善戦続きもここまで!裏付けある舞台で戴冠狙うアエロリット
2017/4/30(日)
伏兵的な存在での出走だった桜花賞だが、従来までの好位からではなく、重い馬場を後方から追い込んで5着と好走したアエロリット。陣営が懸念していたという右回りにも目途を立てる内容であり、菊沢隆徳師が語ってくれたように、同馬のキャリアには重要な一戦であったことは間違いない。今度の舞台は好時計のクイーンCで半馬身差(2着)の実績がある東京マイル戦。下馬評は大混戦だが、それを制すだけの下地が同馬には備わっている。
-:アエロリット(牝3、美浦・菊沢厩舎)がNHKマイルC(G1)の1週前ということで、まず前走の桜花賞(5着)から振り返っていただきたいのですが、当日はマイナス6キロの発表ではありましたけれど、先生は状態をどのようにご覧になってらっしゃいましたか?
菊沢隆徳調教師:体重に関しては480キロで出走できれば良いなという感じで、こちらにいた当時から486ぐらいだったので、輸送をして480台で出られるんだったら申し分ないかなという感じでしたね。装鞍所でも落ち着いていたし、さすがに下見所では気が入ってきましたけど、まあまあ許容囲内だったし、良い張りをしているなとは思っていました。
-:当日の馬場発表は稍重でしたけど、レースそのものは振り返られていかがですか?
菊:雨がそんなに降り続いた訳ではなかったので、滑るような馬場ではないんですけど、やっぱりちょっと跳びが大きい馬なので、外めの枠で良かったのかなと思いました。
-:位置取りですとか、最後の脚ですとかそこら辺はいかがでしたか?
菊:横山ジョッキーとも色々と相談して、桜花賞というのはタフで、ましてや馬場が重くて道中掛かったりするとやっぱり終い頑張れないので、特にこの馬は右回りだと終いが甘いところがあって負けていたので「先のことも考えて何かが行った後で折り合いを付ければ良いな」ということを話していましたね。
初めて関西圏でのレースとなった桜花賞は5着だった
-:「折り合い重視で終いを伸ばせれば」ということが基本方針だったということですね?
菊:はい。桜花賞は特に直線も長いので、どれぐらい脚を使うかという感じで、桜花賞では半分以上試しという部分もありまして。
-:G1ではあるけれども、この馬の今後も考えてという側面があったということでありますけれど、この桜花賞という一戦で収穫だった点はいかがでしょう?
菊:やっぱり競馬に対して、短い距離を使うなら別ですけど、1600m以上使うのであればこの先折り合いというのが大事なので、そういった意味でクイーンCの時よりも桜花賞の時の方がより折り合いが付いたし、そこから仕掛けてちょっとモタモタしているように見えたけども、この馬なりに最後まで走っているんじゃないかと思っています。
-:しかも、関西圏への輸送で……。
菊:ええ、初めてでしたしね。
-:さらにそれを見た上で、今後こういうところが良くなっていけば、アエロリットにとってより良い成長になるかなという点はありますか?
菊:ここというか、全体的にシッカリして故障さえなければ、あとは気持ちさえ壊さなければ普通に強くなるかなと思っていますね。
-:あとはそういう時期を待つということですかね。
菊:2歳の頃から走るのは分かっているのですけど、それをいかにコントロールというか、人間の意思と上手く折り合いが付いて競馬を理解していってくれればなと思っていましたので、段々と良くなっていますよね。
義理の兄である横山典弘騎手とタッグを組んでここまで育ててきたアエロリット
-:先生もデビュー前から調教とかでも跨っていらっしゃると思いますけど、その間での馬の変化などがありましたら教えてください。
菊:やっぱり能力とか心肺機能も良いのですが、何せ大型でまだ成長しているし、緩さもある。なおかつ関節なんかはまだ弱いところもあるということで、これは勢いに任せてやっていっちゃ絶対にまずいなというのは思っていましたけどね。
-:肉体面でのケアもされつつやってこられたわけですか?
