飛躍の2年目へ渡辺薫彦調教師とメイソンジュニア 重賞初V狙う
2017/6/25(日)
-:色々調べさせていただくと、時計の掛かる芝の方が良い印象は受けたので、そういう意味ではダートでも、と思いました。
渡:結果的にニュージーランドT(2着)なども、重たい馬場になったのが良い方に出たと思っています。洋芝が合うんじゃないかということで、函館スプリントSという考えもあったのですが、相手関係もあり、でCBC賞を選択させてもらいました。もともと函館に行くプランとソエもちょっとチクチクしていたので、NHKマイルCも止めたんです。それに、硬くなりやすい馬なので、あんまり詰めて使うよりは、ということで、オーナーと相談した結果ですね。結果的に、NHKマイルCも使っても良かったのかなという思いもありますが……。この選択が良い方向に出ることを願うばかりです。
-:今回、取材で伺ってみたいと思った理由は、夏の中京は特にタフな競馬になるので、プラスになるのかと思いました。
渡:けっこう、中京はタフですよね。ファルコンS(3着)でも頑張ってくれているので、左回りも克服していると思いますしね。
-:ちなみに、右回りの時に直線入り口でラチにぶつかるようなところがありましたね。そういう心配はもうありませんか?
渡:新馬の時ですね。あれは若さをモロに見せていた頃。レースそのものは別にそんな乗りにくいことはないと思いますね。
-:普段、トレセンでの気性や性格はいかがですか?
渡:大人しいことは大人しいです。ちょっと馬っ気があって、入厩した当初は立ち上がったりしたのですが、それは若さを見せていたということ。小倉2歳Sはそこがモロに出てしまったわけですが、厩舎では行儀良くしいているので、その辺の心配はいらないと思いますけどね。
-:馬体重に関しては、デビュー当初が490台。そこから落ちる時もありましたが、レース時の見立てはありますか?
渡:川崎で減ってしまいましたが、前走の480キロ台くらいで良いのかなという気はしています。
「今回は1200ですが、思いとしてはマイルまでという気持ちがあるので、今回の競馬の内容次第ですね……。あわよくば秋のスプリント界を賑わせてくれたら良いな、という思いはあります」
-:CBC賞という選択肢になりましたが、今後の見通しと言いますか、どんな構想で育てていきたいと考えられていますか?
渡:今回は1200ですが、思いとしてはマイルまでという気持ちがあるので、今回の競馬の内容次第ですね……。あわよくば秋のスプリント界を賑わせてくれたら良いな、という思いはあります。
-:万が一、スプリントでスピード負けするようなら、マイルに延ばしても対応出来そうですよね。
渡:そうですね。最終的にはダートでも、という選択肢もありますしね。僕も初めてやらせてもらった馬で、すごく縁があって、思い入れの強い1頭ですね。
-:この中間は先生も乗られていましたよね。
渡:はい。落ち着きは本当に出てきましたよね。大人になった感じはありますね。
-:そういう意味でも距離の融通性は出てきそうですね。
渡:ただ、ニュージーランドTでも控えて行こうと、ジョッキーともそういう話をしていたのですが、ゲートが速過ぎちゃって……(苦笑)。ゲート練習を特に積極的にやっているわけでもなく、悪いことではないのですが、控えることが難しいという。
-:レースに向けて、まとめの一言をいただけますか。
渡:僕も重賞を狙えるチャンスですし、オーナー((株)カナヤマホールディングス)もまだ馬をやられて2~3年の方で、初タイトルのチャンスかと思います。(菱田)ジョッキーも意外に未勝利なんですよね。頑張って欲しいなという思いです。
-:オーナーは近年、台頭されてきて気になる馬を持たれていますよね。
渡:そうなんですよね。同じ日のラジオNIKKEI賞(G3)にバルベーラ(牝3、栗東・渡辺厩舎)という馬を使おうかと思っていて、僕は福島の方に行ってしまうと思います。
-:そちらの方に色気があるという訳ではないですよね(笑)?
渡:いえいえ、遠方ですし、僕が行っておこうかなと。メイソンジュニアはいつもウチの攻め専がずっと乗っているので、任せていても良いかなと。バルベーラも具合がすごく良いので、楽しみですよ。
-:場合によっては両メインジャックも。
渡:まあまあ……理想を言えば、そうなれば良いですし、頑張りたいです!
-:バルベーラは前回が不良馬場での競馬でしたね。
渡:そうなんですよ。ルーラーシップ産駒なのですが、どちらかと言うと母父ディープインパクトが出ている雰囲気です。ルーラーシップってガシッとした馬が多いのですが、バルベーラは420kgくらいしかなくて、線は細め。溜めればピュッと切れる感じの馬です。前走はすごく雨が降っていたので、重馬場では厳しいだろうなという中で、あと100mくらいで切れてくれたので、こちらが思っていた以上のパフォーマンスでしたね。それを観ていて、重賞に行ってみたいなと気持ちになりました。1600で2連勝して、今回は1800、コーナー4つという形になるので、未知なところがあるのですが。
▲ラジオNIKKEI賞に挑む牝馬バルベーラ
-:ルーラーシップ産駒と言うと、けっこう伸び過ぎるというか、それよりもやっぱりディープの方が出ているということですね。それならば、良馬場の方が良さそうですし、福島の馬場も合いそうですね。
渡:そうですね。切れは増すと思いますし、平坦は良いのかなという気がします。
-:課題といえば、輸送も気になるところですか?
渡:小柄な牝馬なので、どうかな、という思いもありますが、しっかりとカイバは食べる馬なので。精神的な面よりも、体重だけかなという気はしますね。
-:わかりました。最後に、今回、先生に初めて取材させていただいたのですが、ファンの人が覚えられそうな調教のモットーやパターンはありますか?
渡:モットーですか……。正直、モットーというものはないのですが、逆に言えば、あまり決めつけないようにはしていますね。ウチは担当制なのですが、できれば受け入れながら馬に合わせて、毎週馬場でやる、坂路でやるという決めつけもなくて……。池江泰寿先生の半マイルで追っているのは良いなと思います。
-:先生のところではまだ取り入れていないのですね。
渡:まだないですけど、どこかで……(笑)。
-:時計面での目安はありますか?
渡:全体的な時計よりも、終いはしっかり伸ばしておきたいという考えはあります。
-:3月から厩舎を開業された昨年よりも良いペースで今年は勝たれています。重賞の舞台でも活躍してくれる馬をどんどん輩出してくれることを楽しみにしています。
渡:ありがとうございます。
プロフィール
【渡辺 薫彦】Kunihiko Watanabe
1994年に沖芳夫厩舎所属として幸英明、吉田豊騎手らとともに騎手デビュー。師匠である沖芳夫調教師とは非常に強い絆で結ばれ、騎手を引退する2012年まで沖厩舎所属としてジョッキー人生を貫き通した。1999年のきさらぎ賞をナリタトップロードで勝って重賞初制覇。皐月賞3着、ダービー2着の春のクラシックはあと一歩で涙を呑んだが、菊花賞で悲願のG1初制覇。競馬史に残る名コンビとしてその名を刻んでいる
騎手引退後は沖厩舎で調教助手を務め、2015年に調教師へ転身。昨年3月に厩舎を開業して初年度は12勝。今年はメイソンジュニアの活躍に引っ張られるように昨年を大きく上回るペースで勝ち星を重ね、今後の躍進が期待されている。