をアピールした
-:これだけ弱点がないというのも本当に珍しいというか、なかなか出会えないのかなと。
清:僕もそう思います。全てを兼ね備えていますんで、なかなかね。どこか一つ、ちょっと輸送でイレ込むですとか、ちょっと油断したら立ち上がって危なかったり、走る馬は特に気性が激しい馬がいるのですが、この子の場合は2人で引っ張った方が安全であるということもないですし、メンコもいらない。そういう部分では本当に、どの分野を取っても優秀ですよね。これだけの馬はなかなかいないと思いますね。
-:何一つ不安を清水先生から聞いたことがなかったので。
清:ないですね。僕が間違ったことさえしなければ、ちゃんと自分で体調を整えて、そこも優れている部分ですよね。成績が安定していますからね。
-:母父サクラバクシンオーの事を言う人はもういませんね(笑)。
清:どうでしょうね。前走の大阪杯前は「短くないですか?」と聞かれたんですけどね(笑)。ゲートセンスがありますし、二千でもあの位置にスッと行けるスピードがありますし、それにスタミナもありますので、幅広く距離をこなしてくれますし、二千のG1を勝てたというのは大きいですよね。
-:種牡馬として、生産界もかなり期待の1頭ですね。マイルの安田記念に出ても勝てますか?
清:いや、どうでしょうね。マイルにはマイルの強いのがいますからね。ユタカさんは何かのインタビューで「マイルなんて使ったら面白いんじゃないですかね。良いと思うけどなぁ」というのは言ったみたいですけどね。
連覇へ無事にゲートに連れて行くだけ
-:次(天皇賞・春)は長丁場でかなりハードなレースになると思いますが、レースに向けて、昨年の同じ時期と比べて何か違いはありますか?
清:そんなに大きな違いはないと思いますが、1年前から幾分成長もしていますね。
-:昨年は逃げて勝ちました。どんな競馬も出来ると言われていますが、レースの内容に関しては、やはり何も注文はないですか?
清:ないですね。ジャパンCのような逃げ切りも出来ますし、前回のように2~3頭前にいてもムキになることもないですしね。強みですよね、前々でどんな競馬も出来るというのがね。
-:距離が長いと掛かってしまう馬もいる中で、それが全くないというのはかなりのアドバンテージですね。次のレースはサトノダイヤモンドとのリベンジ戦とファンが注目していると思うのですが、その辺りの先生の意気込みはどうでしょう。
清:もちろん、「サトノダイヤモンドへのリベンジですか?」とよく聞かれて、全く頭にない訳ではないですが、それ以上にシッカリと仕上げるという方が僕の仕事ですからね。相手の十何頭は全てライバルですから。
-:そういった意味で言うと、やっぱり清水先生のキタサンブラックに対する信頼がかなり厚いと。
清:そうですね。無事にゲートまで連れて行くだけです。
北島三郎オーナー、武豊騎手との3ショットもお馴染みに
-:今まで通りの仕上げをすれば勝ってくれると。
清:もちろんありますね。この子ならシッカリ結果を出してくれるという気持ちでいます。
-:今回は(サトノダイヤモンドと)同斤量になります。
清:でも、この間の阪神大賞典も強いですもんね。本当にあれを観て、強いなと思いました。
-:更に強い馬を管理されている……?
清:僕自身楽しみにしていますね。だからこそ、100%の悔いのない仕上げでつくっていきたいですね。
来年も現役続行!年度代表馬2年連続受賞を目指す
-:事前に言われていたと思いますが、この後は宝塚記念の予定で、上半期は一旦お休みという形になりますか。
清:そうです、はい。
-:つい最近、北島オーナーが「引退はしたくないなぁ」とコメントをされていたのを拝見したのですが、その辺りは少しオーナーと話をされたのですか?
清:「来年も現役で行こうか」ということですね。
-:先生的にも意欲的ということで。
清:そうですね。年度代表馬になるぐらいの馬ですからね。本当にファンが多いですから。ファンにとっても良い知らせだったのじゃないかなと思いますね。
-:競馬界全体にとっても吉報だったのかなと。やっぱりもう1年長くこの馬を観られるのは。
清:そうですね。やっぱりファンも多いですし、JRAを盛り上げていくという意味ではね。来年一杯も恥ずかしくないような結果を出し続けないと意味がないのでね。
-:もちろん今年も年度代表馬を狙って。
清:そうですね。もう2年連続はこの子しか狙えないのでね。唯一持った権利ですし。
-:天皇賞(春)に向けて、何か一つ期待を込めてキタサンブラックに声を掛けるとするならば?
清:本当にしゃべれるのならば「何を言うたって分かってるわ」と言われそうなのですが、ハハハ。馬が一番賢いと思うのでね。まあ、「頑張ろな」くらいじゃないですか。本当に頑張ってくれるのでね。
-:天皇賞も連覇出来る権利はキタサンブラックしか持っていません。
清:この仔だけですね。多くのファンに応えたいです。
プロフィール
【清水 久詞】 Hisashi Shimizu
父親の清水貞光氏が冠名カルストンの馬主。幼少の頃より毎週競馬場に連れられており、「目指そうというよりも気がついた時には厩務員になっていた」と語るように牧場勤務を経た後に自ずとこの世界へ足を踏み入れる。
トレセン勤務後は定年での解散まで浜田光正厩舎に所属しており、当時に携わったのが牝馬2冠馬のファレノプシス。その思い出を「あの経験は未だにすごく大きなもの。古馬になってからのプレッシャーは大きかった」と語る。調教師になった後も「今こうやって調教師をしているのはいろんな人の力。人と人との繋がりを大事にしていくこと」と、絆をモットーにしている。