菊:ケアというか、悪い状態の時に強い稽古をしないというのはもちろんのこと、レースを使わないというのももちろんだし、そういったことはいつもよく考えていましたね。まあ、どの馬でもそうですけどね。
-:走る馬だと、より使いたいという気持ちが出てしまいますね。
菊:新馬を強い勝ち方をした時は「これは2歳Sだ」と言うけれど、その時の馬の個体を考えたら、新潟2歳Sを使ったらそれで終わっちゃうなという気持ちはあったので。やっぱり女馬ですので、まずは桜花賞を目指そうというような考えで、ローテーションを考えましたけどね。
「体つきもやっぱり上に伸びたは良いけどスッとしてきたし、付くべきところにも付いてきたというのもある。あと気性のコントロール面に関しては、トラックでやることによって人間の折り合いというか、そういった面でも十分にプラスになってきたかなという感じがします」
-:先々の目標を決めて、そこから逆算して。その桜花賞を終えた後のお話を聞きたいんですけど、レース後の過ごし方を教えていただけますか?
菊:当日帰ってきまして翌朝見ましたけど、いつも気になっているパーツ的なところは大丈夫でした。それは軟らかい馬場で走れたことが良かったのだと思いますし、馬自身も強くなってきたのと、あと帰ってくる途中でエサも食べちゃっているし、そういった意味でダメージは少なかったし、馬も強くなってきたのかなというのは感じましたね。
-:その後はノーザンファーム天栄の方に?
菊:そうですね。リフレッシュとあとはチェックをしてもらって、馬も2回ほど天栄へ見に行って調教の動きや馬体を確認して、回復具合も良いなと思いましたね。
-:美浦に戻ってきたのが今週の水曜日(4/26)ということで、レースまでの今後のプランを教えていただけますか?
菊:時計的なものに関しては日曜日に坂路かウッドでパッと息づくりの感じでやって、来週に関しては水曜日か木曜日に火曜日の様子、あとは馬場状態を見て決めようかなと思っていますけど、極端に併せ馬をしたりだとか、そんな目立つようなことはやりません。
-:強い調教はいらないということですね。
菊:はい、いらないです。
-:クイーンCの前は坂路中心だったんですけど、桜花賞前はフラットコースを取り入れることがあったりだとか、そういう調教の場所の変化によって、また馬にとって良い影響があったりしましたか?
菊:そうですね。体つきもやっぱり上に伸びたは良いけどスッとしてきたし、付くべきところにも付いてきたというのもある。あと気性のコントロール面に関しては、トラックでやることによって人間の折り合いというか、そういった面でも十分にプラスになってきたかなという感じがします。
-:やっぱり桜花賞でもそういう面が見られたということですね。
菊:桜花賞前に関しては、特に右回りはちょっと苦手な部分があるので、その辺にポイントを置いてトラックで十分やってきましたけどね。
-:今度はNHKマイルCで牡馬が混じっての対戦となりますが、最後はそこに向けての見通しをお願いできますか?
菊:今の時代、男だから女だからというのはあんまり……。この時期だったらまだ大丈夫かなという気がするし、東京に関しては時計面の裏付けも多少なりともあるので、そういった意味で楽しみではあります。
-:ありがとうございます。
プロフィール
【菊沢 隆徳】Takanori Kikuzawa
1988年に柄崎義信厩舎所属としてJRA騎手デビューを果たす。同期は内田浩一氏、岸滋彦氏などで、初年度は13勝をあげた。1993年に天皇賞(秋)でG1初騎乗を果たし、同12月の愛知杯にて重賞初制覇を成し遂げる。現役22年のうちフェアープレー賞を5度受賞するなど、その騎乗スタイルは若手騎手の手本として評された。
2011年に調教師として厩舎開業を果たすと、初年度にオープンガーデンで阪神スプリングジャンプを制し重賞初制覇。先の福島牝馬Sではウキヨノカゼが重賞3勝目。ジェラシー、ダイワリベラルらがオープンで活躍するなど、近年メキメキと頭角を現している。