非凡な決め手をもう一度!万全の状態で大目標のオークスへ向かうホウオウパフューム
2017/5/14(日)
ホウオウパフュームが、デビュー前から狙っていたタイトルを奪いに行く。前走のフローラSは1番人気に推されながら8着に敗れたが、昨年12月の寒竹賞は牡馬相手に大外一気の追い込みを決めて快勝。新馬から一貫して1800m以上の距離を使い続け、長い距離を走る意識をつけてきた。ハイレベルといわれる今年の牝馬クラシック戦線の中でも、強烈な末脚はトップレベル。オークスに照準を合わせてじっくり育ててきた経緯、本番への手応えを聞いた。
-:ホウオウパフューム(牝3、美浦・奥村武厩舎)のオークス1週前ということでお伺いしますが、まだ4戦しかしていないので、レースを少し遡って、新馬戦の頃から振り返っていただきたいと思います。この馬を初めて観た時の印象を覚えていましたら、教えていただきたいのですが?
奥村武調教師:僕も初めて観たのはセレクトセールの下見の時ですが、やっぱり抜けて良い馬でしたよね。ちょっと光るモノがあるというか、体も馬格がすごく立派なのにすごく軽い動きをする馬で、一目見てオッというような感じの馬でしたよね。ただ、血統背景と馬の動き、格好を考えると(セリの値段は)高くなるぞという印象はありましたね。
▲15年セレクトセールで小笹芳央オーナーが5200万円で落札
-:そういう馬が自分の厩舎に入るようになって、最初は、デビュー前の調教を積んでいる段階ではいかがでしたか?
奥:ノーザンファームでもすごく評価が高くて「これはなかなか楽しみですよ」という感じだったんですよね。
-:自厩舎に来てからはいかがでしたか?
奥:やっぱり期待通りというか、本当に良い馬でしたね。ただ、2歳の最初に入ってきた頃はまだ本当にトモが緩くて、これから使って良くなっていくかなという感じだったんですけどね。完成されていないなという部分がかなり大きかったので。
-:初戦は8月に使って3着だったですが、このレースはご覧になっていかがでしたか?
奥:正直、勝てると思って行ったのですが、思ったほどビュッとした脚が使えなくて、切れる脚がないのかなという印象に終わっちゃいましたよね。
-:その後は3カ月くらい空けてのレースになりましたけど、その間隔を空けた狙いというのは何かあったのですか?
奥:やっぱりその時点ではちょっと物足りないというか、この馬の完成形をイメージした時にまだ足りない部分が多くあって、2歳の現状ではこのくらいで競馬に行っても良いかなというところまで来ていまし。先々の将来性を考えた時に今は無理をする時ではないかなという判断で、暑い時季でもあったし、秋まで待ちましょう、という話をしました。
-:初戦を使った後は成長を促すような感じだったのですね。
奥:そう。完全にそういう感じの休みですね。
-:それで休んで未勝利を勝つ訳ですけど、未勝利戦をご覧になっていかがでしたか?
奥:東京で男馬相手になかなか良い脚を使って差し切ってくれて、すごいな、強いな、やっぱり走ってくるなというイメージでしたね。
▲東京芝2000mで2着に1馬身半差の快勝を決めた
-:見立て通り良いモノを持っているなという所で、これまた少し間隔を空けて、1月に使われた訳ですが。
奥:とにかく詰めて使っちゃいけないという意識があって、成長を促しつつの競馬をしていかなきゃいけないなと強く思いました。つまり、レース間隔を詰めたくなかったんですよね。もう一つ勝てましたし、正直、最初から桜花賞というのは考えていなかったので、無理してローテーションを詰める必要もなかったですからね。そこもゆっくり間隔を取らせてもらって寒竹賞ということにしました。
-:寒竹賞も非常に良い脚を使って勝ちましたが、レースを振り返っていかがでしたか?
奥:極端な競馬になりましたね。強烈な脚は使ったのですが、何と言うか田辺(騎手)が乗るとよくあると言いますか、能力以上に強く見えるというか、良い脚を使わせるから。道中で無駄な動きをしない、本当に上手いジョッキーなので、その辺もあってすごく派手な勝ち方になっちゃったのでね。強いなとは思ったのですが……。
-:もともと桜花賞は考えていないとは言え、府中であれだけの競馬をすると……。
奥:あの競馬だったから、なおのこと桜花賞は使いたくないという意識が強くなりましたね。あれで距離を詰めて、急かす競馬をさせたくないなという。折角、オークスに向けて、色々とジョッキーもレースの中で仕込んで教えてきている、距離も長い距離を走るんだよ、というレースをずっと教えてきていたんで、その約束事を壊したくなかったというのがすごく大きかったですね。デビュー前から「この馬は桜花賞向きではないですよ」という話をして、オーナーにも理解を頂いていたので、そこはブレることなくオークスを目指しましょうか、という話になりましたね。
-:実際に、寒竹賞後は一息入れてフローラSに向かいましたが、これは、割とレース後すぐに決まったローテーションだったのですか?
奥:ええ、寒竹賞のレース直後に決めました。
-:フローラSに向けて帰厩してきた時の馬の状況というのは、3戦したことでデビュー前から何か変化は起きていましたか?
奥:やっぱり無理して使っていないので。痛いところが全然ないということで、すごくフレッシュな状態で帰ってこられたので良かったですよね。でも、レース間隔が空いた分、少し緩いかなという風には思っていたんですけどね。もともとトモがピシッとしている馬ではないので、そこの部分はまだ……。帰ってきた時は、追い切りを重ねていけば締まってくるかなと見ていました。
奥村武調教師インタビュー後編
『「ブレずにオークスへ」寒竹賞の直後にローテ決定』はコチラ⇒
プロフィール
【奥村 武】Takeshi Okumura
1976年東京都出身。2002年に高橋義博厩舎の厩務員として働き始める。翌03年に調教助手となり、国枝栄厩舎に転属。アパパネやマツリダゴッホを担当した。14年に調教師免許を取得し、同年3月に開業。今年はライジングリーズンでフェアリーSを制して重賞初勝利。そしてこのホウオウパフュームでオークスへ挑戦。既に14勝を挙げるなど、若手調教師のホープとして師にかかる期待は大きい。通算成績は54勝(2017年5月14日現在)。