騎手としてナリタトップロードとのコンビで一躍名を馳せるなど活躍し、昨年から厩舎を開業させた渡辺薫彦調教師。2年目の今年は着実に前年以上の勝ち星を重ねているが、自身が一から手がけ、厩舎の看板馬ともいえる活躍をみせているのがメイソンジュニアだ。CBC賞での重賞初制覇へ気運は高まるばかりだが、ラジオNIKKEI賞にも管理馬を送り出す師は東西ジャックの可能性もありそう。初の独占インタビューでその手応えに迫った。

運命的な出会いを果たしたメイソンジュニア

-:当コーナーでは、初めて取材させていただく渡辺薫彦調教師です。よろしくお願いします。まず、CBC賞(G3)に向かうメイソンジュニア(牡3、栗東・渡辺厩舎)を初めて見た際の印象から教えていただけますか?

渡辺薫彦調教師:よろしくお願いします。この馬は僕にすごく縁がある馬でした。というのも、技術調教師という形で開業するまで1年時間があったのですが、もともとセリ(セレクトセール2015の1歳馬セールで3132万円)で買った馬。でも、実は違う馬を狙っていて、残念ながら買えなかったので、他を探しに行こうということで、血統も全然見ずにパッと見て、良い馬だな、ということでオーナーに買っていただきました。これも本当のことを言えば、血統もよく分からない種馬でしたからね……。

-:最近のセレクトセールは平均的に高いですものね。Mayson(以下、メイソン)といえば、改めて調べさせていただいたら短距離系の血統なのかなと。

渡辺薫彦

▲ジョッキー時代と変わらぬスマートな印象の渡辺調教師

渡:そうですね。その後、偶然(海外競馬に精通する)合田直弘さんにお会いしたのです。僕がもともと合田さんのファンだったのですが、(セリで)落とした後に「Maysonを知っていますか?」というお話をしたら「これから(走って)来る種馬ですよ。良いお買い物だったと思います」といった言葉をいただきました。あれだけ世界を知られている方ですから、心強かったですよね。

-:メイソンについて、改めてレース振りを観たりしましたか?

渡:観ました。やっぱりスピードがある印象を受けました。そのスピードを受け継いでいる感じはしますよね。

-:イギリスの短距離G1・ジュライCを勝っているようですね。

渡:ええ、そんな経緯があって、ノーザンファームで育成をしてもらっている最中、僕が研修の時に、厩舎でお世話になることになったのです。ノーザンさんがそうしてくれたのか分からないですが、今度はそんな形で会うとは思いもしませんでした。

-:落札したばかりでなく、その後も手がける機会があったということですね。

渡:そうなんです。順致で初めて鞍を着けるところからお手伝いさせてもらいました。そもそも自分も今まではそんなことはしたこともなかったので……。そうしたら、小倉2歳Sの時に装鞍所で大暴れして「誰が順致したんや?」という話になって、ハハハ(笑)。だから、そんなこんなですごく縁がある馬ですね。

スプリント?マイル?ダート?融通性の高い潜在能力

渡辺薫彦

-:新馬戦のレース振りを改めて拝見すると、2歳の短いところを使う馬にしては、比較的うるさい感じはしなかっただけに、装鞍所で暴れたというエピソードが意外に思えました。

渡:スピードはあると思っていたので、押し切ってくれるだろうという見立てでした。行った、行ったという競馬をしてしまうと、次が難しくなってしまいますよね。小倉2歳S(11着)では装鞍所でイレ込んでしまって。

-:小倉2歳Sでの敗因はそこが大きかったのですね。

渡:もう、それだけなんですよ。鞍を置こうとしたら飛び出してしまい、パニックになって。パドックに行った時は気配的にもどうしようもなかったので、今日はちょっと厳しいなと……。持ち乗りの子もそれで骨折してしまいましたから。そこで、放牧に出させてもらって、福島の前に京都(4着)をひと叩きで使いました。

-:京都は枠も外(14番)でしたね。

渡:ただ、内容は良かったと思いますし、メンバーも揃っていたのでね。それで、福島2歳Sに行って、控えた競馬をしてほしい、という指示を。結果的には多少引っ掛かってしまいましたが、すごく良い競馬だったと思っています。

-:あのレースを観ると、まだまだ距離も限定されないのかなと。

渡:ハイ。あの競馬は本当に良かったと思っています。


「若さをモロに出してしまった印象がしますね。以降は厩舎装鞍することにしていまして、あれから2戦くらいは怪しいところがあったのですが、今は大人しくしていますね」


-:改めて、新馬から小倉2歳Sの間は、短い期間で再度の輸送を強いられてしまったことも大きかったのでしょうか。

渡:そうですね。それで、若さをモロに出してしまった印象がしますね。以降は厩舎装鞍することにしていまして、あれから2戦くらいは怪しいところがあったのですが、今は大人しくしていますね。

-:福島の時、レース映像を見直すと汗の跡が残っていて、新馬の時とは違った印象を受けました。全日本2歳優駿に関してはいかがでしたか?

渡:ちょっと硬さのある馬なので、ダートでも、という思いはあったのですが……。ダート、芝という条件よりもコーナー4つの競馬が厳しかったのかなと。

-:伸びず、バテずみたいな感じでしたね。

渡:3コーナーを観ていたら、このまま垂れていくのかなという感じだったのですが、意外と頑張ってくれたので。上がってきてから、戸崎さんに聞いても「終始、(ハミを)噛んでいる」と言うので、その辺で伸びあぐねた感じですかね。

-:ナイターや左回り、ダートといっても地方の砂と初モノづくしもありましたからね。

渡:だから、ダートが悪かったという気はしていないんです。

-:まだまだ選択肢として残っている感じはありますね。

渡:それはあります。決して綺麗な走りをする馬ではないというか、脚を振り回すようなタイプなので(笑)。

渡辺薫彦師インタビュー後半
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