NARの意地と挟持を東京ダービーで見せつけろ 森泰斗&ヒガシウィルウィン
2017/6/4(日)
年始に公開したロングインタビューにも登場してくれた2年連続地方競馬全国リーディングの森泰斗騎手。当時のインタビューでは「東京ダービー制覇」を目標に掲げてくれていたが、いよいよヒガシウィルウィンと南関東競馬の頂点に挑むこととなる。ここまで人馬で3戦2勝。クラシック1冠目の羽田盃では2着に敗れたものの、逆転の目はあるのか?南関サークルの期待も背負った闘いに向けて、その可能性に迫った。
-:昨年末以来となるインタビューになりますが、よろしくお願いします!その年末でお話を伺った時に「来年はヒガシウィルウィン(牡3、船橋・佐藤賢厩舎)に乗る」とおっしゃっていたので、その後も注目していたのですが、馬については初めて聞かせていただきます。初めて乗った際の印象から教えていただけますか?
森泰斗騎手:よろしくお願いします。もともとヒガシウィルウィンは僕が信頼している助手の方が調教に乗っていて、初めて乗ったのは、競馬に乗る前に1度稽古に乗った時ですね。ただ、攻め馬に乗ると、全然ピンとこないような馬なのです。これは、乗ったことがある人は皆が口を揃えて言うのですが、“正直、これで大丈夫か”と思うほどで……。
-:例えば、芝の馬だと、まだちょっと力が足りなくて稽古ではあんまりだけど、芝に行ったら動いた、というのは聞いたりするものですが、俗に言う地方競馬の重いダートの中で、その違いとは日頃あるものですか?
森:おそらくそんなにいないタイプだと思います。だいたい走る馬は攻め馬に乗っていても力強いし、パワーがある馬が多いので。そういう点では、ピンとこないものの、僕が今まで接したことがないタイプなのでしょうね。ただ、根性があって一生懸命走りますよね。前の馬を抜かそうとする気持ちがあるし、道営時代から乗っている人も「一生懸命走る」とは言っていました。競馬は「競走馬として能力の何割しか出していない」とよく言われるものですが、一般的な平均値よりも自分の持っている能力を上の方が出せる、出しているタイプなのかなと。
-:レース後のコメントでも、勝負根性については高い評価を与えていたようですね。ここ最近では稽古に跨ったことはありますか?
森:羽田盃の前はずっと乗っていました。というのも、いつも乗っていた助手が骨折をしてしまって、京浜盃が終わってから羽田盃までは僕がずっと毎日乗っていたので。1カ月くらいは乗っていましたね。羽田盃が終わって、ちょうど乗り始めるくらいから(ケガが)治って「じゃあ、また僕が乗るよ」といったことになり、今は任せっきりです。
-:乗っている頃もまだ変化はなかったですか?
森:いえ、変化はしてきましたね。だいぶシッカリしてきましたし、見た目がだいぶ変わりました。1月のニューイヤーCの時は背も低くて、コロコロした赤ちゃんのような体型でした。肩掛けを掛けると下に引きずってしまうのかというくらいに身長も低くて、“これでダービーは大丈夫か……”と正直、その頃は思っていました(笑)。でも、それが馬の形は変わってきて、見た目にも格好良くなってきたし、羽田盃の時は風格すら出て来たのではないかと感じるほどでしたよ。
-:具体的に変わってきた部分というのは体高ですか?
森:体高とトモの筋肉、首周りが一番変わったかな。写真を見比べた訳ではないですが、首の辺りが太くなって、立派になってきた印象は持ちましたね。
-:クラシックを戦う上では「成長」は重要な要素ですよね。
森:もちろん、もちろん。成長しないとね。羽田盃はおそらく今までの中ではベストパフォーマンスに近い走りでしたよ。
▲左は1月のニューイヤーカップ、右は3月の京浜盃
ニューイヤーC当時は優勝レイを引きずりそうなほどの体高だった
-:羽田盃は、レースとしては勝ち馬(キャプテンキング)と併走する形で、最後差し切れず、という結果でした。ご自身の感触はいかがでしたか?
森:あのレースに関しては、ハナに行ってしまえば、ひょっとしたら勝っていたかもしれないですね。あの流れでキャプテンキングが僕の真後ろに入って、外にいたから切り返せなかったから、砂を被るし、ちょっとゴチャゴチャとするし、あそこで一段階ペースを落とせば、あのレースに関しては勝ったかもしれないです。ただ、レース前にハナにだけは行きたくないという意識があったので。
-:若いうちにそういう競馬をすると……。
森:それは先に繋げるという意味でも。だから、負けたとはいえ、そんなに悲観もしていないといいますか。ただ、僕が並び掛けて(キャプテンキングが)もう一伸びしたのは事実。あれがあの馬に余裕があって、ああいう競馬をしているのか、最後の力を振り絞って突き放したのか、それが分からないので何とも言えないのでね。
-:それはライバルに乗ったわけではないから分からないですよね。
森:そうですね。ただ、あの馬は強いとはわかってはいたので。中央の時も大味な競馬をして、あの成績ですから。ずいぶん外を回っても差し切ったりもしていましたよね。
-:前回は枠や展開を考えても、2頭共内枠で一騎打ちになりやすいような枠の並びでもあったかなと思います。
森泰斗騎手インタビュー後編
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プロフィール
【森 泰斗】Taito Mori
1981年1月11日生まれ、千葉県出身。戸崎圭太騎手とは同期、浦和の繁田健一騎手とは生年月日が一緒と、未来の南関東トップジョッキーたちと地方競馬教養センターではしのぎを削った。1998年に足利競馬からデビューを果たすも、一時は騎手免許を返上して引退。その後、2001年に再デビューを果たすと03年には足利競馬の廃止に伴い、宇都宮競馬へ移籍。
しかし、05年に所属した宇都宮競馬がまたしても廃止となり、地元でもあった船橋競馬へ。移籍当初は南関東の中でもくすぶっていたが、2010~11年あたりから台頭。2014年に南関東リーディングを初めて獲得すると、2015~2016年は地方全国リーディングも奪取。苦労人でもあり、近年の地方競馬において最も急成長を遂げたジョッキーの一人といえる。愛犬の名はエレナ。